シュウ=トサカ8
シュウが向かったのは宿屋だった。夕焼け色の空は今日の旅路の終わりを告げているようだ。やがて闇がやってきて、次に光り輝く時までに魔法の力を蓄えているかのように。
「あーすっかり暗くなっちゃったね」
「お前、今日泊まるところあんのか?」
「え?」
聞かれて、ホヅミは今使えるのは銅貨二枚だけである事を思い出した。
「ちなみにこの王都の下町で、銀貨一枚でやっと一泊だ」
「あーあはは……そうなんだ……」
これは野宿するしかないだろうかとホヅミは辺りをキョロキョロする。どこか小道で壁に寄りかかって眠る事も視野に入れていた。
「お前、ここがどこだか分かってんのか? こんな所で野宿なんてしようもんなら真っ先に人攫いの餌食だぜ」
「えっ!? そ、そんな」
驚くホヅミの様子を見てシュウはため息をつく。
「まあお前に死なれちゃ、助けたお前の友達に恨まれそうだからな。俺の部屋に泊まりな」
「えっ!? そ……それは……それで……」
ホヅミは人差し指同士を突き合わせて羞じらう様に躊躇する。もじもじとじれったいその様子に我慢ならずシュウは問う。
「何だ、嫌なのか? はっきりしろ!」
「だ、だから……へ、変な事しない?」
ホヅミは思わず声が小さくなってボソボソと篭もり声で言う。
「は? んな事しねぇよ。てめぇふざけてんのか?」
その返しにはホヅミも堪らなかった。ふざけているつもりはない。至って真剣に言っていた。
ホヅミは小学生の頃に出来た男子の友達がいた。しかしその男子とつるんでいく内に、ホヅミは自身の本心を打ち明けてしまう。それを誤解されて、ベッドの上に無理矢理押し倒された経験があった。無理に足掻けば暴力を振るわれて、手も足も出ず。不意に男子が体勢を崩してその隙にホヅミは逃げる事が出来た。だがそれを皮切りに学校のクラス中にバラされて、私への虐めは始まったのだ。
「ふざけてない……約束して? 何もしないって」
ホヅミにとっては同じ年頃の男子と同室というのはトラウマを刺激する恐怖の一つでしかない。それを分かってか分からずか、ホヅミの様子を察したシュウが、頬を指で掻きながら目線を逸らす。
「何も……しねぇよ。俺は何もしねぇ」
それ以上シュウが何も言う事はなく、二人は宿屋に到着する。宿屋の中は賞金稼ぎ組合よりは狭い屋内ではあったが、よく手入れされている分多少清潔感はあった。
「いらっしゃい。お二人さんかい? ごめんね、生憎今ほとんど部屋が埋まっちゃってて、一部屋しか空いてないんだよ」
「その一部屋を借りたい……お前はそれでいいか?」
「え? う、うん」
少し不安がりながらも相槌を返す。
「一人分の代金で良いよ。銀貨一枚ね」
「よろしく頼む」
シュウは部屋の札を受け取り階段を上がっていく。
「あ、あのぉ……厠ってどこですか?」
「あっちだよ」
シュウとは反対方向にホヅミは行く。扉を開けるとそこはぼっとん便所。便器がなく、中央にポカンと穴が空いているのみだ。
「ふぅ〜」
用を足し、傍に折りたたまれた紙を使って汚れた箇所を拭く。すると不意に下腹部に痛みが走る。
「何? えっ、血、血?」
(ど、どうしよ私……死ぬの?)
