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追われかぼちゃと勘当姫  作者: 憤怒の灰かぶり
第四章
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ミキ=ホヅミ7

焼けつく空気は呼吸の度に肺をひりひりと震わせる。地に散る火花の香りを嗅いで、立ちはだかる巨獣の咆哮をこうむった。吐き出される業火に野原は悲鳴をあげ続けている。天を覆う暗雲から降り注ぐ冷たい雨を嘲笑うかの様にその勢いは止まない。


「ヘルドラゴン。Uウルトラクラスだっけか。どんなに強かろうが、この俺の敵じゃない」

「グルルル」


だる様な熱気は炎を身に受けず共、体力を奪っていく。酸素を全て激しく燃焼し尽くす程の勢いで燃え広がる火炎。この戦いが長引くと自分が窒息してしまう可能性がある。様子見をしている時間はないと、左半頭に角を携えた半人半魔の異形は踏み込んだ。


灼陽の幻影(カゲロウ)

「グルルル、ガボォー!!!」


再び吐き出される業火に直撃する異形は、ヘルドラゴンの見ていた幻。熱によって生まれた陽炎かげろうだった。


「固有能力、感電」

「グギャオオオオ!!」


ヘルドラゴンの懐に入り手を触れると、異形から流れ出る一筋の閃光せんこう。それは瞬く間にヘルドラゴンの体を包み込み、その動きを止めた。


「あとはゆっくり殺るだけだな。魔力具現リアライズ!」


詠唱と共に空へと突き出した手刀の周りを覆うように、高密度な目に見えない魔力が放出される。魔力を鋭く刃物の様に形状を整え、その切っ先をヘルドラゴンに向けて振り下ろした。


「グギャアアアオオオオ!!!!」


痛がるヘルドラゴンの首元からはドス青黒い血が夥しく噴出する。ヘルドラゴンの血は神経毒であると、カラナという魔物から聞いていたので、異形は地面を一つ蹴って数メートル先まで後退した。


「危ねぇ危ねぇ。あの血に当たるといけないんだっけか。にしてもこうもあっさり倒せるんじゃ、つまんねぇな。チートの果てってやつか? ていうか、もしかして俺この世界で最強なんじゃね?」


悶え苦しむヘルドラゴンを他所に、異形は楽しげに独りごちている。それに見兼ねて、遠目で待ち構えるカラナが叫ぶ。


「何をしているのですか? 早くとどめをさしておやりなさい。人間ならまだしも、魔物であるヘルドラゴンに苦痛を与える筋合いはないはずです」

「はいはい分かりましたよ(るっせーよ。俺は元々魔物じゃねぇーんだよ。魔物がどうなろうが知ったこっちゃねぇ……ふっ、まあそれは人間もか)」


ヘルドラゴンの首は太く、一度では仕留められなかった事をかえりみて、異形は再度空へと腕を振りかざした。次は一刀両断出来る様に、力を込める。


「死ね」

「ギャォ!! ……………」


振り下ろされた魔力の手刀はヘルドラゴンの巨大な胴体と頭部を切り離し、ヘルドラゴンは息絶いきたえた。


「お見事。素晴らしい! 目まぐるしい成長ですね。まさか魔人となった者の力がこれ程とは……いえ、少し違いますか。魔人になった異世界の者と言うべきですかね。この勢いであれば王女を連れ去る事も容易い」


異形の背後から手を叩いて笑顔に向かってきたのはカラナだ。


「言っときますけど、俺はその王女とか興味無いんで。穂積の野郎ぶっ殺すだけなんで」

「分かってますよユウジ。期待しています」


満面の笑みを向けるカラナを、本当に分かっているのだろうかと、怪訝に覗くユウジであった。





シュウが得ていた情報を元に、次の目的地へと身を乗り出すホヅミとリリィ。何でもその目的地付近で、遠目で人影が異形のものに変化する様子を見た者がいるそうだ。今回はその者の話を窺い、及び調査にあたる腹積はらづもりだ。


