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追われかぼちゃと勘当姫  作者: 憤怒の灰かぶり
第三章
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マリィ=パンプキン10

ホヅミとマリィの魔法の特訓は夕方にまで続いていた。夕焼けの光が凍った草木に反射して万華鏡まんげきょうの様にきらびやかな景色を彩っていた。連続で打ち続ける氷魔法によって、ホヅミの前方は氷結の林と化してしまっている。空気中の水分は著しく無くなってホヅミもマリィも兵士達も肌や喉がカサカサだった。気温も下がり各々の体温を激しく奪っている。


上位氷魔法ヒュルゾネス!! はぁっ、はぁっ」


ホヅミの上位氷魔法ヒュルゾネスは一向に完成しない。上位氷魔法ヒュルゾネスに挑戦し始めてから、纏まりのない魔法の放出をしてしまったり、不発だったり、手応てごたえのない威力でまるで中位魔法よりも弱い魔法を唱えているとさえ思える様な、不完全な魔法しか発動していない。時折何度か暴走をして、自身に冷気をこうむったりしたせいで、ホヅミの服には霜が堆積たいせきしている。両手は真っ赤になっていて、指の感覚がほとんどなくなってきた頃だ。


上位氷魔法ヒュルゾネス!!」

「ホヅミちゃん、呼吸が乱れてきているわ」

「はい!」


マリィの指摘によって再び呼吸を整えるホヅミ。改めて教わった事を思い出す。中位氷魔法コヒュームは範囲を広げる魔法。上位氷魔法ヒュルゾネスは更に範囲を広げ、冷気を急激に下げる魔法。温度を下げるイメージがホヅミにはなかなか難しい。体験をした事がないからだ。リリィの様に火炎の魔法であれば、簡単に想像はついたであろう。けれど氷の上位魔法に有する冷気は、具体的にどんなものか分かってはいない。マリィには何度も上位氷魔法ヒュルゾネスをお手本として唱えてもらっているが、発動の瞬間に白い霧が爆発的に溢れ出している。だがホヅミの魔法にはそれがない。


「マリィさん、もう一回見せてください!」

「良いわよ……すぅ……はぁ………上位氷魔法ヒュルゾネス!!」


ボォォオワアアアアバキバキバキバキバキッ!!!!!

草木は既に凍りついてしまっていてほとんど変化が見られないが、やはりマリィの上位氷魔法ヒュルゾネスは白い霧が爆発的に溢れ出している。


一方ホヅミとマリィの二人を少し離れたところで監視していた兵士達。


「なあおい」

「あん? 何だよ 」

「あのホヅミって奴は魔物の体だから分かるけどよ、あっちの方は人間なんじゃねぇのか?」


兵士達は二人に戦慄せんりつを覚えていた。


「知らねぇよ」

「実は魔物の血が混じってましたとかじゃないのか? 今日だけで上位魔法十回以上は唱えてるぞ。有り得ないだろ」


明らかに人間の唱えられる上位魔法の限界回数を超えていたマリィ。普通の人間であれば二回、多くても三回が限度である。


魔法を覚えるには実際に魔法を体感するのが一番だとマリィから教わっていた。ゆえに十回以上、お手本であるマリィの氷魔法を見たホヅミは、初めよりも一段と成長している。


上位氷魔法ヒュルゾネス!!!」


だがここに来て不発。先程までは何だかコツが掴めてきた様な気がしていたホヅミの集中力は一気に瓦解氷消がかいひょうしょうしていく。落胆するホヅミの肩にそっとマリィは手を置いた。


「そろそろ限界みたいね」


かれこれ百回以上は上位魔法を打ち続けたホヅミの瞳は紅色から緑色に戻っていた。マリィはそれを見てホヅミに残る魔力を悟る。


「待って! まだ……あと少しだけ」

「いいえ、あなたの魔力はもう限界がきているわ。もしそれ以上続けたら何が起こるか」


ホヅミはマリィの話を聞き入れず、感覚のない両手を前に再び突き出して、林へと鋭い視線を向ける。


「私……いつもリリィに迷惑かけてるんです……無茶させてるんです……だから今度は私がリリィを助けたい……助けられるくらい強くなりたい………ここで頑張らなきゃ……またリリィに辛い思いをさせる気がするから」


強い思いを心に宿し、ホヅミは呼吸を整える。するとそんなホヅミの心境の変化によるものなのか、ホヅミはこれから発動する魔法を唱える前から手応えを感じていた。小さな両手からは白い冷気がじわじわと溢れ出してきている。


上位氷魔法ヒュルゾネス!!!!」


ボォォオワアアアアオオオオオバキバキバキバキバキッ!!!!! バリバリバリバリバリン!!!!!