ホヅミの顔から血の気が引けていく。救急車を呼んでと言ってもこの世界では通用しない。そもそも救急車など存在しない。病院に行こうにもお金がない。場所も分からない。
ホヅミは折りたたみの紙をごっそりと下着の中に詰め込んだ。
「おばさん、ありがとう!」
「どうしたんだい慌てて」
「何でもないです!」
ホヅミは急いで今日泊まる部屋へと向かう。該当の部屋番号を見つけてホヅミは勢いよく扉を開け放った。
「な、何だお前! 何慌ててる!」
「どうしよう……私……私……死にたくない」
「ああ??」
ホヅミは厠で自身の体の出来事について語った。それを聞いていたシュウは顔を赤くして怒っているようにも恥ずかしがっているようにも取れたため、ホヅミはとかく不安になる。
「おいてめぇ……マジで言ってんのか?」
その言葉にホヅミは見当外れな面持ち。
「お前、生理って知ってるか?」
言われてホヅミはぽかんとするが、次第に顔を赤くしてあわあわと口を閉ざす事が出来ない。
「あわわわわ」
「何で女のお前が分からねぇで男の俺の方が分かるんだよ!」
「ひゃあっ!? ご、ごめん」
シュウは大きくため息をついた。
「まあいいや、俺はとりあえず汗流してくる」
呆れたシュウは更衣室へと向かった。更衣室の扉がガチャンと閉まる音で、ホヅミははっとする。
「ま、待ってシュウさん! ど、どうしよう! どうしたらいいの私!」
と浴室の扉を開けるとシュウが着替えをしている途中で上半身裸に下着一枚だった。
「てめぇ入ってくんじゃねぇっ!!」
「ひゃいぃーっ!?」
シュウは勢いよくガタンッと浴室の扉を閉める。
「ねぇ! どうしたらいいの!」
「知るか! とりあえず紙でも詰めとけ!」
ホヅミはとりあえず言われた通りに辺りの紙を探した。
二人は丸いテーブルを挟んで椅子に腰かけていた。
「ったくよぉ、てめぇ何年女やってんだよ」
「ご……ごめん」
女の体を手に入れてからまだ数日しか経っていないだなんてシュウには言えない。そもそも入れ替わりの事は言ってはいけないタブーとしていつの間にかホヅミの中に浸透していた。
「ちっ、まあいい……そういえば、賞金稼ぎ組合で自分の能力照会はしたのか?」
「あ、ううん。まだ……ていうか忘れてた」
「今日はさっきの通り人が多い。明日明るくなってからまた行くぞ。もし今回の奪還に役に立ちそうな能力なら利用出来るしな。俺も知っておきたい」
ホヅミはシュウのスーパーパワーを思い出していた。ホヅミからすればあまり乱暴な能力は欲しくはないが、リリィを助けられるなら何でも良かった。エルフのサーラと魔法の修行も頑張ってはいたが、あれだけではリリィを連れ去ったエピルカに一矢報いる事も難しいだろう。
トントン、ノック音がして扉は開かれる。
「夕食を持ってきたよ。あんたら旅人だろう? たんとお食べ」
持ち込まれたのはバスケットに詰め込まれた焼きたてのパン、陶器には温かい出来たての木苺のジャム、温かいミルクポット。白いティーカップが二つ。明らかに二人分用意されている。宿主が気を利かせてくれたのだろう。ミルクを白いティーカップに注いで、両手を合わせる。
「いただきます!」
ホヅミは挨拶をする。しかしシュウは何も言わずに食事に手をつけていた。
「シュウさん? ちゃんといただきます言わなきゃ」
「んあ? くだらねぇ。んな事するかよ」
その様子にムッとするホヅミ。
「ちゃんと挨拶しなさいよ。じゃなきゃ作ってくれた人にも食べ物にも失礼よ」
「んあ? ……ちっ……うっせぇな」
毒づきながらもシュウは渋々持っていたパンを置いた。
「いただきます!……」
それを見てホヅミは満足。シュウも再度パンを手に取って口に運ぶ。
