第33話 妖精沼にハマる二人
「……よし。じゃあ、武田もゲームテスターに参加させる方向でいくとして、こっちに呼んじゃうけどいい?」
妖精沼にどっぷり漬かった二人からは、特に反論は出なかった。
むしろ“仲間は多いほど楽しい”という方向に、完全に思考がシフトしたらしい。
僕はスマホを耳に当て、呼び出し音を聞きながら軽く息をついた。
数秒後、武田の声が聞こえてきた。
『お、おう翔太。悪い、勝手に部屋入って……美穂ちゃんが“待ってて”って言うからさ』
「いや、それはいいよ。むしろ悪いのは僕のほうだし。でさ、新之助。今、僕ら隣の八神家にいるんだ。こっち来てくれる? 例の修行の件で話したいこともあるし」
『八神家? ああ、隣の……よし、すぐ行くわ』
通話が切れ、僕はスマホをテーブルに置いた。
その直後だった。
ゲーム画面から一瞬たりとも目を離せない“ゲーマー中毒”状態の小恋路が、コントローラーをカチカチ操作しながら、僕に話しかけてきた。
「ねえ翔太。どうせなら、美穂ちゃんもゲームテスターにしたらどう?」
「え、美穂も? いや、このゲームって探索者専用のゲームじゃなかったの?」
僕は思わず声を上げてしまった。
勝手にそう思い込んでいたけど、よくよく考えたらフェアが作ったゲームだ。
これまでの常識が通じるわけがない。
案の定、サイコ妖精がのほほんとした声で答えてくる。
「探索者じゃなくても大丈夫ですよ~。その辺のフォローもばっちりです。
元々は、魔素アレルギーで探索者を諦める人たちの救済処置としてフェアが考えたシステムなので~、魔素に直接触れられない人でも、魔素アレルギー浄化システムを体内で循環させることで、魔物アバターを通して遊べるようになってますよ~。ちなみに、美穂ちゃんをゲームテスターにするのも大賛成です~」
僕に直接念話で「探索者ギルドをぶっ壊す」と宣言したフェアさん。システム開発から全て監修してるサイコ妖精が言うのだから、もうそれは決定したも同然だ。
「じゃあさ、うちのチョロイン美穂は、優斗兄さんから優しくアプローチする感じでどうだろ? 僕が言うより絶対効果あるし」
軽口のつもりで言ったのに、小恋路はゲーム画面から視線を外さないまま、それでもしっかり僕の言葉だけはキャッチして、受け答えをしっかり返してくれた。
「そうね。いきなり叔母さんに全部言うより、まずは周りから落としていくのが基本でしょ。翔太の案、わたしはアリだと思う」
小恋路は淡々と言いながら、画面の中のスライムを華麗に処理していく。
ゲームしながら作戦会議をこなすのは、長年のゲーマー経験が生きているからで、僕たちの間ではこれが普通だったりする。
その横で、優斗兄さんが腕を組み、真面目な顔でうんうんと頷いた。
「美穂が妖精沼にハマったら……まあ、それはそれで可愛いがな。ただ、美穂だけ仲間外れにしてたと知ったら絶対拗ねる。今のうちに巻き込んでおいたほうが平和だろう」
小恋路に向ける兄ムーブが、美穂にまで飛び火している“この笑顔”。
電話越しでも、その破壊力は伝わるようで。
「勉強ばかりじゃ、疲れるだろ。一旦休憩するのもいいんじゃないか。良かったら八神家のほうに遊びにおいで」
そう美穂に甘い囁き声を発し、優斗兄さんの甘甘空間が最高潮に達した瞬間、横で小恋路が小声で「ちょっと引くわね……」と呟き、僕も無言で頷いた。
(……いや、僕の妹なんだけど)
◆◇◆◇◆◇
作戦が実行段階に移されて、間もなくのこと、八神家の玄関チャイムが「ピンポーン」と鳴った。
「お、まずは武田君ね」
小恋路がゲームを止める気ゼロのまま、親指だけでインターフォンのボタンを押す。
モニタには、少し緊張した顔の武田が映っていた。いつもと少し様子が違う感じがするが、気のせいか。普段はもっと喧しい感じなんだけど。
『あ、ど、どうも……お邪魔します……』
「どうぞー。靴は適当に揃えといてねー」
年長者の優斗兄さんを差し置いて、我が物顔で応対する小恋路。
武田は画面越しに一瞬きょとんとしたあと、恐る恐る玄関ドアを開けて入ってきた。
――そして、ほんの数十秒後。
「ピンポーン」と再びチャイムが鳴る。
「……あ、これは美穂だな。優斗兄さんの対人スキル、やっぱ凄いよ。将来、ホストでも食べていけるね」
優斗兄さんが立ち上がり、インターフォンを覗き込む。
モニタには、スマホと手提げバックを握りしめてそわそわしている美穂の姿。
それにしても、外行きのお洒落なワンピースに着替えているけど、何をどう考えたら、その選択が正しいと思えるのか、僕には謎のままだ。
(……いや、可愛いけどさ。でも目的地、隣の家だからね? 徒歩十五秒圏内だよ?)
