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追われかぼちゃと勘当姫  作者: 憤怒の灰かぶり
第一章
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シュウ=トサカ9

窓の傍では小鳥達が声を揃えて合唱している。薄目を開くと、窓ガラスからは眩い朝日が差し込んでいた。


「ふんんーっ」


ホヅミは上半身だけ起こして背伸びをすると、左を見る。床に敷いた布団の上ではまだシュウが眠っているようだった。


「あれ?」


ふとホヅミは掛け布団の中から除く赤い何かに気づく。捲っていくと、白い布団は鮮血せんけつに染まっていた。


「あが、あがが」


思えば下腹部の痛みが昨晩よりも強い。足を掛け布団から出すと太もものすそが真っ赤っか。


「ど、どうしよ……あ、宿屋のおばさんなら何か分かるかも!」


ホヅミはベッドから起き上がると立ちくらみ。思わずくらりとそのまま床に倒れてしまう。


「あ、あれ?」

「何だよ……るっせぇ……んあ? 血の臭い?」


シュウは飛び起きる。倒れたホヅミと鮮血せんけつに染まったベッドに目を丸くした。


「お、おい! 大丈夫かよお前!何だよ、こんなにひでぇのかよ!……おい! ホヅミ!」

「ああ……シュウくん……もう大丈夫。ちょっと立ちくらみがしたみたい」


ホヅミはゆったりと体を起こした。


「私おばさんの所に行ってくるね」

「ふらふらじゃねぇか。いったい何しに行くんだよ」

「せ、生理なら……どうしたらいいか聞いてこなきゃ」


シュウはホヅミを止めて、その体を抱き抱える。そのままベッドの方へと逆戻りした。


「そういうの昨日にしとけよな……時間あったんだからよ」


目を逸らしながら頬を染めるシュウは、ホヅミをベッドに下ろすと部屋の外へと向かっていった。

それからしばらくするとシュウが何かのたばを持って帰ってくる。


「これ」

「あ、どうも」


シュウが渡してくれたのは、着替えのワンピースや下着と、たばになった何かの布だった。色は深緑。


「それは吸血樹きゅうけつきっていう樹木を素材にして作られたものだってよ。人間の血を吸う樹木らしい」

「あ、ありがとう」


ホヅミは浴室へと向かう。


「それからその服洗濯しといてやるから、浴室のバスケットに入れて外に出しとけ」

「うん、分かった。ありがとう」


シュウは目も合わせずに指す。どうやらおばさんに生理について聞くのがとても堪えたらしい。



ホヅミが着替えを終えてシャワーから帰ってくると、シュウは洗濯の途中だった様だ。だが驚いたのはその異様な光景。この世界には洗濯機の様なものはない。そんな中シュウは床に胡座あぐらをかいて、魔法で洗濯を行っている様で、宙に浮かぶ水の中で衣服達が螺旋らせんしている。


「初めて見るか? 水魔法の使える人間にしか出来ねぇけどな」


シュウは傍にあった洗浄粉を水の塊にふりかける。すると水は泡立っていき、洗剤の匂いがホヅミの鼻をかすめる。それから一分も経ったか経たないかで、にごった液体と衣服を分離した。


「まあ、入れ替わってるなら、元のお前の体で水魔法を使える可能性は十分にある」


衣服は一箇所に落下した。ホヅミは一つ手に取ると、先程まではかなり薄汚れていたと思えるほどに綺麗になっている。水気もなく、とても良い匂いがしていた。


「そうやって洗濯するんだ」

「ずいぶん前に宿屋の人間に聞いたんだよ。本来なら宿屋の人間に任せるんだが、俺はそれがどうも落ち着かねぇ」


シュウは立ち上がると、掌ににごった水を抱えながら浴室に向かっていく。ジャボンと音がしたかと思うと、空手からてのシュウが戻ってきた。


「洗濯終わったから、またそれに着替えな。食事を済ませたらすぐ出発だ」


衣服を拾い集めたホヅミがまず、先に浴室で着替えを済ませて、次にシュウが浴室で着替えを済ます。しかしシュウの様子に何か足りないものを感じていたホヅミは、シュウが腕輪をつけていない事に気づいた。


「腕輪は外していくの?」

「言ったろ。あの腕輪は外していくって」


ノックが鳴って、シュウは扉を開ける。宿屋のおばさんが食事を運び込んできた。


「おばさん、さっきはありがとうございます。助かりました」

「あら良いのよ。困った時はお互い様、助け合っていきましょう?」


朝食はシチューだった。ホヅミにとっては見た事のない野菜やお肉の入った美味しいシチュー。二人のお腹を温かく満たした。





二人は宿屋を後に、昨日寄った賞金稼ぎ組合(バウンティユニオン)へとおもむく。気のいい宿主に門出かどでを見送られてホヅミは上機嫌。シュウはというと、何やら度々視線をホヅミに送り、歩調を合わせているようにも見えなくない。


