18話 契約妻の朝支度
翌朝。男性が何かを話しているような声で晴夏が目を覚ますと、湊は既に身支度を終えて電話を切るところだった。
「おはようございます。旦那様…」
彼女の声はまだ少し掠れていた。
「おう。今ルームサービスを頼んだところだから、後20分くらいで朝食が届くぞ。支度しろ」
「えっ、こんな格好なのに!?」
勢いよく起き上がると、晴夏は少し腹痛を覚えた。
「いたた…」
シーツで体を隠しながら立ち上がろうとするが、転倒しそうになった彼女は湊に受け止められた。
「おい、気をつけろよ。……もういい。時短だ」
湊は晴夏にシーツを巻き付けて抱き上げると、彼女は昨夜の余韻の感覚を感じて真っ赤になった。
「お、降ろしてくださいっ。私重いですよ!?」
「は?元テニス部の筋力を舐めんな」
(旦那様の服を汚してしまったら、どうしよう……)
「その姿を他人に見られてもいいのか?」
湊は浴室のドアを開けて彼女を降ろすと皮肉げな笑みを浮かべて言った。
「早くしないと間に合わないが、俺が洗ってやろうか?」
「ひえ!?自分で出来ますからー!」
晴夏がバスローブ姿で急いで戻ると、湊へ女性物の衣服を見せている女性が3人部屋に居たため、彼女はドアを閉めて隠れた。
「……何をやっている?」
「知らない人達がいたのでびっくりして思わず…」
「外商を頼んだだけだ。下着屋もいるからルームサービスが来る前に着替えろ」
湊はまた晴夏を抱き上げると彼女達の方に歩いて行った。
(なんでまた抱っこなんですか、恥ずかしい!)
寝室とリビングスペースの間の広い空間に、ワンピースが並んで吊り下げられていた。
「最初に採寸をしますので、奥様はこちらに来てくださいね」
晴夏は衝立の向こう側で手際よく採寸され、いくつか見繕われた中から下着と肌着を手渡される。言われるままにそれらを身につけた。
「ワンピースは、こちらの水色と淡いピンクのものをご主人がお勧めされていましたが、どうなさいますか?」
その言葉を聞いた時、衝立を通り越して湊の刺さるような視線を感じた。
「えっと、こっちにします」
晴夏は自分の立っているところに近い方を選び、少し手伝ってもらいながら身につけた。
「お待たせしました。着替え終わりました」
淡いピンク色のフレアワンピースを身につけた晴夏を見た湊は、片方の口角を上げた。
「少しは見られるようになったじゃないか」
湊は7日分の晴夏の衣類をまとめて購入し、家までの配送を頼んだ。彼女達と入れ替わりにルームサービスが来て朝食をテーブルに置いて退室した。
「…時間通りだな。洋食と和食、好きな方を選べ」