空からはバスケットボールくらいの大きさの氷塊があられの様にホヅミの前方へと降り注ぐ。凍りついた木々はもろく次々に砕けていった。溢れ出る白い冷気が煙幕えんまくを張るように前方を多い、だんだんとそれは晴れていく。見ればかなりの広範囲までホヅミの魔法は及んでいた様だ。ホヅミを中心に扇形おうぎがたを描く様に、その規模は八十メートルくらいあるだろう。


「出来た」


ぐらつくホヅミに気づいて、目を見開いて固まっていたマリィが我に返る。


「凄い、凄いわ! ホヅミちゃん、よく頑張ったわぁ!」


ホヅミを抱き寄せて後頭部を撫でるマリィ。温かいその抱擁ほうようにホヅミは安心すると、そのまま眠る様に気絶してしまった。





ホヅミは夢を見ていた。ホヅミは両手を上げて、その双方の手を誰かが握ってくれている。前を歩く二人は温かく笑いかけてくれていた。自身の左手を握るのはマリィだ。けれどホヅミの知るマリィとは少し違う。そう、既にあるはずのない右手でホヅミの左手を握って前を歩いていたのだ。それだけでなく、随分見上げた所に顔が見える。ホヅミは自身が縮んでしまったのではないかと錯覚さっかくした。


「リリィ、今日はお家に帰ってお料理の練習しましょうねー」

「マリィ、何を言うんだ! 今日はボクとリリィで昆虫観察こんちゅうかんさつをする約束をしたんだぞ?」


口を尖らせて話す男の人の声。自身の右手を握るのはホヅミの知らない人だった。ただ男の人の頭には小さな角の様なものが生えており、いつか見たリリィの瞳の紅色と、同じ色をした瞳だった。


「あなたこそ何言ってるの? リリィは女の子なのよ?」

「女の子だって昆虫好きかもしれないじゃないか! それに今から慣れさせておけば、大人になって……きゃあ〜虫怖い〜……ってならなくて済む」

「きゃあ〜! ふふふふふ」


ホヅミは口を動かそうとしていないにも関わらず、勝手に声が出る。男の人の真似をしたのだろう。マリィと男の人はその振る舞いに、困った様に笑って顔を見合わせる。


「リリィ、お料理好きよね?」

「リリィ、昆虫観察したいよな? かえるさん好きだよな?」


二人は互いにリリィの気を引こうと撫でるように甘い言い方をする。


「……ん? かえるって昆虫じゃないわよね?」


突っ込まれて焦る男の人は表情が固まる。


「リリィどっちもすゆ! どっちもパパとママとすゆ!」


その瞬間ホヅミはこれがリリィの記憶なのだと知る。リリィの体に入っているのだから、こういう夢を見る事もあるのだろう。



「ははは、そうだな。パパもママとリリィの三人でやる方が楽しいと思うよ」

「そうね、お料理も昆虫観察も三人でしましょう」


屈託のないリリィに二人は考えを改める。


「ただしパパ? お料理で家まで燃やすのはもうやめてちょうだいね? じゃないと凍らすわよ?」

「ひっ、ひぇ〜」


パパと呼ばれた男の人は、マリィの言葉に背筋を凍らせていた。

そして場面が切り替わる。そこはとある一軒家の外。リリィの目の前で、リリィのパパが地面に寝転がっていた。


「パパ? どうしたの? あ、もしかしてお魚さんの真似? リリィもする! ぎょっぎょっぎょ〜」


小さい頃のリリィを通して見ていたホヅミ。リリィのパパは赤紫色の液体に塗れ、地面に突っ伏していた。リリィはそれをお魚の真似と思って、同じ様に地面で寝そべってピタピタと跳ねる。


