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追われかぼちゃと勘当姫  作者: 憤怒の灰かぶり
第四章
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ミキ=ホヅミ6

「あぁ、体が重いだべ」


とある村人はあまりの寝苦しさに目を覚ましていた。どうも風邪を引いてしまったらしい。額に手を当てると普通でない熱を出している事は明白だ。

ロックの村で薬師の役割を担っているのはシアだ。ロック周辺で採取出来る薬草について博識はくしきだ。今まで治してきた病は数知れず。怪我をすればシアの元へ。そういった風潮が出来上がる程にシアは薬師として信頼されていた。

外を出ると霧のせいか陽の光が思う様に差し込まず薄暗い。肌を突き刺す様な寒さは、長年ここで暮らしてきた村人には慣れっこだ。


「ありゃシアか? いったいどこ行くだべか」


シアの母屋へ出向く村人は、その母屋からこそこそと出ていくシアの姿を目撃した。村人は声をかけようかと思ったのだが、シアの挙動が普通でなくあまりに不審であったために後をつけようと思い至った。

シアは干し肉を大量に抱えていた。そんな物を持ってどこへ行くのか。シアは何か飼っているのだろうか。そういった考察を立てながら、村人はシアの後を辿る。


「そんな……まさか……こんな事が」


たまげる村人の見たものは、人間のシアが魔物に餌付けをしている光景だった。それには体のだるさも瞬く間に吹き飛び、村人の足取りを軽やかにしてしまう。




「村長! 大変だぁ!」


お年寄り特有の早起きで、村長は井戸の水を汲みにいっていた。気持ちのいい朝を台無しにする喚き声に、機嫌を悪くする。


「何じゃ騒がしい……客人が来ておるのじゃぞ?」


おろおろとする村人は目を泳がせている。


「オラ、見ちまっただ。シアが、シアが裏切ったっぺ!」


村長はとんだ騒ぎで客人達を起こさぬまま動く。

それからあっという間にその二人によって村中へシアの情報が伝わっていった。そして村長の命で村人達は武装。その後何も知らないシアが村へとこっそり戻ろうとする。


「シアよ……いったい外で何をしておったのじゃ」

「……そう……バレて……しまったのね」


シアの前には厳かに佇む村長。その周りには、シアを取り囲む様に槍を手にした村人達が殺気立っている。


「シアよ。結界を通れるという事はお主は魔物ではないのだろう。じゃがいかんせん村の掟じゃ。お主を死刑にする」






夢うつつの中、バタバタと聞こえる多くの足音に、ホヅミは意識を覚醒させる。


「ん? 何だろう」


外の方でザワザワと村人達の気配を察知するホヅミは、気になって体を起こし、藁暖簾を捲り上げる。


「あれは……」


どうやら空き地の方で何かをしているらしい。突き立てられた十字の大きな杭が見える。


「誰? ………!?」


二人がかりで大きな杭に一人の人間が括りつけられていく。その人間は、驚くことにシアだった。


「起きて! 二人共起きて!」


ホヅミに叩き起され特にシュウは鬼の如く不機嫌であったが、ホヅミの説明を受けて二人はすぐに事態を把握。事の起こっている往来まで駆ける。


「おぉ、どうも起こしてしまったみたいで。実は村に裏切り者が出ましてな。今からその者の処刑をするところなんじゃ。見苦しいところは見せまいと思っておったが、少し騒がしくしてしまった様じゃ」


と笑う村長の醸し出す雰囲気には、昨日までの和やかなものとは違い、得体の知れない不気味さを感じられている三人。人の皮を被った何かの様に、淡々と述べるその姿にぞっとしていた。


「どうして! 何でシアさんが殺されなくちゃならないのさ!」


湿り声のリリィはおたおたと色をなす。


「村の掟じゃよ。シアから聞いたじゃろう。過去にあった魔物化の事件についてじゃ。あれ以来この村にはとある掟が出来た。魔物化の可能性は断絶せねばならん。じゃから、魔物に関係する者は皆死刑。シアはソルムという魔物に餌付けをしておった。十分に掟を犯しておる」


シアはされるがままに十字の杭へとはりつけ状態になってしまった。


「だからって……そんな……シアさんは魔物を……助けただけなのに」


か細くなった声を絞り出す様に、リリィは言った。リリィは思う。そんなにも魔物である事はいけないことなのかと。魔物はそれほどに人々に恐怖を与えてしまうのかと。魔物にも心がある、そう言っていたシアさんの気持ちを痛い程分かっていた。リリィ自身にも魔物の血が流れているからだ。けれどそれを理解出来るのは自分。もしかすればホヅミやシュウも、この村人達の様に……そんな妄念もうねんが頭を過ぎる。


