25話 やっぱり谷村先輩じゃん!?
あやちゃんは、病院の帰り道に晴夏の父・正治を見かけた。
「ハルちゃんのお父さん、お久しぶりです!花村亜弥です」
「あやちゃんか!いつも晴夏と仲良くしてくれてありがとう」
振り向いた正治はたんぽぽのように微笑んでいる。
「ハルちゃん、最近産休に入りましたね。おめでとうございます」
「ああ。もうすぐ初孫に会えると思うと、楽しみで仕方がないよ」
(ハルちゃんのパパなら、話してくれるかな?)
「あ、そういえば!結婚式とかフォトウエディングとか、されたんですか?ハルちゃん照れ屋さんだから写真見せてくれないんですよー。見たいのに!」
あやちゃんは両手を合わせてから問いかけた。
「ほぼ身内だけだったからねえ……。これだよ」
正治はスマホの写真を見せた。怜悧な印象の美形な新郎と芍薬のような美しさの晴夏が写っていた。
(谷村先輩じゃん!?やっぱり、谷村先輩じゃん!!)
「わあー!ハルちゃん、綺麗〜!!見せてくれてありがとうございますっ」
「こちらこそ、娘自慢をさせてくれてありがとう」
(これって、復讐結婚だよね……。高校の質問会の時から、別人みたいな目をしているし)
(この事について尋ねても、多分本当の事は教えてもらえない。私にはずっと、対人用の笑顔だったもん…)
「ハルちゃんの赤ちゃんが産まれたら、遊びに行きたいです。楽しみ〜!」
「ああ。晴夏にも伝えておくよ」
あやちゃんは終始ニコニコしている正治と別れると、物思いに耽った。
(ハルちゃん、あのね……。ハルちゃんの過去を聞いた時、あなたの笑顔は楽器みたいだと思ったよ)
(昔バイオリンを習ってた時。良い音を出すために上手な人や先生のアドバイスを聞いたり、演奏を聴きに行ったりしてたもん。それと同じ事だと思ったよ)
(ハルちゃんの笑顔は、良い音色だと思っていたのに、いつになったら気がついてくれるんだろう?)
その時、あやちゃんの脳裏に美澄の姿がよぎった。
(もしかしたら、美澄さんかもしれない。ハルちゃんの心を動かせるのは)
(だってハルちゃんにとって、天使や神様みたいな存在って言ってたし)
(美澄さんの連絡先が分かれば良いのにな……)