「ぎょっぎょっぎょ〜ぎょっぎょっぎょ〜……ねぇパパもやってよ…………パパ?」


何か様子がおかしいとリリィはパパを揺さぶる。


「うぅっ……あ……リリィ……ママを……呼んできてくれるか?」


リリィはパパの様子が呑み込めずに少し考えたが、分からないのでとりあえずママを呼んでくる事にした。


「うん! 分かった!」


リリィは家に入るとマリィを呼んだ。


「ママ! パパが帰ってきたよ!」

「パパが? 意外に早かったわねあの人」


マリィは家事の手を止めてリリィの立つ入口へと向かう。


「あ、リリィ! またお洋服泥だらけにして! もう、何やって……………!?」


マリィは血相を変えてリリィの元に駆け寄った。リリィの右手と右の袖口はべったりと赤紫色の液体で汚れている。マリィはリリィの右手を取り何かを確かめた。ふとリリィの背後の向こうの光景を見たマリィの顔色はより一層に青ざめる。マリィはゆっくりと入口の外へと歩き出した。


「嘘……嘘よ……ダリア……ダリア!!! 」


マリィは、リリィのパパであるダリアの元へと駆け寄った。ダリアは傷だらけで、赤紫色の液体を体中から流していた。息も絶え絶えで、苦しそうにしている。


「すまないマリィ……ボクはもう」

「そんな、嫌よ。あなたが死んだら……私は……リリィは……」


リリィはその小さな歩幅でてくてく歩いて、マリィの背後に立つ。振り向いたマリィは泣いていた。


「ママ? どうして泣いてるの?」

「リリィ……これは……」


マリィが答えあぐねっていると、満身創痍まんしんそういなダリアが、棘も苦しげもない口調で、優しくリリィに語りかける。


「リリィ、ボクは旅に出なくちゃならない。ママとお留守番、頼めるかな?」


見上げるダリアの顔は笑っていた。リリィの右手を引いて笑いかける様に、穏やかで、優しく、力強く。


「うん! パパの代わりに、私がママを守る」


ダリアは左の人差し指を立てると、リリィはそれを小さな小さな両手でめいいっぱいに握る。


「マリィ、行ってくるよ」

「気をつけて、ダリア」


それを見届けるとダリアは動かなくなる。

そこで視界は暗くなり、目の前には真っ黒な空間が広がった。そっと目を開けると、見覚えのある温かみに欠けた天井てんじょうが広がり、すぐにそこは牢屋の中だと気づく。


「おはようホヅミん! 良かった! 帰ってきてから全然目を覚まさないんだもん! 心配したよ!」


満面の笑みでリリィが見下ろす。


「リリィ……」


ホヅミはふと、一筋だけ目から涙を流した。悲しそうにするホヅミを見て、リリィの表情は一変する。


「ホヅミん? どうしたの? 嫌な夢でも見た?」


心配そうにホヅミの顔を覗き込むリリィ。ホヅミの見た夢は嫌という言葉で形容して良い様なものではなかった。リリィが大切に思う父親の死。だがそれ以上にその夢には、愛と優しさに溢れていたのだから。


「ううん、違う……違うの………」


夢の内容をリリィに話してしまいたい。辛かったねと(なぐさ)めてあげたい。けれど話すだけで余計な記憶を掘り起こしてしまうならとホヅミは言葉を飲み込んだ。



聞けば今現在は既に朝を迎えているらしい。ホヅミはマリィとの魔法の猛特訓のあとから、なんと今の今までずっと眠りこけていたらしい。魔力をほとんど使い切ると、大抵の人は疲れて眠くなるらしいが、ホヅミの場合はリリィの体という事もあって、その回復にかなりの睡眠時間を要していた。


「はい、ホヅミん。お食事だよ」


ホヅミは起き上がると、木製のトレイをリリィに手渡される。そこには直接乗せられたコッペパンの様なものが二つと、お皿には透明とうめいな何かのスープが入っていた。


「ありがとう」


ホヅミのお腹は背中とくっついてしまいそうなほどにぺこぺこだった。封魔錠スペルオフのかけられた不自由な手でパンを取ると、むさぼる様に口に押し込む。喉がつまりかけると、冷めてぬるくなったスープをゴクゴクと流し込んだ。パンはただのぱさぱさしたパン。スープは薄い塩味。味気ないものだったが、今のホヅミにとっては食べられるだけありがたい。


