後日談3 甘い微笑みと子ども達
「ねーねー、ママ!パパの誕生日って、12月だからクリスマスと一緒にしてるの?」
「え?」
「だっていつもクリスマスしかケーキ食べてないよ?」
悠翔からの純粋な質問に、晴夏は言葉に詰まった。
『プレゼントもケーキも必要ない。誕生日会なんて子どもじゃないんだから時間の無駄だ』
去年までの湊の言葉が脳裏に浮かぶ。
(それでも。私からのは拒否していても、子ども達からのプレゼントの絵は受け取ってくれていたから……)
「……その日は保育園の帰りに一緒に選んでくれる?」
「うん!いいよー。やったー!ケーキっケーキ!」
12月10日。湊の誕生日。
晴夏は保育園帰りに悠翔と海斗を連れて、近所のケーキ屋のショーケース前にいた。
「ケーキ、おいしそうー!全部食べたーい!」
「ゆうちゃん、全部は食べられないよ…」
晴夏が苦笑している間に、海斗はショーケースに顔をくっつけそうなくらいに近づいていたので慌てて抱え上げる。
「海斗っ。近いよ!?」
「ケーキぃ」
「美味しそうなのはわかるけど…」
「ねーねー、ママっ。このいちごがいっぱい乗ってるのは?おいしそうだよー」
「じゃあ、それにしようか」
そうして、4号サイズのいちごたっぷりショートケーキを購入し、100均で数字のろうそくを購入した。
19時前に帰宅した湊は、手を洗っている間にダイニングテーブルに準備されていた、3と0のろうそくが刺さったケーキを見て、やや渋い表情になった。
「必要ないと。言っていたはずだが……」
「ゆうちゃんが、パパの誕生日はクリスマスといっしょにしているのかと心配していて…。
保育園帰りに近所のケーキ屋で選んでくれたんです」
「パパーっ!いっしょに食べようよ!」
「パパ!」
晴夏からの飲食物を今まで一切拒否していた湊は、不安な気持ちになった。
(盛られて、ない。よな……?子どもも食べるんだし…)
緊張しながらも、家族が歌いおわると湊はろうそくの火を吹き消した。
「パパ、おめでとうー!」
「おめでとうございます」
「パパ、おめでと!」
晴夏がケーキを切り分けている間に、悠翔は画用紙を湊へ手渡した。
「これ、ぼくと海斗からのプレゼント!ここの手形と緑のぐるぐるが海斗のだよー!」
ぱぱだいすきと、真ん中に覚えたてのひらがなで大きく書いてあり。周りに手形やクレヨンで書いた絵が描かれていた。
「ありがとう、悠翔。海斗」
いつのまにか、湊は柔らかく笑っていた。
「パパ好きー!」
「パパしゅち!」
湊が子ども達に揉みくちゃにされている間に、4人分のケーキが置かれていた。
「みんな、そろそろ食べましょうね」
「わーい、ケーキだ!」
「ケーキぃ!」
ケーキを勢いよく食べる子ども達を横目で見ながら、湊はフォークで一口分すくった。
(大丈夫、だよな……?3人とも、食べているし…)
震えながらも口に運ぶと、優しい甘さを感じた。
(薬品の味はしない。大丈夫なのか…?)
「パパー!美味しいねっ?」
「パパぁ」
「ああ。…たまには良いもんだな」
彼は子ども達に一つずつ上に乗っていたいちごをあげた。
「くれるの!?ありがとう!」
「ありゃあとー!」
それを見た晴夏は戸惑った。
(旦那様の…。じゃなくて、湊のいちごがなくなっちゃう……!?なんで私、最初にいちごから食べちゃったの!?)
「そんなに好きなら、手をつけていないところを食べても良いぞ?」
「いいの!?パパ、ありがとう!!」
「ありゃーとお!!」
湊は我が子達の前に自分の皿を差し出すと、画用紙を片手に席を立った。
「みっ、みなと……」
「ゆっくり食べろよ?歯磨きもしっかりな」
「「はーい!!」」
湊は夫婦の寝室に行くと、ドアの前に絵を貼って微笑んだ。
「うちの子ども達は、世界一可愛いな……」