「では皆の者。これより処刑を開始する。皆の者構え! 手を汚さぬ者は、この村長の役職において一人として許さぬ」


村の大人達は一斉槍を矛先をシアへと向ける。村の端では固唾かたずを飲んで見守る子供達がいた。


「魔物だぁ! 魔物がやってきたぁ!」

「何!? まさか」


村長に続いて村人達は入口付近にまでやって来ていた魔物を仰ぎ見る。その巨体はソルム。体中に青血の滲んだ包帯を巻いたソルムだった。


「魔物が……人間のシアを助けに来たというのか?」


村長は驚き腰を抜かして尻もちをつく。


「クォォオオン」


ソルムは結界にぶち当たった。バチバチと電気の弾ける様なけたたましい破裂音の連続が辺り一体に鳴り響く。


「止めて! その体じゃ無理よ! 歩くのだって辛いはずよ!」


シアは叫ぶ。


「クォォオオン!!」


ソルムの体に巻かれた包帯はみるみる内に青く染まっていき、隙間を作って青血が噴き出していく。


「ガルルルル!!」


牙を剥き出しに目を血走らせ、足を止めることなく一歩、また一歩と結界に自身の体を捩じ込んでいく。

バチィィイイン。

ソルムの無理矢理な侵入に結界の方が耐えきれずに破砕してしまった様だ。


「うわわわわぁ!?」


それには泡を食って倒れる者や、喫驚きっきょうして尻から転げる者までがいた。だがそれを見たソルムは村人を襲う訳でもなく。青血を滴らせながらゆっくりとシアの方へと歩いていく。


「そ、そうじゃ、遣いの方々! あれを、あれを何とかしてくだされ!」


村人達と一緒になってソルムの訪れに一同傾注(けいちゅう)していたが、はっとなったリリィとホヅミは戸惑い始める。シュウはというと、急にお腹を抑え始めてその場でうずくまってしまった。


「あいたたたたた! お腹が、お腹が痛い! クソっ、これじゃ戦えそうもねぇ」


まるで強敵を前に怖気付いたかの様にあらぬ醜態しゅうたいを見せつけるシュウ。


「あの……シュウさん?」


とホヅミが話しかけようとすると、シュウの鋭い眼光がホヅミの身を凍らせる。


「てめぇらも早くやれ」

「あー私もお腹痛い。あまりの恐怖にお腹が」

「ボクもお腹が……昨日食べ過ぎたかも」


怒気に満ちた囁きを聞いて、リリィとホヅミの二人も蹲ってお腹を抑えて悶える演技を村長へと見せつけた。


「……えー……」


村長は言葉を失った様だ。


ソルムが一歩一歩進むごとに、村人達は道を空ける様に仰け反り後退っていく。やがてソルムはシアの元へと辿り着いた。


「シ………ア」


ソルムの低く響く胴間声に、辺りは更に怯えた様子だ。


「ムカエニキタ」


ソルムは大きな鉤爪を器用に扱いながら、杭とシアを縛る縄を断ち切っていく。そしてシアを両手で優しく掬い取る様にして抱え込んだ。


「ええぃこうなったら、お主ら! そのソルムごとシアを処刑じゃ!」


村長が叫ぶ。すると一人の村人がやぶれかぶれに槍を投げつけた。その槍はソルムの脇に突き刺さり青血が噴き出す。一切村人へ興味を示さなかったソルムだが、それには振り向いた。


「ひぃっ!?」


村人は小さく悲鳴を上げる。だがソルムは村人に手をかけなかった。入口へと向き直り、また一歩一歩ゆっくりとした歩調で向かっていく。村人達はその様子に唖然と尽くす他なかった。





下位回復魔法ヒール下位回復魔法ヒール増幅魔法バイリング!」


ソルムとシアは洞穴ほらあなにまで戻ってきていた。ソルムとシアが村を出るに続いてシュウ達も追いかけて、洞穴まで辿り着く。


「凄い……初めて見ました。これが増幅魔法バイリング。感服です」

「えへへー」


ソルムに突き立っていた槍はシュウが無造作に放っておいた。リリィの回復魔法によりドクドクとソルムから流れ出る青血はその速度を遅めて、やがては完全に止まる。更には全身の開いた多数の傷口も残らず塞いだ。それには残るそれには村で薬師の役割を担っているシアも目を白黒させている。


「村には魔法を使える者が、結界士しかおりませんから。いやはや、羨ましい限りです」


シアは薬師だが、シア自身魔法が使えない事を嘆いていた。だが魔法ではなく薬草の知識に長けている事で、魔法では治せない病を治す事が出来るのだ。羨ましいと言われれば、リリィにはシアのその点が羨ましいと思うばかりだ。


「アリ…ガトウ」

「良いの良いの。気にしなくていいんだよ。そういえば名前何て言うの?」


ソルムの名を知らなければ、会話のやり取りがあまり運ばないので、リリィは聞いておきたかった。リリィの中で、ただのソルムという魔物ではないのだから。いや、もしかすれば魔物全てには名前があって、魔物と一括りにするのは安直なのかもしれないとリリィは思う。


「この子ね、記憶喪失で自分が何者かも分からないの。だから私はソルムでソルちゃんって呼んでいるのよ」

「ナ……マエ……」


シアの言葉を他所よそに、何やら思い詰めるソルム。その様子にはシアも不思議な面持ちだ。


「ボクノ……ナマエ……ボクハ………ボクノナマエハ………"ハン"……ソウダ……オモイダシタ……"ハン"ダ」


思い当たった様に、ぱっと顔を晴れやかにするソルムのハン。だがその場にいる誰よりも顕著に表情の変化が現れていたのはシアだった。シアは口元を手で抑えて、涙を溢れさせている。


