勇者と魔王1(挿絵あり)
カラナとユウジの突然の襲撃で生じた混乱は収拾がついた。王国へと踵を返すシュウ、リリィ、ホヅミの三人に集う様に、兵士達が駆け寄る。
「おいよせ! やめろ! やめろー!」
多勢によるシュウの胴上げが始まった。兵士達は最後のシュウが放った一撃を遠目で見ていたらしい。シュウは取り乱して暴れる。リリィとホヅミにはそれが滑稽で面白そうに見えたので、兵士達と共に英雄を空へと放り投げるもてなしに参加した。
城に戻る途中、シュウを待たせて服屋に寄る。ホヅミとリリィで相談し合って、リリィの家名に因んだ衣装にする事となった。
「どう? 似合ってる?」
「……………」
我がもの顔でリリィは聞くが、無言のシュウだ。
「ちょっと、何か言ってよ」
「う、うるせっ……早く行くぞ」
慌てる様に急かす様にシュウは城の方角へと向き直る。リリィは不満気に膨れ面だ。
「……似合ってるよ」
「え?」
限りなく小さな声で何かを呟いた様に聞こえたリリィ。こうして三人は城へと赴く。
そして、祝宴が開かれる。大洪雹の始末を潜り抜けた際の慰労を込めて、また思わぬ襲撃に対し返り討ちを果たしたシュウ達の活躍を讃えて、たくさんの豪勢な料理が振る舞われた。ホヅミにはどれも見慣れない料理ばかりで、さながら海外料理を思い浮かべる。中にはお酒も用意されている様で、その賑やかさはまるで酒場のごとし。兵士達も宴が始まれば人だ。ゲラゲラと下品に大笑いを立てて、愉しげに酒と食事にありついていた。
「あるぇ? ホヅミん? おしゃけ飲まないのぉ?」
酔っぱらいのおじさん達に紛れて一人絡んでくる者がいた。
「いやぁ、私未成年だし」
「みしぇーねん? 何? それ。ほらほら、早く飲まないと……みーーーんな………飲んじゃうよぉ?」
密接して絡むリリィの息はどっぷりとアルコール気が馴染んでいた。とろけた面持ちでピンクだった頬の色は真っ赤っか。ホヅミは少し呆れ気味に目を逸らすが、逸らした先にはシュウがいた。シュウは暴れるでもなく騒ぐでもなく、静かに木製ジョッキの飲み物に浸っていた。頬が赤いので恐らく酒だろう。そういえば初めて出会った日も、未成年などお構い無しに酒場で飲んでいたなとホヅミは懐かしむ様に思い出す。
すると一人シュウに近づいていく者がいた。その人は綺麗な赤いドレスを身にまとい、そのドレスをそのまま写したかの様に、出来上がった面でジョッキ片手に歩み寄っていく。
「シュウぅ〜。よく無事で帰ってきてくれた。妾はもう心配で心配で腹を裂く思いじゃったぞい」
アリスがシュウに悪絡みしている。シュウの後ろに回って抱き締めていた。頬をすりすりと頭に擦りつけて、まるでシュウの反応を待っているかの様に。
「妾のぅ、可愛い可愛いシュウがいなくなったらと思うと……はぁ……ほんとうに良かった。妾の夫が帰ってきてくれて………」
「あん! 誰がてめぇの夫だコラッ!! 離れろ!!」
「ああシュウよ……マイラブパートナー」
じたばたとするシュウを物ともせずに抱き締めることを止めないアリスは、なぜだかホヅミにはとても勇敢に見えてしまった。
愉快な時は過ぎ、それから夜を越す。
シュウ達三人は旅へと向かわされず、アリスから待機命令が出ていた。それは昨日の件。まず一つに、シュウが吹っ飛ばしたユウジの死体だが見つからなかった。よって死亡の確認はまだ出来ていないという事。二つに、昨日地盤の崩壊と共に発見されたとある石版についてだ。後の捜査後に出てきたらしい。それの解読を今朝方まで学者が書庫で篭もりっきりで行っており、つい先程完了したのだ。
「人と魔族と魔物とを繋ぐ架け橋、ホーミスト。この石版にはこう書かれておる。恐らくホーミストとは国の名前じゃろう。妾も、これを解読した考古学者も、聞いた事のない名じゃ」
女王の間。王座の前に立つアリスの手には石版が持たれていた。石版には不可解な文字が書かれている。そう、ホヅミやシュウにもその文字は全くと言って読めないのだ。異世界人の特典とも言える文字変換は行われない。ただホヅミは以前にもその様な文字と出会った事があった。シンア村から外れた森の中。そこにあった石碑にも、今アリスが手に持つ石版と同じ様な文字が書かれていた。
「ホーミスト、どこにあるのかは分からない。故に、探す命をお主達に与える」
「おいおい待てよ。何の探す宛もねぇのに良く言うな」
わしわしと頭を掻きながらため息をつくシュウ。
「これから旅をしながら、それらしい所を徐々に探ってくれ。言うならば、追加の任務じゃな」
「ちっ………分かったよ。やりゃあ良いんだろやりゃあ」
シュウは仕方ないと言った様にもう一度ため息をつくと、踵を返して背中を向ける。ホヅミもそれに続いた。
「ん? どうしたのリリィ」
リリィはその場で立ち止まってアリスの方をじっと見詰めていた。
