2 化物
「化物?」
俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう
"化物"確かに彼はそう言った。だが、いきなり化物などと言われて理解が追いつくはずもない。一旦、俺は彼を事務所内のソファーへかけさせてから尋ねる。
「恐れ入りますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
「僕は後藤春之、20歳です、工場作業員をしています」
目の前の青年はそう告げた。年は俺とさほど変わらない、そう思いつつも俺は本題に入る。
「化物とは?」と、俺が尋ねると後藤という青年は手元の写真を俺へ渡す。
「これを見てください」
受け取った写真は森の中を撮影した物のようだ、よく見ると、ぼやけていて見えづらいが端のほうに背丈がおよそ3メートル近くはあろう黒く、三日月のように大きく裂けた口を持つ謎の生物が写り込んでいた。俺は背筋がゾッとするような感覚を覚えながらも、極めて冷静に告げる。
「合成では?」
「本物です、調べてもらって構いません」
後藤は真剣な眼差しで告げる。
「これを何処で?」
「奥多摩の森で撮りました」
「後藤さんは何故そんな所に?」
「ハイキングをしてました、気分転換に」
ハイキング.....少々引っかかる所もあるが、わざわざ追及する程のことでもないか。そういえば、なんでこの人は俺にこの化物について調べて欲しいんだ?
「何故この化物についての調査を僕に依頼したいんですか?」
「僕はたまたまソイツを写真に収めることが出来ましたが、その後一瞬で消えてしまったのでそれ以上のことは分からなかったんです、それに、事務所の入り口の張り紙に『どんな依頼もお受けします』と書いてあったので」
(...確かにそんな事書いてた気もする)
「って、そうじゃなくて何故この化物のことを知りたいんですか?」
「.....好奇心です」
成程、好奇心ときたか、普通に考えたらこんな依頼、「馬鹿にしてんのか」って門前払いだが、俺は.....
「承知いたしました、その依頼引き受けましょう」
平凡な日常が塗り替えられる、そんな予感がした。