二人は存分に食べ終えると、一息ついた。
「ごちそうさまでした」
「……ご、ごちそうさまでした!」
言い慣れないながらもちゃんと言う事を聞いてくれた。初め出会った時はとんでもない野蛮で危ない人だと思っていたが、案外そうでもないらしい。そうホヅミは考えていた。
「そういやお前……友達を助けたら、エルフの村で暮らすのか?」
「え? たぶんそうなると思うけど……」
言われてみれば、そもそもユーナラ町という所に入れなかったから野宿する羽目になって、エルフの村でお世話になる事になったのだ。だがリリィが連れ去られてからはどうだ。ホヅミは平然とニト町やこの王都に入る事が出来ている。ならばわざわざエルフの村でなくとも、人間であるならばニト町で暮らす事も可能ではないのだろうか。
「そういう腹積もりなら何も言わねぇ」
ユーナラ町に何かがあるのかもしれない。
「俺も何だかんだでこの世界の方が住みやすい様だからな。喧嘩だってし放題だし」
と、にかっと笑うシュウ。それは魔物を相手にという事だろう。魔物が不憫でならない。
「元の世界なんかつまらねぇ。お前もそうだろ?」
「え? うん」
元の世界になんて戻りたくもないホヅミだが、結局世界なんてどこに行っても変わらないのではないか、本当の私を知ればエルフの皆も毛嫌いするのではないか、と今も心配は募るばかりである。
「シュウくんは本当に私の友達を助けるだけなの?」
「あ? どういう意味だ?」
「同じ日本人でしょ? 一緒に行動しようよ」
シュウはミルクを一杯注いで口に運ぶ。一口飲むとティーカップをテーブルにゆっくりと置いた。
「俺は弱い奴を仲間にしない」
「なっ! ……別に良いじゃん! 弱かったらいけないわけ?! それにリリィなら強いと思うよ!」
「それならその友達だけを仲間にするだけだ」
その発言には怒りを通り越して何も言い返せなかった。
「今日ここに来るまで、お前は何度狙われた?」
言われてきょとんとするホヅミ。
「大抵の魔物は弱い奴から狙ってくるんだよ。つまらねぇ。マジでつまらねぇ。おめぇが後ろに入れば俺は存分に戦えねぇんだよ」
「な、何それ! あれだけ強いんだから別に守ってくれたって良いじゃん!」
「んあっ!? 舐めてんのかてめぇ!!」
膨れっ面なホヅミにがんを飛ばすシュウ。
「賑やかな所申し訳ありません」
声がした。
それはいつどこから入ってきたのかシュウでさえ読めてはいなかった。緑色の鳥の羽がついた漆黒のベレー帽に漆黒の外套を身に纏う者。肌の色は真っ青で、ホヅミにさえ瞬時に人間でないと認識が出来た。奥には開け放たれた木製の両開きの窓扉。外から入って来たのだとしたら、ここは二階だ、只者ではない。
「てめぇ! どうやって入ってきやがった!」
「御覧の通り、窓からですよ」
「違ぇっ! 俺の聞いてんのは、結界を破らずにどうやって王都に入ってきたんだって事だ!」
結界とはエルフのサーラが言っていた、魔族や魔物を弾くものだろう。
「ふふふ、それは答えられませんねぇ」
「…ちっ」(ちくしょう!今の今まで気づきもしなかった。魔の粒子を感じられない。つまり結界は作動している)
ホヅミは足が竦んでいた。ふとその魔物はホヅミの方を見やる。
「リリィ王女、失礼ながらあなたの不安定な力が一番弱っている今を狙うのをお許しください」
「へ? へ? 王女? リリィが?」
「あ? 何言ってる?」
ホヅミとシュウの二人は魔物の言葉に何が何だか分からない様子。
「おや? これはまた滑稽な芝居ですね。その様な未熟な言い逃れがこの私に通用するとでも?」
魔物はホヅミの元へ歩いていく。それを遮る様にシュウは立ちはだかった。