「グギャオオ!」


現れ出たのはコモドドラゴンだ。牙を剥き出しに今にも襲いかかってきそうである。シュウはすかさず攻撃の構えに転じるが、拳を腰に作ったまま微動だにしない。


「どうしたのシュウ?」


ホヅミはシュウの様子に違和感を持ち訊ねる。


「何でもねぇ」


見ればシュウの拳は震えていた。

シュウはソルムとの一件で、今まで湧いた事のない感情に縛られていた。今までは魔物を見つければ容赦のない鉄拳制裁で応じていたのだが、心ある魔物を見た事によって、躊躇いを生じてしまっていた。


「ちっ、余計なもんが過ぎりやがる」


するとコモドドラゴンはシュウの隙をついて飛びかかった。だが隙をつかれたからといって反応出来ないシュウではない。コモドドラゴンの攻撃を不自然な体勢で躱しつつ、鋭い拳をその腹に埋めて天高く殴り飛ばした。


「よし決めた。攻めてきたら殺す」


そう言葉と拳を胸にかかげて、先を進むシュウである。





プエラ村。三人が村へと入る直前、シュウの胸に飛び込んできた一人の少女がいた。歳はホヅミやリリィと同じくらい。だがそれに似つかわしくない程の大きな胸を持ち、シュウの体に押しつけていた。


「お願いします旅のお方! どうかお助けください!」


端正な顔立ちで、綺麗な褐色の肌色をしていた。長い黒髪は線の入る程に手入れされており、靡く度にきらきらとした何かが零れ出る様だ。ヘアアクセントには花柄の押し花を、よく見れば化粧が施されている。一言で表すならば、美少女。


「そごのあんだ! その女捕まえでおいでけれ!」


ホヅミにはどこかで見た光景だ。それは以前、リリィが中位回復魔法セラヒールによる副作用にて倒れた際の出来事。ゴズとかいう訳の分からない竜人ドラゴニュートのせいで、リリィが生贄代わりにされた一件だ。恐らく奥に位置する開け放たれた木造檻の中へ入れられる直前に逃げ出したのがこの美少女だろう。


「お願いします! お礼なら何でもします。だから、だからお助けください!」


必死に食い下がるようにシュウへと抱きつく美少女。シュウはそんな美少女の肩をそっと離して、後ろのホヅミ達にやると、シュウは一人村の中へと入っていく。結界を通ったシュウは固有能力が使えない。だがシュウは敢えてそれを狙っての事だ。

これより粛清しゅくせいが始まる。


「うぎゃぁぁぁぁああああ!」

「痛い痛い痛い痛い! やめでげろぉ〜」

「どわぁいやぁああああ!」






事が収まり、シュウ達三人は村の臨時会合に出席していた。目の周りに青丹あおたんや額にたんこぶ等を作って胡座をかく大勢の男達が、村の講堂に揃っている。シュウは素の力で、何十人もの村人を捩じ伏せていたのだった。そこには筋骨隆々《きんこつりゅうりゅう》とした大人もいたというのにと、ホヅミは驚きが収まらない。


「で、てめぇら寄って集って、いったい何をしようとしてたんだ? 事と次第によっちゃ、アルストロメリアの名にかけて見過ごさねぇ」

「そ、それは……」


村人達の中の指揮者と思われる中年の男性がシュウの様子を窺いながら訥々《とつとつ》と話し始める。

何でもシュウに飛び込んできた美少女は、今月に捧げる生贄の一人であるという。生贄は毎月魔物に捧げるために用意しているのだという。十年程前から住み着いた魔物のせいで村は大飢饉だいききんに晒された。魔物の討伐をと賞金稼ぎ(バウンティ)を雇おうものなら、賞金稼ぎ(バウンティ)は返り討ち。もちろん魔物の怒りを買う事になって、その年の村は大飢饉に晒されたのだ。見れば今この場の会合に出席している者には若い女が少ない。ほとんどが男で、後は年老いた女性が集まっている。


「勘弁してけろ。その娘差じ出ざんだら、オラだぢ食い繋げねぇべ」

「シュウ様、お助けください。お礼なら何でもします。魔物に捧げるくらいなら、この身シュウ様に喜んで捧げます」


シュウは目を瞑って何かを考えるかの様にしばらく黙りこくる。誰もがシュウの発言を待ち息を呑んだ。





「…………で、何でこうなるわけ?」


美少女の行動にあてられてか、美少女にほだされたのか。何の魂胆こんたんかは分からない。ホヅミがシュウから手渡されたのは封魔錠スペルオフと首輪のついた鎖のリードだった。懐かしいひんやりとした金属の感触。そして懐かしい、悪趣味なシュウの冷たいきょう


