ルマの商い記 -22-
夜が深まる。
ルマは店を出た後も、市場をふらりと歩き回っている。
市場の様子もだんだんと深まっていく。
食事を出している店が椅子を片付け始める。
早い時間に店じまいをするのかと思いきや、店の軒先に椅子を並べ始めた。
夜市場では夜が深まり始めた頃になると、居酒屋の性格が強まっていく。
食事の提供が一通り終わり、子連れの客が減り始めたのを確認して酒の提供を始める。
夜市場の暗黙のルールとして、酒は子連れに提供をしないというものがある。
このルールが出来上がった由来はいくつかあるという。
どうやら以前は酒も食事も提供していたのだが、とある子連れ客が悪酔いして人前で子を痛めつけていた。
その光景を見て、みっともない姿を晒してしまうのは良くないといった機運が高まり、自主的にその流れが生まれたというもの。
もうひとつは、こちらも以前は酒の提供を行っていたものの、国営市場側から早い時間での酒類の提供は、市場の収益を損なう可能性があるため、提供を控えてほしいという申し入れがあった。
はじめのうちは市場原理から無視を決め込んでいたものの、国営市場側から夜市場への規制をほのめかされたために、渋々従ったというもの。
そのどちらも酒で面倒を起こすことによって国営市場のおこぼれに預かっている夜市場の安定が脅かされることを忌避していることに変わりはない。
規制と自主性の隙間で生計を立てているのだから、それは当然の事だろう。
そうこうしているうちに夜は深まる。
ほどんどの店の奥はどんどんと広がり、カウンター席がいくつかあるほどに。
軒先には椅子だけが並べられている。
テーブルのようなしっかりしたものはなく、樽や逆さにしたカゴを簡易のテーブルに仕立てている。
各店には常連が入り浸っており、各々の仲間内を形成している。
どこからか常連同士のやり取りや居酒屋談義が始まる。
わずかの時間で一気に盛り上がり始め、活気づく。
さながら昼間の大通りのような賑わいを見せる。
昼間は全くもってがらんとしている場所とは思えないほどの盛況ぶり。
それが毎晩続くというのだから、驚くべきことである。
屋台は店の場所を変えて営業をしていても、常連はその屋台を探し出す。
この結束感が堪らないと、常連が高らかに語らっていた。
そんな盛況な中をルマはまたふらりふらりと歩いていく。
かなりの喧騒の中でも、柔和な表情を崩すことなく歩いていく。
先ほどまでの画板に細かくメモを取っていたのとは全く違って、時には中を覗き込んでみたりと、楽しそうに歩いている。
席の無い屋台の前に置いてある看板と、屋台で作られている食事を見比べては、またあとで来ます、とコミュニケーションを取りながら夜市場を堪能していた。
深くなっていく夜。
ルマが入る店はあるのだろうか。




