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第4話「牧場にやってきた珍客」

その日の朝は、霧が薄く立ち込める幻想的な風景で始まった。牧場の草木が白く煙るなか、ハルトは温かいミルクの湯気を感じながら、朝の作業に取りかかっていた。


「シエル、今日の空、なんだか変だね」


「うん。魔力の流れがちょっと変わってるかも……」


牧場の隅で、何かがざわめくような気配があった。そこに現れたのは、まるで迷子になったような、小さな毛玉のような生き物。


「……ん?あれは……」


ふわふわとした真っ白な体、丸い目、くるんとした尻尾。まるでぬいぐるみのようなその生き物は、明らかにこの世界の普通の動物ではなかった。


「きゅ……きゅい?」


その声に、ミントがすかさず反応した。


「こ、これは幻獣リュリュ!? 幻想種の幼体だよ、ハルト!」


「幻獣……そんな珍しい動物が、どうしてここに?」


「わかんないけど、迷い込んだか、何かに追われてここまで来たんじゃないかな」


その小さな幻獣は、よたよたとハルトに近づき、足元で座り込んだ。まるで助けを求めるように。


「……放っておけないな」


「世話する気?」


シエルは呆れたように言ったが、顔は優しくほころんでいた。


「この子の名前、決めてあげようよ」


「そうだな……じゃあ、リュカ。どう?」


「きゅい!」


リュカは小さく跳ねて、うれしそうに鳴いた。


リュカの世話は、思った以上に手がかかった。


まず、食事。普通の鶏や牛とは違い、特定の魔草しか食べず、水にも微細な魔素を含んでいないと元気がなくなる。


「この辺には魔草が少ないね……明日は森に採集に行こうか」


さらに、体温調整も特殊で、夜になると身体の中に魔力の小さな渦を作り、それで発熱する。


「なんて面倒な生き物……でも、かわいいな……」


ハルトは夜、リュカの寝床に手作りの小さな布団を用意し、ゆっくりとなでてやった。


「明日も元気でいてくれよ」


「……この子、ただの珍客じゃないかもね」


シエルの言葉に、ハルトは少し眉をひそめた。


「どういう意味?」


「さっきからずっと、微弱だけど古い魔力の痕跡がこの子の体に残ってる。もしかして……遺跡と関係あるのかも」


その瞬間、リュカの身体から微かな光が漏れた。


「きゅ……い……」


眠っているリュカの額に、小さな魔法陣のような模様が浮かび上がっていた。


翌朝、ユリウスが訪ねてきた。


「ハルト! 昨日、遺跡の入り口に新しい魔力の痕跡があったって報告があった」


「もしかして、リュカが通った?」


「それもある。でも問題は……その痕跡の一部が“封印魔術”だったってこと」


「封印……?まさか、リュカが封印されていた?」


「可能性はある。この子は何かを封じていた存在か、もしくは……何かの鍵かもしれない」


牧場の朝の静けさの中、にわかに広がる緊張感。


だが、ハルトはそっとリュカを抱き上げながら言った。


「たとえそうでも、僕にとってはこの子は大切な命だ。リュカはもう、この牧場の仲間だから」


「……ハルト、ほんと頑固だけど……やっぱり、そこが好き」


シエルは小さく微笑みながら、ハルトの肩にふわりと乗った。

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