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追われかぼちゃと勘当姫  作者: 憤怒の灰かぶり
第三章
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愛してる1 (挿絵あり)

挿絵(By みてみん)

ホヅミは動かなくなったキマイラを見る。激戦の中で精悍せいかんに大空洞を駆け抜けていたそのたくましい胴体は今や覇気を失い、果敢無かかんなく横たわる。後味の悪い断末魔が体の中で木霊こだまする最中、背後の空間が揺らいだ。


「ホヅミん!」


溜飲りゅういんの下がった晴れやかな声で叫ぶリリィは、転移早々いの一番にホヅミの元へと駆ける。


「リリィ……私……何とか倒せたよ」

「うん! ……あれ、ホヅミん泣いてる? そうだよね。怖かったよね」


涙ぐんで気遣きづかうリリィの言葉で、ホヅミは自身の目から流れ出る涙に気づいた。怖かった? そう推し量るリリィは正しいのだろう。けれどホヅミにはその涙が、別の事柄によるものだと何となく感じられていた。それはキマイラへの追悼ついとう。キマイラと会話をした訳では無い。ただ一方的に襲われていた自分自身。だけど自身の体に流れる血潮ちしおはその涙と情を生み出していた。


「良くぞやってくれた、混血よ」


愁眉しゅうびを開いてふんぞり返るロウシュが、淡々とした口調でホヅミに語りかける。その恬然てんぜんとした態度に癇に障るホヅミとリリィは、平静をよそおって聞き置いた。


「合格だ。今日は牢で体を休めておけ。明日、存分に役立ってもらうぞ」


ロウシュが指示を出すと、幾人かの兵士達はキマイラの周りを取り囲み火炎魔法を詠唱。遺体をみるみる内に燃やしていく。そして一人の兵士はホヅミに封魔錠スペルオフをかけ、回復魔法にて治療。キマイラの遺体が消し炭になる頃には、ホヅミの体中の傷は跡形あとかたもなく消える。


「では戻るとするか。空間魔法を」


ロウシュの合図あいずで兵士二人が空間魔法の詠唱を始めた。一行は一点に固まり、やがて空間魔法の準備が整う。


「「転移!」」


兵士二人が息を揃えると、魔法数式のドームに包まれた一行は圧縮されて消えた。

そしてルノーラ帝国門外へと転移が完了する一行。巨大な鋼の吊り橋を通り往来を行き、ルノーラ兵の集う砦へと戻る。ホヅミ、リリィ、マリィの三人は再び地下牢へと収監しゅうかんされ、今日の残りを過ごす事になる。

三人は明日やって来る戦いについて話し合っていた。もちろん三人ははなから戦争などという危険な行事に参加するつもりはない。戦争へと出向いた直後が、三人のする戦いである。


「リリィ、あなたが作戦の肝なの。お願いね」

「分かってる、ボクを誰だと思ってるの? トト塾一の天才にして、ママの娘だよ?」


他の牢屋に声が届かない様に三人で肩を組んで話す。



自由の身になった時。そんな末々《すえずえ》の議題ぎだいをリリィがぽつりとらした。


「ボク達三人で、一緒に暮らしたいな。いつまでも。仲良く三人で」


気が滅入めいってしまいそうになる様な陰鬱いんうつな空間で、リリィは明るい未来図を描いて談笑に持ち込もうとする。


「そうよね。まず旅をして、遠い遠い大地で住みやすい所を見つけなくちゃね」


マリィも娘に相槌あいづちを打つ様に返す。


「私も……いていいの?」


ホヅミは思う。親子水入らずという言葉が存在しているというのに、自身がこの二人の間に割って入るのは無粋ぶすいではないのかと。


「良いに決まってるじゃん! ホヅミんがいなきゃボク嫌だよ?」

「ふふふ、そうよ。遠慮えんりょなんてしなくていいわ。こういうえんですもの。それにホヅミちゃんは私の弟子でしの一人なんだから」

「あはは」


弟子でしという言葉に苦笑するホヅミ。三人で暮らす事になったら日々しごかれそうだと気怖じする。

それから三人の想像語りは続いた。話がはずんで陰鬱いんうつとした空気は一転、晴れやかなものへと変わる。途中で食事を持ってきた兵士に気づいて慌てて話を止めるが、洋々と朗らかな雰囲気を露呈ろていする三人に気づいた兵士はそれを見て鼻で笑った。ホヅミは思う。兵士は恐らく自身らを、安穏あんのうとして楽天的な惚け者と思ったに違いないと。

湿気しけた食事でも、三人で楽しく話しながら食べる事で美味しく感じられる。いつの間にか消灯時間が来て、三人は希望に胸を膨らませて眠りについた。






明朝。肌寒い中で辺りは騒がしく。地下牢の奥にまで響き渡る声に、ホヅミは薄らと目を開けた。その時丁度よくランプが奥から順に灯されていき、カチャリカチャリと音を立ててぞろぞろとやって来た。ホヅミは飛び起きてリリィとマリィを起こす。