『あ、あの……優兄、来たよ……あがってもいいかな?』
声が妙に小さい。
緊張しているのか、単にチョロいのか、その両方か。
「どうぞ、美穂、入ってきて」
優斗兄さんが優しくインターフォンに話しかける。
そのまま玄関先まで出迎えにいくのが、優斗兄さんの一貫したスタイル。
美穂は画面の向こうでコクコクと頷き、玄関ドアを開けた。
武田、美穂、それぞれ別口でのご来店。ありがとうございます。
しかも順番まで綺麗に分かれているあたり、なんというか……うちの周りの人間関係は、今日も平和だ。
(……いや、平和なのかこれ)
◆◇◆◇◆◇
まず最初、一人目の訪問者――武田は、防具を入れたリュックと、鞘に納めた刀を更に収める専用武器ケースを持って、部屋に入ってきた。もう、朝から初心者ダンジョンで修行する気満々だったようだ。
「優斗兄さん、八神、お邪魔します。よう、翔太、昨日はお疲れ」
ああ、やっぱりいつもの声の張りがない。
元気さも普段の半分ぐらいで全然足りていない。
昨日の襲撃事件でのことは、そんなに簡単には記憶から消えてはくれないだろうから、もう少し様子をみてから、対処方法を考えるしかないか。
次、二人目の訪問者――僕の妹の美穂は、優斗兄さんの前では真面目ちゃんを気取り、しっかり勉強道具を持参して部屋に入ってきた。
「優兄、お邪魔します。わたし、どこに座ればいいのかな?」
「美穂はこっち。お、しっかり勉強道具も持ってきてる。偉いな、美穂は」
「えへへへへ」
そんな二人を攻略するために、前もって玉ちゃん二号には、武田と美穂用の新品PDSのゲーム機を用意してもらってある。人類種ではない二人に関しては、サイコ妖精のフェアは僕と憑依、玉ちゃん二号は透明になれるというので、透明化してこの部屋の中で大人しくしているように言い含めておいた。
新たに妖精沼にご案内する二人に対する言い訳だけど、八神家の親戚筋から最新ゲーム機のゲームテスターをやってくれる人材を探していたという、それらしい話を用意してみた。
二人にはPDSと、そのゲームをする際に欠かせないダンジョンWi-Fiルーターをプレゼントするから、ゲームテスターとして協力してほしいと優斗兄さんから話してもらった。
そんな新品ゲームで釣る話も付け加えたことで、二人とも、概ね好評のようだ。
最後の話のまとめとして、ゲーム中の討伐魔物の経験値の半分が自分自身に蓄積されるというトンデモシステムのことも、優斗兄さんの言葉を通して二人に伝えてもらった。
「うわ、まじかよ。ジョブLv.1の本人アバターって凄くね。どんなプログラム組んだらそんなのできんだよ。これ、やり込めば、十分本人にリターンが回ってくるってことだろ。マジ最高だろ」
武田は、今日の新人ダンジョン探索に行く予定を変更し、ゲームルールを学ぶため、しばらく八神家で実際のゲームプレイを楽しむこととなった。
そんな武田だが、たまに手が小刻みに震えるのを、僕の目が捉えてしまった。
(ああ、どうしたらいいのかな?)
