ルマの商い記 -25-
夜がさらに深まっていくと、夜市場もまた表情を変えていく。
店構え自体は変わらず、店内は立ち飲み、店外は座り飲みといった様相をしている。
その変化とは、客層が変わってくる。
夜が深まっているとはいえ、まだまだ人の起きている時間。
大抵は働きに出ている人々で、主に青年から中年層が多い。
そういった人々は明日に備えて寝る時間ともなれば、店から引けていくのは頷ける状況だろう。
そうして徐々に客が店からいなくなる。
ほとんど誰もいない、がらんとした店がいくつも並ぶ。
そこでいくらかの店舗は灯りを落として、店を片付ける準備を始める。
その入れ替えを待っていたかのように、灯りを点し始める店が現れ始めるのも、この入れ替わりの時間だ。
あるいは開けっ放しのままで、客を一旦外に吐き出してから、再び準備をする店も幾つかある。
店の灯りはさっきまでの煌々としたものから、ろうそくのような薄暗がりの灯りに変化していく。
妖艶とも言えるような薄暗がりの灯りの中、夜中の顔をした店が開店する。
中には、昼の酒屋で営業を終えた店の空いた場所に入れ替わりのようにはいる屋台もある。
そんな屋台でも、明るさはろうそく灯り程度といったもの。
何故か煌々とした篝火は一切なく、その火を切り分けたような小さな松明やろうそくといった弱い灯りのみに落ち着いていく。
この理由は、夜半まで営業を続ける店が当局などに目をつけられないように、という慣習なのだという。
そんな妖しい灯りの奥では、さぞ怪しい商売がなされているのだろうと中を覗いてみる。
すると、先ほどと変わりない酒を出す店がほとんどなのである。
それでも客層は先ほどまでの年代よりもだいぶ若い層が入っていく。
若者独特の文化なのか、あまり顔から下だけが、灯りに照らされている。
そこでは、暗がりの中で様々な交わし合いがなされているという。
また、この時間になると占いや相談所といった、昼間には目にかかる事が出来ない商売も目にすることが出来る。
そういった商売目当てでやってくる若者も少なくないせいか、この時間帯はかなり若返った層が歩いている。
当局はそこで歩いている人間が誰であろうと、夜市場は全てを自己責任と定義しているため、一切の手出しをしない。
それ故にたとえトラブルに巻き込まれたとしても一切の手出しをしない。
幸いにしてそういった大きなトラブルは今まで発生していないので、相互に信頼が担保されている。
無論そうならないために夜市場に集まる店主が連合して自警団を組織して運営しているため、トラブルは自前で処理されているということも、相互信頼の担保のひとつでもある。