「おはよう諸君。合戦かっせんの時だ。準備は良いかね?」


ロウシュは相も変わらず傲慢ごうまんな態度で三人を見下す。ホヅミとマリィはそんなロウシュを睨みつけるようにして、リリィは目を擦ってまだ眠そうな様子だ。

ロウシュによって牢屋の扉はきしみ音を立てて開かれる。三人は連れ出され、牢屋を後にする。



地下牢から出ると、砦の広場には槍を片手に持った大勢の兵士達が敷き詰められていた。白い息を吐いて何かを待つ様に立ち尽くしている。ホヅミが寝起きに耳にしていたのはこの兵士達の喊声かんせいだろう。端から端までの一列目を数えようとするホヅミだが、四分の一も数えずに止めた。四十人は数えただろうか。横幅と同じくらいに縦にも兵士の列が伸びている。とんでもない数だ。


「驚いたかね。これでも全兵士の四分の一だ。我が帝国には四つの砦があり、それぞれに同等の数兵がいるのだ」


ロウシュは誇らしげに前を歩く。しばらく歩いて兵士達の並ぶ最前列中央に着くと、ロウシュは足を止めた。後ろで手を組み背筋を伸ばして兵士達を一瞥いちべつすると、迫力のある声で高らかに弁じる。


諸君しょくん! 我々がこれより戦う敵アルストロメリアは、我々の描く未来を阻むものである! 敵は用心棒を用意した! そこでこの度、我々も用心棒に代わる戦力を見つけた! これがその戦力である!」


大勢の兵士達は、一人の少女を見てざわつく。その様子から全員が、ロウシュのした行いを知る訳ではない様だ。対し一人の少女ホヅミは、ロウシュの発言したアルストロメリアという言葉に聞き覚えがあった。しかしすぐには思い出せずにそのまま記憶に仕舞い込む事となる。


「皆も存じていよう。ハイシエンス王都の滅亡めつぼうを。そう、王都を滅亡めつぼうさせた者こそが、この魔物と人間の混血である!!」


それには兵士達も動揺を隠しきれない様子だ。


「だが安心をしろ! 我々が年月を経て開発に至った魔力形状記憶合金まりょくけいじょうきおくごうきんからなる、絞輪錠ストレンジオフによって支配した! この混血兵器は、我が手中しゅちゅうだ!」

「「「「「おおおおおおお!!!!」」」」」


ロウシュの言葉に不安が掻き消えていく兵士達は色めき立つ。


「敵の用心棒と、この混血をぶつける! 諸君しょくんらには敵の殲滅せんめつを命ずる! ルノーラ帝国に栄光あれ!!!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」」」


ロウシュの熱弁ねつべんはこれにて終了。ロウシュは大勢の兵士達を引き連れて往来を埋め尽くす。門外へ出ると、門外を大きく囲む様に兵士が配列されていた。赤いガウンを着た服装を見る限り、空間魔法を担当する兵士の様だ。


移門ゲートを作動しろ!!」


ロウシュの合図により赤いガウンの兵士達がブツブツと詠唱を始める。すると以前よりホヅミ達が経験していた空間魔法とは変わって、魔法数式の羅列が大きく横広に楕円だえんかたどっていく。楕円だえんは人が横に十人以上並んで通れる程の大きさだった。楕円の内側には光が溢れ、やがて周りの景色とは全く別の景色が映る。それを確認したロウシュは再び歩を進める。別の景色が映る楕円を潜り、ホヅミ達や兵士達もそれに着いていく。



そこはとある舗道。両端に林が並び一本の道筋が前に前にと伸びている。周りにいた動物達も急な大勢な武装集団の登場に小さく悲鳴を上げてその気配を次々に絶っていく。この分だと魔物も寄り付かないだろう。先頭を歩くロウシュは数分歩いただろう所で足を止める。


「もうすぐで戦地となる場所へ辿り着く訳だが、その前に貴様らの封魔錠スペルオフを外しておこう」


三人はその発言にはっとした。とうとうやって来た脱出の機会に気を引き締める。ロウシュの指示で三人は別々の兵士に封魔錠スペルオフの解錠がなされる。


「ふんっ!」

「がはっ!?」


リリィは封魔錠スペルオフの鍵が離れる瞬間、封魔錠スペルオフを手に取り兵士の金的を蹴り上げた。悶える兵士に構わず、すかさずロウシュに向けて掌を翳す。


下位封印魔法スペリングオフ!!」


リリィの唱えた魔法は、封魔錠スペルオフもととなった魔法。効果は封魔錠スペルオフそのものだ。


「ほう。封印魔法が使えるとはな」


ロウシュにはあらかじめ、リリィは火炎魔法と回復魔法しか使えないと思い込ませておいた。案の定、上手く下位封印魔法スペリングオフをかける事に成功したみたいだ。これでロウシュは魔力を行使出来ない。よってホヅミ達三人に嵌められた絞輪錠ストレンジオフも作動しない。


