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追われかぼちゃと勘当姫  作者: 憤怒の灰かぶり
第四章
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ミキ=ホヅミ8

その戦いの決着は一瞬の内についてしまった。魔人が弱かった訳ではない。シュウが強過ぎたのだ。魔人は体中がシュウの猛攻によって腫れ上がり、見事なおたふく顔で木に括り付けられていた。


「おいてめぇ、これから尋問する訳だが」

「ひぃいいっ!」


早く火を吹きたいと唸る拳を掌に収めて、にやりと邪悪に笑むシュウに怯え、悲鳴を漏らす魔人。


「答えなかったら答えないでいい。今すぐ俺の鉄拳の餌食だ分かったか?」

「はいぃぃいい!! 何でも聞いてくださいませ!」


その様子を傍目から見るホヅミとリリィは苦笑いだ。きっと本職が拷問官の方が似合っているシュウに向けて、呆れと難色を示していた。


「まずはだ」


シュウの尋問が始まる。

魔人の方はシュウに恐れをなしてか長広舌にすらすらとあらましを話してみせた。その饒舌っぷりに生への執着がホヅミとリリィには見て取れる。



シュウの尋問によると、まずリリィの体、つまり魔物の血を引いているホヅミに対して抱いた興味についてだ。いちいち人間を取り込まないで済むとも魔人は言っていた。それはすなわち、魔物の血を引いた者を取り込む事で何かが解決されるという事だ。

魔人が言うには、自身がまだ完成系でないとの事。魔人として完成するには、とある遺伝子を取り込まなければならない。それまでは人間を定期的に取り込まなければ、魔の血に支配され完全な自我のない魔物、もしくは体の崩壊を招いてしまうのだという。

そしてとある遺伝子というのは、結合αと結合β。αは魔物の血を引いたハーフなどが持っているもので、魔人としての完成には一つ取り込むだけで事足りるそうだ。だがβは複数取り込む必要がある。βはハーフでも何でもないただの魔族の遺伝子。これを取り込み徐々に魔人化するための体を整えるのが普通だそうだが、今ここにいる魔人は魔人化を急いでしまったために、月一に人間を取り込まなくてはいけなくなったそうだ。


「ありがとよ、魔人のおっさん」

「ひぇぐっ!?!?」


一つ副産物としてとある情報も仕入れていた。それはシュウにとっては取るに足らない事だろう。捲し立てる魔人によってぽつりと話された事柄だ。それはリリィの生まれる確率だ。通常魔物の血は人間には濃すぎて、子供の生まれる事はなかなかないのだと言う。例え宿ったとしても、些細な負担でもかけようものなら即流産。そんな中でリリィを出産する事が叶ったのだ。つまりリリィの母と父は愛し合っていたという事。分かりきっていた事だが、やはり事実証拠として知る事が出来たのは思わず嬉しく、リリィの口は綻ぶ。


「何にやけてんだよお前」

「まさか、リリィにもシュウと同じ趣味が!?」


プエラ村へと戻る最中、二人は空を仰ぎ見て背伸びをするリリィに、互いに似た様な視線を送る。


「そんなんじゃないよ」


リリィは爽やかに、どこか寂しそうに呟いた。



プエラ村に戻ると、肩を竦めて今か今かと脅える村人達が、村の外で固まっていた。そこへとシュウ達三人が姿を現したところで、皆驚いた顔で崇めるように平手を合わせた。例の美少女はというと、この村の古風には似合わない調子で一目散にシュウへと駆け寄ってきた。


「シュウ様ぁ! お待ちしておりましたぁ!」


容赦なくその豊満な体をシュウに押しつける。それにはシュウは足を止めてなかなか村に入ろうとしない。


「シュウ様、あはんっ」


随分とシュウは懐かれた様で、それを傍目から見るホヅミとリリィは何となく癪に障る所存しょぞんだ。


「シュウ? 早く行ってよ。後がつかえてるんだから」


村の入口は広いのだからシュウ達を追い越して行けばいいものだが、ホヅミは敢えてシュウをいびる様に伝える。


スーパーパワー(金剛力)

「ぐぎゃあああああ」


ほとばし血飛沫ちしぶき。突然の出来事に村人達やホヅミにリリィは唖然とする。


「な、なぜ……分かった……」

「冷たすぎんだよてめぇの肌は……まあ村長のフリしてた魔人を見て気づいたんだけどよ」


大きく通した風穴から腕を離して、遺体を蹴り飛ばし隅にやるシュウ。目が追うばかりで、言葉が追いつかないシュウ以外の者は、しばらく立ち尽くしていた。





プエラ村を出た三人は次の村を目指していた。何でもそこでは、失踪事件が起きているところだという。このご時世、失踪事件のほとんどは奴隷売買によるものだが、目的はその奴隷売買をする者達だ。エピルカの一件もあり、アリスから前もって調査の命令が下っている。

