ルマの商い記 -24-
ルマの入った店は国営市場入口から離れた場所。
夜市場の構成は国営市場の出口を目抜き通りにして、幹のように真っ直ぐ伸びている。
そこから枝のようにして幾本の横道が伸びている。
枝に行き止まりはなく、なんとなく店が少なくなり、いつの間にか道がなくなっているような場所。
その中で、ルマが入った店の場所は奥から3番目とかなりの奥。
賑わっている入り口付近の店をあえて避けているような感はあるが、ルマは表情を変えること無く入っていく。
店に入ると、酒を出す時間とあって店内は他の店と同様、テーブルが2個だけになり、あとは椅子が点々と置かれている。
カウンターには常連と思しき4人。
店頭と店内には5,6人といったところだろうか、常連ではないような空気感で酒を飲んでいる。
まずは挨拶というように、店内の一番奥のカウンターへ向かう。
この手の店では注文はカウンターで行い、そこで飲み物を持って席へ行くやり方が通常のようだ。
ルマは風下の国での商売に慣れているので、その作法はよく知っている。
奥のカウンターで店主に声を掛けた。
「すみません、お茶か乳の類はありますか」
柔和な表情をまったく崩すこと無く、酒でない飲み物を注文した。
「お客さん、お茶ってことは未成年かい。
それなら早く帰った方がいい」
細い顔立ちの店主から、からかいではない注意を促される。
「ああ、いえちゃんとしていますよ」
ルマは鞄の中から書類の束を取り出すと、そのうちの一枚を店主に見せた。
「国営市場の許可証か、それなら問題ないな
で、どのお茶にします」
書類の一瞥でルマを未成年ではないと確認した店主がお茶の種類を尋ねる。
「食後なので少し落ち着けるお茶があると嬉しいです」
その注文に、頭にあるメニューを巡らせた店主が、奥に入っていった。
すぐに戻ってきた店主の手元には紫色のお茶が注がれていた。
「見た目は驚くけれども、落ち着けるお茶ですよ」
差し出されたのはグラスではなく陶器のカップだった。
他の客はグラスで酒を出されているので、ルマの手元だけ違和感がある。
怪しい色のカップに口を付ける。
紫の液体を飲み込む。
喉を抜けて胃に注がれると、胃の中が爽やかな感覚に包まれる。
すっきりとした感覚にもう一口が止まらなくなる。
すぐに一杯を飲み干してしまったルマは驚いた表情のまま店主に聞いた。
「このお茶はどこで入荷したんですか」
ルマの素朴な質問に、店主は公営市場であることは教えてくれた。
けれども、どの店かと聞かれると専門店である事以外ははぐらかされてしまった。
とはいえ正規のルートで売っていることは教えてくれたので、明日にでも買ってみようという心境になった。
ルマは変わらずお茶を頼み続けている。
すでに3杯は飲んでいるが、一向に酒を飲む気配がない。
店主や常連はやや怪訝そうにしているものの、一切意に介していないようだった。
そうして市場の夜はさらに深まっていく。




