5 協働
化物に襲われた日から一夜明け、俺達は事務所で作戦会議をする事にした。
「そういえば春之、仕事は大丈夫なのか?」
「二週間の有給を取ったから、それに関しては心配無用だ」
それなら安心だ、だが期限は二週間...あまり悠長にはしていられない。
「それで、協力してくれるのはありがたいが、一体どうするつもりだ?」
春之は疑問を投げかけてくるが、俺はあっさりと答える。
「決まってるだろ?直接見に行く」
俺がそう返すと、春之は渋い顔をしながら言った。
「言っておくが研究所への侵入はほぼ不可能だ、セキュリティが頑丈すぎる。監視カメラや警備員だらけだ、警報装置までついている」
どうやら事前にある程度調べていたらしい。「それに」と、春之は付け加え。
「研究所には従業員とその関係者しか入る事が出来ないんだ」
だろうな、それくらい俺にだって分かる。
「分かったか?研究所に侵入するなんて不可能だ」
春之がそう言うと、俺は笑みを浮かべながら答えた。
「侵入はできなくても、潜入は出来るかもしれない」
「何?」
俺がそう告げると、春之は疑問符を浮かべた。
「例えば記者のフリをして、取材という体で堂々と正面から入る。この方法なら、もし実験の証拠を押さえる事が出来なくても、何らかの情報を得られるかもしれない」
「成程.....でも、仮にその作戦で行くとしても取材許可なんて下りるのか?」
「そこは俺の腕の見せ所だ、ついて来い」
俺達は外に出て、近くの公衆電話に入る。俺は電話機に硬貨を入れ、受話器を取る。そしてそのまま番号を入力していく。
「おい、何をする気──」
春之が言い終わる前に、俺は口元に人差し指を当てる。
すると、2コール目で電話が繋がり...
「はい、こちら権座研究所です」
と、電話口から女性の声がした。
「東◯新聞です!実は権座研究所様に是非取材をお願いしたく、こうしてお電話をかけさていただいた次第です」
「どういった内容の取材でしょうか?」
「実は私、御社の商品に大変お世話になっておりまして、御社の商品の良さを世の中にもっと広めたいんですよ。それに、権座研究所のような大企業の事はみなさんも気になっている事でしょう。」
(コイツ...口がよく回るな)
春之はそう心で感じた。
「.....5日後の13時なら空いていますが」
俺がおべっかを使いながら捲し立てると、電話口の女性はそう告げる。
(よし...)
俺は心中でそう思いながらも、変わらず演技を続ける。
「5日後の13時ですね!かしこまりました!お時間いただきありがとうございます!、それでは失礼いたします!」
そう言って俺は電話を切る。
「秋一、どうだった?」
「上手くいったよ」
俺がそう告げると春之は一瞬、安堵したような表情を浮かべたが、すぐに険しい顔になり。
「まずは第一関門クリアだな」
「ああ、本当に大事なのはここからだ、一旦事務所に戻ろう」
事務所に戻ってきた俺達は改めて向かい合う。
「決行は5日後だ、春之、覚悟は出来てるか?」
「愚問だ」
「そう言うと思ってたよ」
俺達は互いに微笑む。
「じゃあ、俺はその時に向けて色々と準備しておきたいから、この辺で」
そう言うと春之はソファーから立ち上がる。
「そうか、見送りは?」
「必要ない」
春之はフッと笑いながら帰っていった。
外を見ると空はすっかり薄暗くなっていた。
「さて、俺もそろそろ帰って当日に備えておくか」
そう言って俺は事務所を後にした。
協力関係を結んだ秋一と春之の初の共同作業です。この件をきっかけに二人の信頼関係はますます発展していくのか...!?