という心の呟きは、僕に憑依してるフェアには筒抜けだったようで、すぐに念話で語り掛けてきた。
(大丈夫ですよ。今日中に完治する予定を組んでますから、翔太様はどっしり構えていてください。あとはフェアが対処しますので~、お任せあれ~です)
(やっぱさ、マジ有能すぎるよね。このサイコ妖精さん)
「え、探索者登録してないわたしにも、魔物アバターの経験値入るの? アバターが覚えたスキルも生えるって、それもう、探索者だよね。凄くない、このゲーム!!」
美穂も負けず劣らずに、自分の表情を含めた驚きを、身体全体で表現してくれた。
優斗兄さんの言うことにいちいち反応する、優兄ラブの美穂。
そんな美穂に対してだけど、僕に憑依しているサイコ妖精のフェアさんから新たな情報が頭の中に直接届くと、その内容を、僕の話には耳を貸さない妹の美穂に、横から尤もらしく話して聞かせる。
「ある程度、魔物アバターが育つと、ゲーム機本体からプレゼントカードが貰える仕組みらしいよ。そのカードは『サーバントカード』って言って、育てた魔物アバターを実際の迷宮に召喚できるっぽいよ。で、ゲーム機を通じて実在する迷宮探索もできるって聞いてる。今回はそれの実証実験も兼ねたゲームテスターに美穂が選ばれたって訳」
「えええ、何それ、凄っ!! それ、魔物アバターが育ったら、優兄とも一緒に迷宮探索できるってことでしょ。やる、やる。わたしゲームテスターになる」
美穂の興奮は、想像以上のものだった。
そして、お互いに平穏な空気を保つという名目のもと、八神家のダイニングリビングルームを二つのグループに分けることにした。
リビングソファで遊ぶグループが、僕、八神 小恋路、武田 新之助のグループ。
ダイニングテーブルで遊ぶグループが、八神 優斗兄さんと、僕の妹の朝倉 美穂だ。
優斗兄さんと美穂は、家庭教師と生徒でもあり、理想の兄と崇める美穂と、可愛い妹のように接する優斗兄さんという複雑な関係性なので、もう、そっちは優斗兄さんに丸投げするのが一番だと判断したかたちだ。
リビングソファの前のテーブルにはジュースとお菓子とグラス、そしてフェア特製半熟煮卵入りの大皿をセットして準備完了といった具合。
僕ら三人組はパーティを組み、最初に八つの選択可能なプライベートダンジョンから、武田のゲーム操作が一応かたちになるところまで、最初にテストプレイで探索した洞窟型ダンジョンを選択することにした。
「準備はいい?」
「おう、いつでもいいぜ!!」
「じゃあ、始めましょうか!!」
三人共、ゲームプレイに沼る準備は整った。
さて、楽しい探索の時間だ。
◆◇◆◇◆◇
ダンジョンバスターズが本格的に起動すると、ゲームコントローラーを起点に、極めて自然に、宙に浮かぶ四つの投影画面が展開される。
「おいおい、この四つの投影画面、ステータスウインドウ技術、普通に取り入れてるけど、これ、ホントにゲームかよ。背景映像がとんでもなく本物すぎるだろ」
洞窟ダンジョンのスタート地点に、突然、転移する演出で現れたのは、僕ら三人のアバターだった。
武田アバターは、初期段階ですでに足軽侍の鎧を装備してる。
対して小恋路アバターは、長時間探索したと感じるくらい、装着している軽装鎧に汚れが目立つ。僕のアバターも同じく汚れている印象を受ける。
ゲーム内設定が確認できるコマンドウインドウから、パーティ情報ウインドウに切り替えて、武田のジョブと小恋路のジョブを確認してみると。
名前:武田 新之助(15)
ジョブ①:侍大将 Lv.1
(え、かっこよ……それに比べて僕の『卵売りの商人 』、笑いを取りに行くジョブ。もう少し、固有名詞、何とかならなかったのかな)
名前:八神 小恋路(15)
ジョブ①:雷風姫 Lv.3
ジョブ②:精霊姫 Lv.3
ジョブ③:英雄姫 Lv.3