「ホヅミんずるいな。たった一日で氷の上位魔法覚えるなんて。ボクなんて二ヶ月近くかかったのに」


口を尖らせながら言うその様は、まるで夢で見た例の人とそっくりだった。


「ホヅミちゃんは特別。本来魔法学の方からきっちり学んで安全に覚える手順をすっ飛ばしてるんだから仕方ないの。文句言わない」

「はーい。でもでも、そんな風に覚えられるんだったら、ボクもそうやって覚え」


リリィは右と左の人差し指を突き合わせて口が減らない。


「リリィぃー?」

「わ、分かったってばぁ〜」


目を鋭くしてリリィに顔を近づけるマリィ。リリィは両手を振りながら笑って誤魔化した。


「ホヅミちゃんも、ここを逃げ出せたら魔法学を一からきっちり教えてあげるわ。毎日授業よ? 覚悟しなさい?」

「あはは、はーい」


指を立ててウインクをするマリィに、かわいた笑いを返した。


「ママ、ここから出られるの?」


リリィの率直な問いに、マリィは顔を曇らせる。


「…………現状、ロウシュが私達三人の命を握ってる。それからこの絞輪錠ストレンジオフ、昨日兵士に隠れてこっそり魔法を何度か当てて見たけれど、冷えもしなかった。何か物理的もので外すしかないわ。けれど少しでも妙な動きを見せれば、どこからどんな風にロウシュへ情報が伝達されるかも分からない。だから……」


マリィは言う。絞輪錠ストレンジオフが発動出来ない状態にしてしまえば良いとの事だった。ロウシュを眠らせるか、気絶させるか、封魔錠スペルオフ強奪ごうだつしてロウシュにかけるか。それを行うタイミングとしても、ホヅミが封魔錠スペルオフを外されている時をねらうべきだとマリィは言う。その際、三人は同じ場所にいなければならない。もし誰かが牢屋に残るなどしていれば、すぐに情報が伝達されて牢屋に残った者が処刑されてしまうからである。


「たぶん、魔法の特訓中では狙えない。外に出た時も、どこかからずっと視線を感じていたわ。ルノーラ帝国の至る所に目がある。だから動くならロウシュがいる戦争開始時。それと私達三人を連れていってもらうにはどうしたら良いかよね」

「ママ、そんなの簡単だよ」


リリィは言う。


魔法講義ちゃん第15弾!!

じゃかじゃかじゃかじゃかじゃかじゃん!!


そういえばじゃかじゃかジャンケンなんてもの昔流行ってましたね。

あれ見てたの中学生くらいだったかな?

はい、その世代です。


今回の魔法は下位水魔法(スプラッシュ)!!

シュウさんが使ってましたね。乾燥地帯で水がないことを引き合いに出して、ホヅミにワンって言わせようとしてましたよね。いや全くシュウさんいい趣味してますわ。結局ホヅミはワンって言っちゃいましたよね。でゴクゴクぐいっと。関節キスまでしちゃって。ついでにね、もう少し言うとね、この魔法ね、その人の魔力によって生成するものなのね。魔力ってのはつまり体の一部な訳よ。つまりね……………



言うなれば体液



な訳よ。



シュウさんの体液おいしーってうっはうっはしてたホヅミさん。



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ホヅミ「言ってなーい!!! そんな風に言ってないからぁーっ!!!」

作者「あらホヅミさん、いらしたんですか」

ホヅミ「何勝手な事を言ってるの? やめてくれる?! ねぇ、やめてくれる?!」

作者「いや良いじゃないですか。どうせシュウさんに、ホ、の字なんでしょう?」

ホヅミ「違うから!! そういうのやめてって!!」

作者「もう、照れなくてもいいのにっ」

ホヅミ「照れてないし」

作者「だったらもう、作者権限でシュウさんとくっつけてあげちゃいましょうか? ふっふっふ、お主も悪よのぉ」


つんつん、つんつん


ホヅミ「あ! こんなところに新しい魔法を試す実験体が! よーし……上位氷魔(ヒュルゾネ)

作者「すみませんすみませんすみませんすみませんすみません!! すみませぇぇぇぇええええんんっっ!!!!! もう痛いのは懲り懲りなんです! お許しを〜!!!!!」

ホヅミ「()みませんで済むなら警察なんか入りま」

作者「ひぇぇぇえええええええっ!!?!?!?」


カチンッコチンッ!!


ホヅミ「あー………何か………すみません…」


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