次の村までは遠い。半日ちょっとで到着するところではない様だ。気づけば辺りは夕方になっていた。


「そろそろ野宿の準備が必要だ」

「そうだね! んじゃボク食料採ってくるよ」

「ああ、なるべく人喰い林檎以外のものな」


言ってリリィと分かれるホヅミとシュウは、自ずと割り振られる薪集めを担う事となった。


「ねぇシュウ。シュウの魔法ってどこにでも行ける魔法なんでしょ? 何でそれ使わないの?」

「俺の魔法は知ってる空間にだけ及ぶ。記憶した空間、または目に見える先々にしか飛べねぇ」

「ふーん」


お互いの事を知っておくことは重要だ。これからの旅路で互いにカードを把握しておけば、この先いかなる未知の遭遇をしたとしても、対処しやすいからだ。

そんな会話をしながら、二人は薪集めに勤しむ。


「そういえばさ、何でスーパーパワーが金剛力になった訳?」

「は? う、うるせっ……そっちの方がかっけぇだろ」

(あーなるほどね。前に私が言ったこと気にしてたんだ)


そうこうしている内に夜を迎える。指定の場所に戻ると、遅いよと待ちぼうけしていたリリィが食料の山を抱えて待っていた。今回は人喰いなる奇妙なものは採ってきていない様で二人は安心する。薪を集めてリリィが火炎魔法。三人は焚き火を囲んで腰を下ろした。


「まあ俺一人ならいちいち野宿する必要なんてねぇけどな」

「こらシュウ。そういう事言わないの」


とリリィがシュウの失言を叱る。



三人は食事を終えると、明日に向けて睡眠を図る。この睡眠が重要で、誰か一人見張りをつけて交代交代で眠る必要があった。


「俺はいい。次の村で眠る」


とシュウは言うので、ホヅミとリリィは立て指で順番を決める。

もう忘れたよって方に説明。

立て指とは、5本の指で「せーのっ」と掛け声をし、立てた指の数が多い方が勝ち。同じ数だと引き分け。同じ指の数は以降出せない。全部引き分けだと最初から。

シュウは物珍しげに尻目でいちいちリリィ達の方を確認していたが、勝敗が決まると見向きもしなくなる。ホヅミはそんなシュウが気がかりで勝負に集中出来なかったのか、いとも簡単に敗北を喫してしまった。



ホヅミはすやすやと眠りこける。リリィは焚き火が消えかかっては薪を継ぎ足し、それでも火が弱まれば火炎魔法をかけ直していた。湿気の多い薪も混じっていて、異世界慣れしていないホヅミのミスだろうとリリィはクスりと笑う。


「おい」

「おいじゃなくてリリィ。名前で呼んでよ。ホヅミんの時はホヅミなのに何でボクだけそうなのさ」

「…………」


シュウは女の子の下の名前を呼び捨てにするのが気恥ずかしかった。乱暴でがさつなシュウだが、そういったデリケートな面もある。


「り………リリィ……おめぇは……こいつと二人ん時、ずっと見張りをしてたのか?」

「それってどういう意味?」

「初めて会ったこいつは、とても戦えた様子じゃなかった。だったらお前といた時、野宿での見張りはお前って事じゃねぇのか?」


結局お前に戻ってるじゃんとリリィは突っ込みたかったが、それでも初めは名前で呼んでくれたので認可にんかした。


「確かにそうだけど。それがどうかした?」

「……いや………」


シュウが心で思っていた。前はどうあれ今は人間の体だ。リリィが元の体の時よりも動けないのは見なくても分かる。しかも見るからにひ弱な体でだ。心配以上に尊敬の意さえシュウの中には芽生えていた。


「ホヅミんには言わないでよね? 見張りの事」


こうして夜の一時は過ぎていく。やがてはホヅミが目を覚まし、交代でリリィが眠りに入った。今ではホヅミも十分な戦力だ。見張りくらいは何て事もないだろう。

シュウは少し、長めな視線をリリィの寝顔に送っていた。





夜が過ぎ、肌寒い朝を迎える頃、シュウとホヅミはうとうととしていた。だがそんな眠気も吹き飛ばす程の騒々しい声が、シュウの腕輪につけられた宝石のオニキスから轟く。


「シュウよ! 緊急事態じゃ! シュウよ!」

「何だ?! どうした!」


それには傍で寝ていたリリィも目が覚めて、眠たい目を擦っている。


大洪雹だいこうひょうじゃ! 急ぎ戻れ!」

じゃかじゃかじゃかじゃかじゃん!


魔法講義ちゃん第29弾!

やっていきまっしょい!


今回の魔法は?

上位熱魔法オーバーヒート! 以前リリィが脱獄する時に使ってましたね!

これはですね約1800℃あります。

やべぇ、ちょーやべぇ。

火傷じゃ済まねーぞっ。

(´>ω∂`)テヘペロ

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