「あの、シュウさん? これは? どうしてまたこんな事するのかな?」

「うるせぇ。生贄は黙ってろ」


その返しにホヅミはカチンと頭に来る。


「まあまあ、少しの我慢だよ。それに良い案だとボクは思うな」


ホヅミを宥める様にリリィは言う。


「そんな事言うなら、リリィがつけてみたら! すっごい嫌な気分だよこれ!」

「そうは言ってもね。封魔錠スペルオフでホヅミんから出る魔物の力を抑えて、敵を安心させようって作戦じゃん」


への字口に不満を顔に表して、ホヅミは大きく溜め息をついた。


「それならせめて、リードだけでも何とかならなかったの? 何で檻に入れないの?」


観念した様に訊ねるホヅミ。それには後ろにぞろぞろと連れた村人達も疑問の様で、この作戦を提案したシュウの方に全員が視線を注いだ。


「んあ? …………………………決まってんだろ。檻の方が無駄な労力削ぐからだよ」

(今の間は何だ! 今言い訳考えたろこいつ!)


ホヅミは心で突っ込んだ。



数分歩くと、村長と思われる老人が村人達を全員返した。どうも目的地へと到着したらしい。そこは切り立った崖。崖の先から魔物が現れ出るそうだ。


「何だ? あんたは帰らないのか?」

「えぇ、何故、今から現れる魔物とは、生贄とワシとしかお会いになりませんからなぁ。さあさあ。あなたがたも早くお隠れになってください」


シュウはホヅミのリードを木に括りつけると、リリィと共に木陰に身を潜めた。

ホヅミは村長と二人きりになる。バクバクと大きく早く鳴る鼓動に耐えながら、刻々と流るる時を過ごしていく。だがいつまで経っても魔物はやってこない。ホヅミは痺れを切らしてその場に座り込んだ。

村長はというとじっと崖の先を見据えて突っ立っている。ホヅミは続く均衡状態で晴れない心を紛らわそうとそんな村長に会話を持ちかけた。


「あの、村長。魔物っていつ来るんでしょうね」

「…………もう、来ておるよ」


と言う村長の言葉の意味が理解出来ずに首を傾げるホヅミ。


「今日はまた一段と……じゅる……美味しそうだ」


村長は体の向きを変えずにホヅミの方へとゆっくり首を振り向かせる。それは人では有り得ない方向を向いても止まらず、体に対して百八十度回転した。垂涎し怪しく笑う村長の目は赤く染まり、人はでない事を表している様だった。


「うそ……魔物だったの?」

「お前魔物の血を引いてるな? しかも強力な魔物の。然るに人間の血と上手く均衡の取れている。こんな餌が引っかかるなんて。へへ。ただの小娘じゃないか。これでいちいち面倒な立ち回りをして人間を取り込まないで済むぜ。へへ」


その様子を見たシュウとリリィは木陰から飛び出てきた。シュウは咄嗟にホヅミの封魔錠スペルオフと首輪を砕いてホヅミを自由にする。


「まさかてめぇが魔物だったとはな」

「へへ、違うな。俺は魔人だ。元人間の。この体はプエラ村の村長を殺して作った着ぐるみさ。おかげでよく俺の正体を隠すのに役立ってくれたよ」


魔人は村長の皮を破いて、中から真の姿を現した。それは半人半魔。左半身は完全に魔物と化している。巨大な鉤爪に腕や脚をを覆う毛皮の剛毛。額には後頭部にまで続いた角。そのおどろおどろしさは日本でいう赤鬼の如く。もう半身は若い男の体をしていた。


「さて、いただくとするか。三人まとめて」


じゃかじゃかじゃかじゃかじゃん!


第28弾!

魔法講義ちゃんやってきます!


今回の魔法は、中位爆発魔法バグナム


この魔法はリリィ=パンプキンのお話で登場しましたね。マリィさんが腕を失うきっかけとなった魔法です(´;ω;`) ですがそんな残酷な事実を除けば優秀な爆発魔法なんですね。高密度なニトロの様な魔力の塊を生み出し、空気中に触れた途端に爆発。当たれば地雷並に一溜りもないですので、取り扱いにはご注意を!

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