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追われかぼちゃと勘当姫  作者: 憤怒の灰かぶり
第四章
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ミキ=ホヅミ4

白く薄い霧のかかったそこは、人をほとんど知らない山中の林の中。一歩足を踏み出す事に気力が削がれ、ホヅミ達の体力を奪っていく。気圧も低いのだろうか、呼吸一つでも気持ちが悪くなる一方だ。


「まあ、分かってたんだけどね。やっぱりきつい」

「大丈夫。ホヅミんも直に慣れるよ」


鬱蒼とした木々の間々をシュウが先導し、宛てどなく彷徨っている様な状況にホヅミには思える。同郷であるシュウが異世界での山道に慣れているというのは、自身との不思議な差を感じてしまうというものだ。


「うおりゃ!!」

「キェェェエエエエイイイイ!!」


鶏の首を絞めた様な悲鳴が轟く。この様な山中であれば、魔物は顕著に棲息しているとシュウは言う。ひっきりなしに襲いかかる魔物達は、シュウが乱暴に振り回した拳で簡単にされ、粉砕ふんさいされてしまっていた。


「もうそろそろ抜けるぞ」


転移からほとんど口を利く事のなかったシュウからの気遣いだ。シュウやリリィに着いていくのが精一杯なホヅミは前方を確認しようがなかったが、リリィの目には木々の先に舗装路を見る。


「ぷはぁっ! やっとまともな道だぁ」


晴れやかに力みを取る溜め息は小刻みに震える。漸く一息つけるなどという勘違いは甘かった様で、へたり込むホヅミを置き去りにシュウは先を進む。


「シュウ! ちょっと待ってよ。まだホヅミんが」

「んあ? ちっ」


リリィがシュウに声をかけると、思いのほか足を止めてくれた。


「ホヅミん大丈夫?」

「ううん。ごめん、ちょっと休ませて」

「分かった。シュウ! 少し休憩!」


ホヅミは以前山道を歩くコツをリリィから教えて貰っていたのだが、それを駆使しても出鱈目でたらめに凸凹とした山道を歩くというのはホヅミに過労かろうを強いていた。それにシュウはリリィよりも歩く速度が早い。分かっていた事だが、今までどれだけリリィに気を遣われていたかが改めて浮きりになっていた。


「ちっ……少しだけな」


シュウは素直に休憩の申し出を受け入れた。以前ホヅミが共に旅をした時はまともに休憩を入れてはくれなかったのに、これは仲が深まった証拠だろうかとホヅミは推し量る。いや、リリィの言う事を聞いているのだから、もしすればリリィとの関係に何か目まぐるしく発展があったのかもしれない。



ホヅミ達は舗装路の脇で一箇所固めに休憩を取る事にしていた。ホヅミはへとへとでどかんと遠慮なく腰を緑土りょくどに下ろしていた。シュウは足がなまるからと座らずに一本の木へと背を預けている。リリィはというと小腹が空いたとの事でこの場から離れ自身の食料調達に向かっていた。


「ったくよ、あいつはとんだ食いしん坊だな」

「坊って呼び方止めてよ。私もリリィも女なんだからさ」

「んあ? …………おめぇ女なのか?」


その不意打ちに、ホヅミは緩んでいた体に力を込める。


「そ、そそそ……それは……どういう………」

「いやだってよ、あいつの体男だろ? それじゃあおめぇも男って事じゃねぇのか?」

「ひゃっ!」


思いもよらない暴露に、ホヅミは穴があったら入りたい気持ちでいっぱいだ。何とか誤魔化すための口実を作らねばと脳みそをひたすらねる。


「あ、えっと……えっとえっと………あはは、そうだよ、ぼ、ぼぼぼ、僕男なんだよねぇ……ででででもぉ、この体で男らしくしたら……へ、へへへ、変だよね? だから敢えて、私にしてるっていうか………あはは」


ホヅミは日本という冷たい世界で誰から与えられた訳でもない思想を、その身をもって散々と他人から植え付けられてきていた。男は男らしく、女は女らしく、もちろんホヅミの様に性へ違和感を持つ者は文字通り除け者。そんな古くさい慣習に囚われて、思わずシュウも自身をゴミの様に扱ってきた人間と同じではないかと警戒心を抱いてしまった。


「ふーん」


シュウは男だ。ホヅミは多く、男に虐められて生きてきた。ホヅミは男であるシュウに恐怖を覚えていた。だがそれすらも、慣習に囚われているのだろう。ホヅミは自分で言って置いて、虚しく不快な気分に苛まれていた。


「まあ良いけどよ」


シュウは何かを見透かした様な目線をホヅミに向けるが、ホヅミはにもかくにも誤魔化し笑いを続けるしかなかった。嫌われたくない。例えシュウの本質が、自分を虐めてきた様な嫌な人間だったとしても、ここで嫌われたら異世界での生活は台無しだ。リリィにも迷惑をかけてしまう。