「何だか分からねぇが、人違いじゃねぇのか? おめぇさっきリリィ王女とか言ってたろ? こいつの名前はホヅミだ。リリィなんて名前じゃねぇ!!」
「ふっ、ふははは! リリィ王女、まさか自身の正体を隠すためにこの様な駒まで用意したのですか? 何と浅はかだ! 次代のパンプキン王国の王が何と情けがない…………………………少しお仕置きが必要ですね」
「いい加減にしやがれぇ!!」
シュウは魔物に殴りかかる。しかし魔物の目つきがおぞましいものへと変貌した瞬間、シュウの体はものすごい勢いで石壁へと叩きつけられる。
「がはっ!?!?」
魔物の手はゆっくりとホヅミへと伸びていく。ホヅミはあれほど強いシュウが容易く圧倒されてしまった事や、リリィを狙っている魔物がいる事に肝が潰れる思いだった。
「おや? 何だか様子が変ですね。まさか本当に? 少し過去の記憶を覗いてみましょう」
魔物はホヅミの頭をがしりと掴む。その手は人間とさほど変わらない大きさで、肌の色が真っ青な所以外は同年代程の人間だ。
「あ、ああ、あ、あああ、ああ、ああああああああぁぁぁあああ……」
魔物が手を退けるとホヅミは我を取り戻す。
「おかしい……これは本当に勘違いの様だ。それにしても今の光景は……まあ良いでしょう。とんだ徒労でした」
魔物は振り返ると窓の方に向かっていく。窓扉の枠に足をかけると、すっと姿を消した。
「な、何だったの?」
呆然と床に座り込むホヅミ。興奮冷めやらぬといった様で腰を抜かしたまま立ち上がる事も出来ないでいる。
「うぐっ……くっ……」
「し、シュウくん? シュウくん!」
シュウの姿を見てようやく足が反射的に動いた様だ。駆け寄って石壁に叩きつけられた彼をそっとベッドの上に寝かせる。
「ど、どうしよ! 口から血が、血がぁ!」
「騒ぐな! 俺の巾着袋に注射のキットが入ってる。血注射だ。俺の肩に注入してくれ。それで怪我が治る」
それを聞いてホヅミは慌ててシュウの巾着袋を漁ると、謎の赤い液体が入っている注射が五本入った小箱があり、それを一つ取り出してシュウの肩に突き刺す。シリンジを押し出していくとシュウの体は蒸気を上げながらみるみるうちに綺麗な体へと戻っていく。変な方向を向いていた腕も元通りに治っていた。
「……ちっ……何なんだあいつは。何で結界の中に入ってこれたんだ! 何で俺は気づかなかったんだ! くそっ! くそっ! くそっ!」
ベッドを力いっぱいに殴るシュウ。羽毛とはいえベッドがギシギシと鳴いている。
「私も驚いたよ。シュウくんよりも強い魔物がいるんだね」
「んあっ!! 何だてめぇ喧嘩売ってんのか!」
「ち、違うよ落ち着いて」
ホヅミは違和感を覚えていた。先程シュウが魔物に容易く吹き飛ばされていた。シュウとの旅の最中、ホヅミはよくシュウの戦いっぷりを見ていた。そのどれもが魔物をパンチ一撃で粉砕する程だ。攻撃を受けたとしても腕で軽く受け流していた。
「んな事よりおめぇ、あいつの口にしていたリリィっておめぇの友達だろ?」
「え? ……うん……そう」
「なぜあの魔物がお前とお前の友達を間違える? 容姿が似てるのか?」
似ているなんて言えば、シュウはリリィを助けてはくれないだろう。詰め寄るシュウにホヅミもこれ以上は隠しきれないと観念する。
「実は……ね……」
ホヅミはこの異世界にいたリリィとの入れ替わりについてシュウに話した。
「てめぇ何で隠してやがった?」
「だってややこしいじゃん。てゆうか信じてくれるの?」
「今更誰が疑うかよ」
入れ替わりを話さずとも、シュウはホヅミの友達を助ける仕事を引き受けていただろう。入れ替わりの事実は言わずとも何も不都合などない。むしろややこしい事実に混乱を招く可能性が多少でもあった。ホヅミの判断は間違ってはいない。シュウはそう思い至ると、呼吸を整えた。
