26話 はじめまして
4月下旬。晴夏は、無事に男の子を出産した。
「旦那様2号みたいにそっくり……。可愛い」
すやすやと眠る我が子の額にキスをしていると、湊が面会に来た。
「2人とも元気そうだな。……この子は壊すなよ?」
「はい。分かっています」
(……こいつ、俺にそっくりな子をちゃんと愛せるのか?)
「抱っこされますか?どうぞ」
「おお」
(小さくて軽いが、温かい…)
湊が抱っこすると、寝顔が少しドヤ顔になった。
「昨日より、可愛くなったな」
「ありがとうございます」
(これで、少しは返せたのか?黒川……)
「大人になるまで、守ってやらないとな……」
「はい…」
(旦那様の赤ちゃんを見る目、優しい。こんな顔、初めて見た。良かった……)
(憎い私との子どもなのに、この子を愛してくれるんだ……)
晴夏は花のように微笑んだ。
「退院祝いの夕食は、管理栄養士とメニューを相談して作るから楽しみにしておけ」
「え?」
「出産祝いは俺のメシが良いと言っていただろう?まあ、最終的にこの子の栄養にもなるしな」
「旦那様……。ありがとうございます!」
湊は少し気まずそうに視線をそらし、手元の赤ちゃんの小さな頭をそっと撫でた。その仕草は、どこかぎこちないものだったが、それだけに本気さが滲んでいる。
「お前も無理はするな。ハウスキーパーは妊娠中と変わらず子育て経験のある2人だから、困ったことがあれば彼女らにも相談しろ。倒れられたら俺も困るからな」
「はい。ありがとうございます」
湊はふすん、と晴夏に向かって鼻からため息を出すと我が子に向かって微笑んでいる。
(もう、1人じゃないんだな……)
(この子は、旦那様と私の心の支えだ)
(生まれてきてくれて、ありがとう……)
心の中で呟くと、赤ちゃんが眠りながらニコッと笑った。




