後日談6 帰る場所
中学のアルバムを見ると、年々晴夏の笑顔が洗練されていったのが分かった。
(さっきの小学校の同級生の笑顔と、この芸能人みたいな男子の笑顔を混ぜたのか?そりゃあ破壊力も上がるよな……)
写真を見る限り、中学の卒業式の時点で既に、いつもの対人用笑顔が完成していた。
「お義父さん、今日はありがとうございました。今度は子供たちもいっしょに会いに行かせてください」
「こちらこそ、晴夏のことを知ろうとしてくれてありがとう。……なるべく長生きはしたいと思ってはいるが、いずれは晴夏を置いていってしまうことになるだろうから。湊くんが側にいてくれれば安心だ」
「…個人的にはひ孫の顔も見て欲しいですよ」
(ハウスキーパーのメシのストックは冷凍されているが、久しぶりに作るか……。買い物に行ってから、2人を迎えに行こう)
湊はスーパーで夕飯の材料を購入した後、実家で過ごしている子ども達を迎えに行った。その時、母から希望を伝えられた。
「ねえ、湊……。まだ黒川くんのお家の病院の跡継ぎ候補に、ゆうちゃんか海斗ちゃんを考えているの?理由が理由だし、それは構わないんだけど…」
(またその話かよ)
「まだあなた達は若いんだし、何かあった時のためにも、後もう1人お願い出来ればありがたいのよねえ……」
「海斗がまだ幼いので。正直なところ、計画はまだまだ立てられませんね」
(そもそも海斗の妊娠が分かってから何も無いしな)
「ごめんね、母さんがもう1人産めてたら湊にしんどい思いをさせることも無かったのに…」
「……授かり物なので、どうなるかは誰にも分かりませんよ。母さん」
湊は母に対して手術前の患者を安心させる時専用の笑顔で微笑んだ。
(母さんは俺が出来るまで、相当苦しんでたらしいしな……。父さんもじいちゃんも仕事でいない時は、きついばあちゃんと2人きりで残されてたらしいし)
湊の母は、そこそこ裕福な家庭から開業医の家に嫁いだ側だった。
「ありがとう、湊。晴夏ちゃんも…。最初はすぐにダメになるかと思ってたけど、貴方を信じて全て任せてて良かったわ」
(また蒸し返すのかよ、めんどくせえ。早く子ども達と帰りてえ)
「あ、パパだー!」
「しゅきしゅきパパぁー!」
子ども達の全力タックルを、湊は柔らかく笑いながら抱き止めた。
「そろそろ帰ろうか。2人ともいい子にしてたか?」
「おばあちゃんとお絵かきしたよー!あとトランポリンしたよ!」
「おーかきぃ、ぴょんぴょーん!」
「そうか。じゃあ、おばあちゃんにありがとうを言ってから帰ろう」
「おばあちゃんありがとうー!」
「おばーちゃ、ありゃあと!」
「ほんと可愛い子たちだわ。また来てねー」
(何もしてないのに疲れた…)
(大学生になってからだったか。実家に帰ると息が詰まるように感じ始めたのは…。自分のことを自分で決められるのは、楽なんだよな……)
「悠翔、海斗。今日は帰ったら手を洗ってから、いっしょに夕飯を作るぞ。お手伝いしてくれるか?」
「はーい!」
「あい!」
2人をチャイルドシートに乗せ、いたずら防止にドアロックをかけてから、走り出した。