「あの………女王様。その石版に書かれているのは、先程の事柄だけですか?」
何かを伝えた気に、疑問を投げかけるリリィ。意外なリリィの申し出にアリスは首を傾げる。
「いや、実は違うのじゃ。解読出来たのは先の事柄だけで、他の文字は全くと言って良い程読めぬらしい」
それを聞いたか否かリリィは駆け出した。アリスの元まで行くと、アリスの懐に押し入り、その手の石版を食い入る様に見る。
「何じゃ!?」
「………やっぱり………これ、ボク読めるよ」
そのリリィの言葉にはその場に揃う考古学者、更には付きの兵士達まで、皆が一意に振り返る。
「何じゃと!? それは真か!?」
「うん。人と魔族と魔物とを繋ぐ架け橋、ホーミスト。ミラージュフォレストの奥にその地を設けた」
「何!? ミラージュフォレストじゃと!?」
次に驚きの声を上げたのは考古学者の一人。長髪と長い髭を携え杖をつく老人だ。
「ミラージュフォレストとはの……あそこは未開の地じゃ。何故ならその入口には、幻覚作用を引き起こす霧が立ち込めておる。心に淀みのある者が入ればもちろん、忽ちに意識を失い二度と戻っては来れぬ危険な地でもある」
考古学者の説明にどよめく。
「はっ! 危険な地? 心淀みある者? くだらねぇ」
シュウが威勢よく切り出した。
「だったら大丈夫じゃねぇか。俺には心の淀みが全くねぇ」
と自信たっぷりに断言するシュウに、その場にいる誰もが固まった。そう、その場にいる誰もが一つの事を思ったのだ。
(一番心の淀みがありそうな奴が言うな!)
ホヅミは心で叫ぶ。
三人はミラージュフォレストまでの行き方を教えてもらい、出立した。どうもシュウの魔法でその近くまで空間を繋げられるらしい。
王国の外に出ると、シュウは魔法を発動した。
ミラージュフォレスト。シュウの手に持つ地図を横から覗き見るリリィとホヅミ。白い霧が出始めている。どうやらその入口に到着したらしい。
「おい、一応言っとくが、これより先は心に淀みがある奴は幻覚で道を閉ざされちまう。分かってるな?」
(いやだから、それをあなたが言いますか?!)
と心で叫びながら、リリィと共に頷くホヅミ。
迫る緊張感。未開と言われる地に足を踏み入れる勇気を振り絞って、ホヅミはシュウの後に続く。
霧の中では魔物が襲いかかってくる気配がなかった。魔物ですら恐れて近寄らない場所なのだろう。
シュウとリリィの歩くペースはいつもながら早い。もし少しでも遅れを取れば、あっという間に一人取り残されてしまう程の深い霧だった。
しばらく進むと、白い光の様なものが霧の先に見えてくる。どうやら出口らしい。いや、もしかしたらそれすら幻覚なのかもしれない。今目の前で歩いているシュウやリリィも。そんな怖い思いを抱いてしまうホヅミ。
やがて光はシュウ達三人を包み込む。
「ここは………ここがホーミストか」
霧は晴れ、映った景色は繁華街。活気に溢れ、今にもお気楽な音楽が流れてきそうな明るい街並みだった。ただそこにいたのは、人やエルフ、いつか見た様な竜人、異形な魔物達。多種族が混ざりあって往来を彩っていた。
「あれ? 皆さん!」
それは聞き覚えのある声だった。
じゃかじゃかじゃかじゃかじゃん!!
魔法講義ちゃん! 第31弾!!
と言いたいところなんですがね。
実は…………紹介する魔法に尽きが来てしまいました。
とりあえず今日は、ユウジ=タカハシさんの魔法、魔力具現だけ紹介しときますね。
この魔法ね、魔力を体から放出して色んな形状に変える事が出来るんですよ。ユウジさんまだまだ魔法初心者の部類ですから、鋭くした魔力を纏う位しか出来ませんけどね。
はい、以上。
ユウジ「おい作者! 何で俺のそんな適当なんだよ!」
作者「あらあらユウジさん。いらしたんですか」
ユウジ「俺の魔法だぞ! もっとかっこよくしろよ!」
作者「いやいや、もうイラストでかっこいい感じなんで、別に良いじゃないっすか。ていうか一番嫌いな悪役なのに、どうしてあんなに」
ユウジ「ま、俺かっこいいから」
作者「は? 何自分で言っちゃってんのこの人。くすくす、笑っちゃうわー。マジ引くわー。ちょー嫌なんですけどぉー。つか角、マジ怖いんですけど、ホラーなんですけど。何あれ? ついさっきまで人をぶっ刺してきましたよ的な色合いですよね? あ、もしかして自分の頭突き破って出てきたからですか? あー痛そー。可哀想……いや、可哀想だなんて思わなくて良いですよね。どうせクズの悪役なんですから! あーっはっはっはっ!」
ユウジ「魔力具現」
作者「え」
いやぁぁぁあぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああああああああああぁぁぁあああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!