(うわお、フェアさん、ちょっと前と今じゃ、すごい変わりよう。これ、やりすぎじゃないの。これもう、絶対主人公枠だよね。僕いらなくね……)
(そんなことないですよ。小恋路ちゃんには、頑張って翔太様の剣と盾になってもらわないとです~)
(そうですか~。一応、人類枠からはみ出さない様にお願いね)
(アイアイサー)
そんな僕の心の声の外で、小恋路は、切実な共感の意思を示した。
「わかるわ。その気持ち。現場感満載なのに汗もかかずにダンジョン探索できるって、これまでの常識だったら、まずあり得ないわね」
「そうだね。わざわざ電車に乗って魚津の初心者ダンジョンに行かなくてもいいのがいいよね」
「ホントそれ」
そんな日常会話を挟みつつ、僕たちは三人で協力しながら、スライム、大ねずみ、一角兎などの魔物討伐に励んだ。
『卵生成スキルにスライム情報を登録しました』
『卵生成スキルに大ねずみ情報を登録しました』
『卵生成スキルに一角兎情報を登録しました』
(そうですか~。ここでも、卵生成スキルが成長できるのね)
超安全なスキル能力向上システムまで組み込むとは、さすがはサイコ妖精のフェアさん。これを全世界に広めたいって、日本政府管理下にある預言者から敵認定されそうになったのも、納得できるというものだ。
「ところでよ、翔太。その翔太のアバターに付き従う、目と口がある緑色の卵。それ、なんだ?」
(ああ、玉ちゃん十一号のことね)
ようやく、その話題に触れてくれたか。
こっちとしては、いつくるのかと、ずっとそわそわしながら待ってたんだけどね。
ほとんどボケーっと突っ立ってる僕のアバターの代わりに、さっきから玉ちゃん十一号は奮闘しつづけていた。
その口から伸びた長い舌を使い、魔物を何匹もまとめて突き刺しては、ばったばったと黒い煙を残して消し去る。こんな感じで、魔物の姿を数えるのも面倒になるくらい大量討伐してました。
まさに、戦闘卵種といってもいい強烈な個性を見せびらかしてたから、普通に目立ってた。
さらに、討伐して出現した魔石や素材を、ちょっと巨大化して、もぐもぐと美味しく食べてその身に収納してくれる便利機能までお披露目してたんだけど。
多分、あまりにも非常識な存在に、触れるのを躊躇したということかな。
ちなみに玉ちゃん十一号という本名を名乗ると、そこから色々推測されそうなので、武田と美穂の前では玉ちゃんで通す段取りを、あらかじめ作戦段階で決めている。
「ああ、これね。これは僕のスキルだよ。『特殊生成卵』の玉ちゃん。ほら、玉ちゃんご挨拶して」
コントローラーマイク越しに、ゲーム内、洞窟ダンジョンに存在する玉ちゃんに呼びかけると、
「始めましてでちゅ。玉ちゃんでちゅ。武田ちゃん、宜しくでちゅ」
玉ちゃんは、ウインクするかのように目をパチパチさせ、舌を伸ばして武田アバターの顔をペロリとひと舐めした。
「おいって、卵が喋るって衝撃過ぎるだろ。翔太のスキルは、どんだけぶっ壊れてんだよ」
「うん、わたしもそれ共感できる」
「八神もそう思うか。ホント勘弁してくれって。俺が密かに自慢しようと思ってた侍大将が、比較対象にならないくらい霞んで見えちまうんだけど……なあ八神、俺ってばよ、どうすればいい?」
「深く考えたら負けよ。ありのままを受け入れることね」
酷い言い草だ。こんなにキモ可愛いのに。
百面相をやらせたら、間違いなく天下を取れる力をも兼ね備えてるのにさ。
そんな玉ちゃん十一号は、褒められたと思ったのか、元気一杯、目から玉ちゃんビームを発射した。
刹那の破邪の光線は洞窟壁を一直線上に突き進み、壁に隠れていた隠しキャラ魔物――岩ゴーレムを一撃のもとに葬ってみせた。
『卵生成スキルに岩ゴーレム情報を登録しました』
(わお、それいいかも。卵ビームって、ロマン武器の予感がビンビンするよ)
「……おい、八神。ありのままに受け入れるにも限度があると思わないか?」