「何? どうしたの? さっきから」

「な、何でもねぇ」


そんなシュウの様子を不思議がるホヅミ。不意に下腹部がズキりとした強烈な痛みに襲われた。


「うっ……」

「おい大丈夫か!」


心配そうな表情のシュウがすぐ横にあった。


「うん、ちょっとズキッてしただけ」

「そうか」


ややほころぶシュウの顔を見ては新鮮な思いだ。


「か、勘違いすんな。これからお前の友達を助けにいくのにお前は必要だからな」


とそっぽを向くシュウを見て、ホヅミはクスリと笑う。


「あ、そういえば。今から行く賞金稼ぎ組合(バウンティユニオン)じゃ、元の私の能力は見られないよね、入れ替わってるから。リリィのを勝手に見ちゃうの、何だか悪いな」

「何でもいい。使える能力なら使うだけだ」




二人は賞金稼ぎ組合(バウンティユニオン)を入口を潜った。まだ朝早いからなのか、閑散かんさんとしている。それでも受付嬢は昨日と変わりなくカウンター越しに参列していた。シュウは三人いる内の左の受付嬢の元に向かう。


「おはようございます。本日は依頼をお探しですか?」

「いいや、こいつの能力を見たいんだが」

左様さようでございますか。ではそちらのお嬢様、こちらへどうぞ」


かしこまった態度で出迎えられて、思わず背筋が伸びるホヅミ。


「髪の毛を一本いただきます」


さっと素早い動きで受付嬢はホヅミの髪の毛を一本抜いてみせた。避ける間もない程の速度で、笑顔の下にひそむのは、もしかするととんでもない猛者なのかもしれないとホヅミはおののく。


「うふっ、ではこの髪の毛をお手に」


ホヅミの出した掌に乗せられる髪の毛。そのやり取りにますます懸念けねんつのるホヅミ。受付嬢が手を翳すと、痛い思いはしたくないと目をつむる。


「……下位分析魔法アナライズ! 目を開けて御覧になってください」


そう受付嬢が優しくうながすと、ホヅミはゆっくりと目を開ける。


「わぁっ!? 髪の毛から何か浮かび上がってる」

「この魔法は分析系統の魔法の一つです。対象のDNAを含んだ物を媒介にして発動する魔法です。媒介ばいかいに触れている者に、対象の能力や適性などを見せられます。この魔法なかなか使える人が少ないんですよ?」


受付嬢はウインクして見せる。が目の前の能力表示に目を奪われているホヅミには届かず、受付嬢はがくりと肩を落とす。



ホヅミの能力は……リリィの体の能力はというと、まず使用可能魔法系統があり、そこには全魔法と記されていた。

続いて固有魔法は分析、蘇生、天√※§°*、増幅魔法と記されている。

固有能力は魔力供給、※◎>▽°#∽√と文字化けしていた。


「あ、ああ、ああああ」


称号:魔物と人間のハーフ、†≧<√◎*

ホヅミは開いた口が塞がらなかった。


「何だ、どんな能力だったんだ? まあ所詮しょせん俺よりかはしょぼいだろ?」


と自信満々に聞くシュウ。ふと下の方に、本・固有能力入れ替わり作動中とあった。本・固有能力とはつまり、ホヅミの本体の能力が入れ替わりの能力という意味だろうか。


「どうしたんだ? 何て書いてあるんだ。俺にも見せ」


ホヅミは咄嗟とっさに髪の毛を飲み込んだ。


「何してやがるおめぇ!」

「や、やだなぁシュウくん。女の子のものを覗き見しようだなんて、はしたないですよ?」

「あ゛あ゛っ!? 何寝惚けてやがんだ!たかが能力だろうがコラ!」


ホヅミは友達の衝撃の事実に狼狽ろうばいしていた。つまり今までリリィは隠し事をしていたのだ。そんな予感はしていた。ユーナラ町でこの体が弾かれるのは、結界がこの体を拒んだのだろう。そしてニト町や王都に入る事が出来たのは、昨夜の魔物の言葉に答えがある。力が弱った今を狙ったとあの魔物は言ったのだ。魔物と人間のハーフというだけに、力が不安定。そう考えると、つじつまが合った。


「とりあえずもう行こう? 受付嬢さんありがとうございました!」

「あん!!押すなコラ!お前の能力見ねぇと先進まねぇだろうが!!」


ホヅミはシュウの背中を入口に向かって押していく。


「あら、元々私の能力なんか宛にしなくても友達を助けられるだけの算段さんだんじゃないの?」

「は? いやいや、お前の能力が利用出来そうなら利用するって話だろうが! おい!」

「いいからいいから。知られたら恥ずかしい女の子の秘密も書いてあったの!」


それにはシュウも言葉が引っ込んだ。


「ちっ、何なんだよそれ」


二人は賞金稼ぎ組合(バウンティユニオン)を後にした。







リリィやべぇチートやんと思った方??

そんなもんなんです。

何せリリィは……


おっと、これ以上はネタバレっすね。

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