24話 新しい生命
晴夏の誕生日から翌月。違和感から検査薬を使うと、小さな窓に2本の線。
「旦那様。おかえりなさい。ご報告があります」
帰宅した湊に微笑んで検査薬を手渡すと、彼は一瞬氷の目を見開いた。
「病院には明日行こうと思います」
「おお……」
(確定したら、新たに管理栄養士のハウスキーパーを雇うことにするか)
「結果が出たらすぐにメッセージを入れろ。管理栄養士を雇うから」
「はい。承知しました」
(旦那様のごはんじゃなくなっちゃうんだ…。赤ちゃんのためだもの。仕方ないよね……)
(明日は総合病院へ行こう。確定前だし職場だと気まずいものね)
翌日。診察を終えると会計前にすぐにエコー写真と共にメッセージを入れた。
『お腹の中にちゃんといてくれてました。ありがとうございます。旦那様』
『安定期までは絶対に無理をするな。安静第一だ』
(旦那様。すぐに返信してくれた…)
つわりは思ったより軽めだった。朝だけ少しムカムカする程度で、勤務は続けられた。
(よかった…。旦那様に心配かけなくて済む)
ただ、湊は妊娠が確定した翌日から、家では何もするなとハウスキーパーをフル活用していた。無香料の洗剤や柔軟剤、換気扇の掃除頻度など、細かく指定していたそうだ。ハウスキーパーさんは、お弁当のおかずも詰めるだけの状態で冷凍保存。晴夏がやる事は、冷凍おにぎりといっしょにチンするだけだ。
(私は旦那様ごはんが食べられたら、それで充分満足なんだけどな……)
(でもこの配慮。さすが段取り名人)
初めての胎動は、リビングでソファーに2人で座っていた時だった。
「あ……。今、ポコって動きました」
「本当か!?」
湊が晴夏のお腹に顔を近づけて手を当てると、優しい動きが感じられた。
「あの、旦那様。くさいです。……髪が」
「!?」
湊は石化した。
(シャンプーか!?整髪料か!?)
「スーパー行ってくる!」
彼は慌てて無香料シャンプーを購入し、帰宅後は浴室に直行した。ネットで無香料シャンプーをまとめ買いし、翌日には美容院に行った。
「スパイキーショート?らしい。これなら整髪料を使わずに済む」
「旦那様、かっこいいです」
晴夏は輝く笑顔で誉めた。湊はいつも通り凍てついていた目をしていたが、皮肉げな笑みを忘れていた。
(我慢してたけど、昨日は限界でした……。よかったあ)