「うん、わたしもそれ共感できるわ」
小恋路が淡々と頷き、武田は頭を抱え、玉ちゃん十一号はビームを撃った直後のドヤ顔でぷるぷる震えている。
まあ、あんまり玉ちゃん十一号ばっかり活躍してもつまらないから、ほどほどにするように言い含めると、今度は小恋路の活躍が目立ち始めた。
本日、フェア複製体からのステ振り支援援助を得て、ニッコニコの小恋路さんは、練習相手の魔物を見つけては、英雄姫ジョブからの派生スキル、英雄剣術の構えを色々試しながら剣を振り続けていく。
そのたびに、白雷閃光の波動を放つ一閃が飛び交い、斬られた魔物が次々と二つに割れ息絶えると、次の瞬間、黒い流砂となり崩れ落ちる。その後の流砂は、風に流され徐々に散っていく。
(これ、このまま修行してたら、近い内に剣聖とれるんじゃね)
(さすがは翔太様。小恋路ちゃんの次の目標は剣聖姫だそうですよ)
新人探索者になったのが昨日。それで次の目標がそれだと、一般人目線でいうとアタオカにしか思えないんだけど。
そんな英雄の力の可能性を模索し続ける小恋路の剣術捌きと、どうしても比較対象として見ざるを得ない、侍大将《さむらい大将》の武田の動きだけど、どことなく精彩を欠けているように感じてしまうのは、ある意味仕方のないことだ。
やはり、昨日の出来事が尾を引いているようだ。
武田アバターのステータスにも、状態異常はしっかり表示されていた。
状態:寝不足、トラウマ
あえて触れないようにしてたけど、やっぱり、調子悪いの、ばればれだし。
武田本人は、触れてほしくなさそうにしてるし、さて、どうしたものやら。
昨日の新人研修。
僕、小恋路、優斗兄さんは、フェア誕生の瞬間に立ち会ったことで、免れることができた、佐々木 勝正が主導した袋小路に誘い込まれての襲撃騒動。
一旦グループを二手に分けてしまったことで、武田、上杉、マリンが襲撃事件の被害者となったことは記憶に新しいことだ。
その時にA級探索者パーティを含めた連中から、強烈な悪意を浴び続け、その中で贖い、ついには膝を折り、仲間を残して先に気を失う。それは武田にとっては、トラウマになるのに十分すぎる出来事だったはずだ。
武田は最初に倒され、意識を失ったから、結局、結末がどうなったのかが、最後まで全く理解できていないと思う。
僕、小恋路、優斗兄さんは、暗躍したフェアの圧倒的という言葉すら生ぬるい強制鎮圧能力をまざまざと見せつけられたけど、まだ被害者の三人にはフェアの存在すら明かしていない。
サイコ妖精のフェアに至っては、武田をまだ信用する以前の前段階でしかなく、味方陣営にすら加えていない状況だ。
多分、いまは武田の人となりをまじかで観察しているのだろう。
フェアの性格からして、そんな気がする。
(翔太様、昨日、気を失った武田ちゃん本人を実験台にして完成させて、サブスキル登録までした『睡眠卵』。沢山つくりましたよね~、それを武田ちゃんにプレゼントすれば、眠気スッキリするんじゃないですか~)
(あ、そういえば、あったね、そんなこと)
最初は赤色と青色に半々に別れた特殊卵。
魔力を注ぎ、全色赤色にすると、睡魔吸収できる状態。
また魔力を注ぎ、全色青色にすると、睡魔付与できる状態。
ぶつければ発動し、発動後は自動で手元に再構築した状態で戻る。
能力再構築回数は百回に設定しておいた。
本来、睡眠を必要としているけど、トラウマが脳裏に焼き付いて眠りにつきにくい体質が出ている武田本人には、赤色卵をぶつけてやれば、立ちどころに眠気が取れて、スッキリするはず。
あとは体力回復など、色々詰め込んだフェアさん特製半熟煮卵を食べてれば、体調もよくなり、すぐに元気も回復するだろう。
残された問題がトラウマか。
さて、サイコ妖精フェアさんのお手並み、ここは一つじっくり拝見させてもらいますか。




