最終話 燃え盛る瞳の奥の告白
翌朝。晴夏が起きると、夫婦の寝室の方から機械の音が聞こえた。
「おはようございます。旦那様……?」
湊は、シュレッダーで書類を処分していた。
「おはよう、晴夏。……もう、終わりにしよう。何もかも」
(その書類、もしかして婚前契約書!?)
「離婚、ですか……!?許しません!」
「お前は黒川や美澄が大切だったんだろう?俺は勝手に罪人扱いしていただけだ。縛り付けて、悪かったな」
「子ども達は、貴方の事が、大好きなんですよ!?」
「子どもは晴夏の好きにすると良い。もう縛るものは何も無いんだから」
晴夏はヒリつくような胸の痛みを感じながら憤っていた。震えながら湊の服の端を掴み、彼を見上げながら静かに言った。
「私だって、大好きです」
「世辞を言ってもらえる程度には情を感じていてくれたんだな」
湊の冷静な返答に、彼女の瞳の奥は燃え盛る。
「……誓いのキス。おでこにしてもらった時、嫌じゃありませんでした。怖くなかった」
「何……?」
「初夜の時だって、痛かったけど旦那様が気持ち悪さを我慢しながら醜い心の私を受け入れて下さって、嬉しかったんですよ?」
「……そんな事を思っていたのか?」
晴夏が怒りの涙を流しながら声を抑え込むように話すのを見て、湊は目を見開いていた。
「俺以外の相手の方が満たされるだろう?」
「キスは、高2の秋に黒川先輩にされた以来、誰にもされていませんし、この体は旦那様としかしてません!」
「それに、あの時逃げちゃったのは怖くて苦しかったからです。だから卒業まで会いに行く事が出来ませんでした……」
2人の間に沈黙が残ると、パタパタと足音が聞こえた。
「パパ、ママー!おはよー!!」
「おはよぉ」
悠翔が海斗の手を引きながら、ドアを開けていた。
「あれ!?ママまた泣いちゃったの!?」
海斗が湊の足にしがみついた。
「パパ、らいじょぶ?おかお、いたいたい?」
「パパとママ、ごっちんしちゃったの!?」
海斗の言葉にふと顔に手をやると、湊は自分が涙を流していることに気がついた。
「大丈夫だ。心配してくれてありがとうな。悠翔、海斗」
「ありがとう、2人とも。大好きよ」
「ママが戻った!やったー!!」
「ママー!」
晴夏は湊に近寄ると、背伸びをして囁いた。
「大好きです。信じてもらえるまで、何度でも言いますから……」
「俺は神なんかじゃない。それでも、良いのか……?」
湊が呟くと、晴夏は澄み渡る空のように微笑んだ。
「貴方だから。いっしょにいたいんです」