「ごめんごめん。遅くなっちった」

「キュュイイイイン!!!」


リリィが戻ってきた。だがリリィよりも、そのリリィが抱える二つの異形に、シュウもホヅミも畏怖いふする。


「お、おめ………それ人喰い林檎りんごだろ。何てもの持ってきてやがんだよ」

「な、何あれ」

「どうしたの二人共? 美味しいよこれ。はい、二人の分」


と差し出される一つ目の赤い人喰い林檎はギザギザの歯を剥き出しに垂涎し、目つきを鋭くして唸っている。今にもシュウとホヅミに飛び掛かってきそうだ。


「食べないの?」


屈託ない問いかけにシュウはいかにも呆れた様な引き攣り顔で、ホヅミを見る。


「おい、こいつ……いつもこんなんなのか?」

「知らない……こんなリリィ知らないよ」

「どうしたのさ二人共ぉ〜」


リリィの口元に見えるのは人喰い林檎の赤い果汁なのか血液なのか。怪異を手ににんまりと笑うリリィは、二人には不気味に見えた。


「食べないの? じゃあボクが食べるね。あーん」

「キュュイイイイン!!!!!」


小さな断末魔がリリィの口の中で不協和音ふきょうわおんを奏でる。それを見ていた二人の顔は段々と青ざめていくのであった。



三人は休憩を終えて、舗装路を一頻ひとしきり歩くと、シュウが足を止める。思わぬシュウの突然の行いに、リリィとホヅミは首を傾げた。


「魔物だ」


その一言を耳に、二人はシュウの先を見据える。白い霧のせいで最初は何も見えなかったが次第にそこには影が浮き出て、異形を形作っていく。


「あれはソルム?」


リリィが言う。


「ソルムって?」

「ソルムっていうのは、ウルガルフの亜種で、普段は単独で行動しているの。クラスはH(ハイ)クラス」


ウルガルフというのは以前リリィとの旅路で遭遇した事があった。狼を人型にした様な魔物だ。それらの群れを束ねるのがボスウルガルフ。それはホヅミは見た事がない。ウルガルフがCクラス、ボスウルガルフがAクラスと聞いていたホヅミには、いきなりのH(ハイ)クラスで驚きの限りだ。Cを束ねるのがA。それを考えるだけでも想像がつく。ソルムとはきっと信じられないほどに強い魔物なのだろう


「おっきい」


それは人間など簡単に握り潰してしまえそうな程に巨体であった。ただどこか戦意を感じられない。見れば体中に青血の滲んだ包帯が巻かれていた。立ち止まるソルム。シュウは身構えて応戦しようとするが、ソルムに襲撃の様子はない。


「クォォオン」


ソルムは吠えた。すると舗装路を逸れて林の中へと姿を消していったのである。巨体の魔物らしからぬ悲しい遠吠え、そう三人には感じられて、益々持って三人は分からないでいた。


「ん? もう一体来やがる………なっ!? こ、この気配は!」


シュウの顔つきは険しいものへと変わる。それはもうこの中で一番よくシュウを知るホヅミ自身、今までにないくらいに。


「あいつは!?」


霧に浮かび上がるのは先とは打って変わって小柄な影だ。てくてくとこちらへ向かって歩いてくるのが分かる。


「まさか!?」

「そうさ、そのまさかさ。よぅぉう、おめぇら、ひ、さ、し、ぶ、り、だなぁ」


ふとシュウは身構えるのを止めた。普通な足取りで何の力みもなく小柄な影に向かって歩いていく。


「あれってあの時見た奴じゃない?」


リリィがホヅミに流すと、ホヅミは影によく目を凝らす。すると見覚えのあるフォルムが目に見えてきた。それは犬の耳に豚の鼻に猫の胴体。

ああ、あいつだ。あの猿だ。


「坊ちゃん、それに嬢ちゃん達。覚えているかい? 俺の名はイアツカンだぜ? ふぅーっ!」

「ふんっ!!!!!」

「ぎょぇぇええええ!?!?」


シュウの気合いの入った蹴りはイアツカンのふところもろ入る。蹴り上げられたイアツカンはそれはそれはどこまでも、どこまでも高く遠く、飛ばされていくのであった。

ダダッダン!!


遂に来ましたやって来ました、あの魔法を紹介するこの時が!!


魔法講義ちゃん第25弾!!! ダン! ダン!


…………


そう、この魔法は極位魔法。

下位、中位、上位、特位、超位、続くは極位!!


人、魔族はもちろん、魔物にですら使える者は少ないと言われ、それはそれはもう恐ろしくも強大な魔法であります。


作中一度だけリリィさんが使用しておりましたね。しかも増幅魔法バイリング込みで。


今回リリィさんが使った極位魔法は、極位火炎魔法ロゼ・インガルフ

きゃあー! かっこいい!

Rozeとかオシャンティー過ぎるぅ!!


喰い薔薇の炎でございますよ!

飲み込まれたら最後、炎の海で窒息します。

薔薇を型どった綺麗な魔法です。

とっても凄まじい単一魔法ですので、皆さんも使える様になると良いかもですよ!


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