「ハン……うそ……ハン……あなた、ハンなのね」


ハンという名前にはリリィ達も聞き覚えがあった。昨日シアが話していた、五十年前の話に出てくる登場人物だ。そう、魔物化をした子供の事だ。だが話によれば、ハンは殺されたはずだ。


「ハン……生きててくれたのね……」


シアはハンの腕を抱き締める。ハンは涙を流すシアを心配に思い、大きな手をその背に添える。


「ドウシタシア……ドウシテ……ナイテル」

「そうよね。記憶がないものね。でも良かった。ハン、あなたが生きていて」


困惑した様子のハンに、シアは過去語りする。それをハンは黙って聞いていた。

ハン自身も自分の正体が分かって安心する面もあったが、自身が人間であった事についてはあまりしっくり来ていない様だった。シアは幼なじみで、五十年ぶりの再会である事も、ハンにとっては他人事の様に思えていた。


「ゆっくり……そう、ゆっくり思い出していけばいいわ」


ただハンにはシアが命の恩人である事には変わりない。きっと名前を思い出せたのも、シアの優しい心が届いたからであろう。


亜空の支配者(ジオメトリーグリッド)!」


シュウは昨日とは違う地へ繋がる、空間の歪みを生み出した。


「この先は俺が昔一人旅をしていた頃に使っていた拠点だ」


歪みの向こう側は森の中で、小屋が一軒建てられている。


「ここを使って良いからよ…………仲良く暮らせや」


頬を掻いて照れ隠しのつもりか、口篭るシュウ。それを見たリリィにホヅミはお互い顔を見合わせてにやけた。


「あの、良いんですか? 大事な家じゃ」

「大事だから、大事に扱えや。家も住まれるのと住まれないのとじゃ、持ちが違ぇだろ」


言うとシアはクスクスと笑う。ハンと共に立ち上がると、シュウの生み出した歪みへ向かって歩き出した。


「優しい坊や。それから優しいお嬢さん達。何から何までありがとう」


穏やかに微笑むシアを見て、シュウは頬を赤く染める。

二人が無事に空間の向こうへ渡り切った所を確認すると、シュウは歪みを閉じた。



三人は洞穴を離れ、次の目的地へと向かう。しばらく歩くと急にリリィがお腹を抱えて蹲り、苦悶している。


「リリィ? 大丈夫? 具合悪いの?」

「お腹……」


先を行くシュウもさすがに心配になって後を引き返す。リリィの元に寄って屈んで様子を窺った。


「おいてめぇ、まさか俺の真似をしているわけじゃねぇだろうな?」

「ちょっと、それは酷いんじゃない? リリィは今苦しんでるのよ?」


二人の喧嘩が始まろうとする直前、リリィはホヅミの手を掴んだ。


「お腹……空いた」


二人はずっこける。そういえば確かに、朝食を取らずに村を出てきてしまっていたと二人は漸く気づいた。

三人はその場で、一旦休憩を取る事にする。休憩と聞くとリリィは飛び起き林の中へと疾走する。それからしばらくしてリリィは戻ってきた。食料を調達してきたに違いない。シュウもホヅミも、リリィの食事に何となく肖ろうという気になっていた。


「キュィィイイイン!」

「二人共ぉ。ほら、朝食だよー。何かねこの辺川もないし木の実もこれしか実ってないんだよね。彩りには欠けるけど、良いよね」


リリィは幾つもの人喰い林檎を抱えていた。


「あれ? どうしたの? もしかしてお腹空いてないの?」


顔を顰める二人を見て問いかけるリリィ。


いや、そうじゃないってば。


心中にて異口同音いくどうおんの二人であった。

じゃかじゃかじゃかじゃかじゃん!!

第27弾魔法講義ちゃん! やってきますよ〜


よぅ、今回もこの俺イアツカンが魔法講義ちゃんやってく

作者かぶこ「させるか! 中位氷魔法コヒューム

威圧感いあつかん「ひょぇぇえええ!!」


ふっ、あの日ホヅミとかいう不貞の輩にやられてから修行する事幾年月! 丹念に鍛錬を重ねて漸く覚えた私の中位氷魔法コヒュームを思い知ったか!! 私の大事な見せ場をお前の様な猿に奪われてなるものかて!!


ふふふ。お待たせしました。ではでは、魔法講義ちゃん第27弾、やってきたいと思います。まあ恐らくは皆様方、察しがついてはおられるかと思いますが。

そう! 今回の魔法は! 中位氷魔法コヒューム

この魔法はですね。下位氷魔法ヒュルルを更に広範囲可した魔法です。


え?

それだけかって?


何を!

この作者かぶこが精一杯努力して手に入れた魔法を、それだけとは何じゃあああ!


ぜぇぜぇぜぇ


よし、皆様にもお見舞いしてあげましょう。


中位氷魔コヒュー


シュウ「うるせぇぇえええええ!!!!!」

作者かぶこ「はふんっ!」




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