「おっと、動かないでね」


ロウシュは動こうとすると、マリィが左手でロウシュに魔法の構えを取る。そしてホヅミは背後に誰も置かない様に後退。周りの兵士がリリィとマリィに何かをしようとしたら魔法で抑圧する態勢を取る。


「言ってなかったけどさ、ボクはどんな魔法でも一通り使えるんだよ。残念だったね」


兵士達は中隊長が人質に取られてどよめいている。ロウシュは顔を下げて、意気消沈したかとホヅミ達には思われた。


「ふ、ふふふ……ふはははははっ!! ……はっ!」

「「「ぐぁっ!?!?」」」


ロウシュが一声を吐くと、ホヅミ達三人の絞輪錠ストレンジオフは急に締め付けられる。


「残念なのは貴様らの方だ」

「……な……んで」


三人には分からなかった。ホヅミとマリィはリリィを信じていた。そしてそのリリィは、自身の力を信じていた。唱えたはずの魔法が発動しない。使える筈の魔法が発動しない。かつてそんな事があっただろうかとリリィは困惑する。


「ふふふ、貴様らの企みなど読めておるわ。初めからそこの片腕も、この人間の体をした化け物も使うつもりは無い。眠っている間にこちらも下位封印魔法スペリングオフをかけたまでだ」


苦痛に歪む顔の三人の絞輪錠ストレンジオフは停止した。三人は咳き込んで事態の収拾しゅうしゅうに努めるが、同時に膨らむ絶望を抱える事となる。


「ふははははっ!! ……何をしている。片腕と人間化け物に封魔錠スペルオフをかけ直せ」

「「はっ!」」


そして再びリリィとマリィには封魔錠スペルオフがかけられた。

たった一度のチャンスだった。計画に狂いはなかった。ただロウシュの強い猜疑心さいぎしんが一枚上手だった。意気阻喪いきそそうに陥る三人。語り合った未来図はここでついえるのだろうかと諦めかける。だがホヅミは思う。この場のチャンスは逃したが、戦争を無事に潜り抜けてからまた機会を得られれば良いのではと。自身が今出来ることは、この戦争をまず乗り切る事だと悟った。



ロウシュを先頭にルノーラ兵隊の行列は高地に差し掛かる。そこから見下ろすと、一つの国があった。今回ルノーラが敵とする国。一見ルノーラよりも小さい国だった。ホヅミから見ても、なぜ目の敵にするのか。弱い者いじめではないかと思う程だ。いや、弱い者いじめという可能性も有り得るだろうとホヅミは悪感情を持ってロウシュを見やる。


「ぬ?」


ロウシュが疑念の声を漏らす。ロウシュの視線の先にホヅミ達三人も視線を移すと、敵国に立ちはだかる一つの影がぽつんと存在していた。しばらく近づいてくるとその影は具体的になっていき、ホヅミは目を丸くする。


「おやおや、奇襲をかけるつもりが勇者殿には容易に気づかれてしまった様だ。しかし勇者殿。一人で出迎えとは随分な自信ですな」


ロウシュには見知った顔の様で、態とらしく鷹揚おうようとした態度で対話にのぞむ。


「何かやべぇ魔物の気配がしたと思って来てみりゃ大層な人数連れて穏やかじゃねぇな」


その人物はこの世界で二番目にホヅミのよく知る人物だった。


「久しぶりじゃねぇか……ホヅミ。てめぇ……いや、てめぇの友達のリリィってのは……魔物だったのか?」


お呼びですか?

読者様!!


はい!

では今回も魔法講義ちゃんやってきたいと思います!!

今回の魔法はですね、なんと応用魔法!!!

その名も! 氷槍(アイシクル)狙撃手(ダーツ)!!


ふふふ、この魔法はですね、氷柱を顕現して敵を狙い撃ちにする事が出来るんです!!しかもこれ、普通じゃなかなか溶けません!

氷魔法は通常、低温で凍らせる事に視点を置いてるんですよね。ですがこの魔法、魔力そのもので氷を作っちゃってるんです!だから冷たいけれど、温めたからって溶けませんで!魔力には魔力を!魔力をぶつけて消滅させるしか消す方法ないんですよね!あと術者が解くか。めちゃめちゃ便利ですよ〜。

ただ食べられません。食べたい時は下位氷魔法(ヒュルル)で空気中の水分凍らせて氷出して食べてください。

ではでは!!

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