「お前の……お前の友達の? 力が弱まっている今を狙うだとかも言っていた。お前の友達はいったい何者だ? 」
「分からない……あ、でも魔法が上手みたい」
というのも、ホヅミから見たリリィの言われようだった。魔物にも驚愕されて、エルフにも持て囃されている。そんなリリィはきっと凄い魔法の才を持っているのだろうと。
「まあ何であれ入れ替わってるのが幸いしたって事か……ちっ……こんな結界さえなけりゃ」
「え? 結界?」
「何でもねぇ!とりあえずもうあいつは来ねぇだろ!」
シュウは言うと手に黒いグローブを嵌めて、巾着袋を肩にかける。
「俺はちょっと外の風に当たってくる」
「え!? ちょっと、さっきの奴来たらどうすんの!」
「言ったろ! 来ねぇよ。いや、今はそれどころじゃねぇ」
言うとシュウは扉を開けて部屋を出ていってしまった。
「それどころって……私はどうなってもいいの?」
小言を呟くと、再び扉が開く。
「ベッドは使っていい」
「いいの? やったぁ!」
バタン。言い残すと、それからもう戻ってくる気配はなかった。一つしかないベッドを譲ってくれるあたりは良い所なのかもしれない。しかしシュウにも言われたが、やはり先の魔物がまた襲ってくるかもしれない不安はあった。そのせいか眠りにつくのが随分と遅れたが、歩き疲れていたのもあって無事に眠る。
真夜中。
ホヅミは夢うつつ。そんな中聞こえる話し声に、少しだけ意識を傾けていた。
「ああそうだ。結界を破らずに結界の中に入ってきやがった。全体の壁も見て回ったが、何も異常はなかった。門番も俺達以外は誰も通していないとさ」
「俺達? シュウよ、仲間が出来たのか?」
「は? ち、違ぇ。勘違いすんな。依頼を引き受けただけだ」
「ふ〜む、依頼のぉ、むふふ」
一つはシュウの声、もう一つは女の人の声だった。
「それでだ、この王都でエピルカという貴族がエルフの奴隷をたくさん買い込んでいるらしい。他にも正体不明な魔道具や魔本もだ」
「ほぅ、それは興味深いの。エピルカ……確か侯爵家の」
「伯爵だ」
「え?、ああそうじゃったそうじゃった」
気さくな笑い声に、シュウは舌打ちをする。
「これ、舌打ちするでない! 妾も人間故、忘れる事くらいあるのじゃ!」
「あー分かった分かった。でだ、今引き受けている依頼でその貴族と一悶着を起こす。同時に色々と探るつもりだ」
「あまり目立つでないぞ? これは極秘、なのじゃからな? それにお主、結界の中ではあの怪力は使えないのじゃろう?」
結界の中では怪力が使えない?それはシュウのスーパーパワーの事だろうか。とすれば、今日出会った魔物に一撃で倒されてしまったのはそのせいなのだろうか。
「迷惑をかけるつもりはない。腕輪は外していく」
「そうかそうか。さすがじゃのぅ、妾はそんなそなたにフォーリン、フォーリンらぶじゃ! きゅんきゅん」
「切るぞ」
「ま、待て、悪かった。だからもう少し話さんか? 妾も城で退屈しておるのじゃ」
「そうかお互い言うべき事は伝えたんだなじゃあな」
テレビの音が消えたかのように、空間には静寂が広がる。そのせいかシュウの吐息がまるで近くに感じられた。
「お前、起きてるだろ」
「わぁっ!?」
「やっぱり起きてたか」
すぐ近くで声が聞こえたかと思うと、シュウの顔が目の前にあって、ホヅミの鼓動は激しい。
「さっき聞いた事は全部忘れろ」
「女王様の事でしょ? 結界の中で怪力が使えないってどういう」
「いいから忘れろ」
言うとシュウは宿屋のおばさんに借りた敷き布団を床に、体を預ける。しばらく経つとすやすやと吐息を立て始めた。どうやら眠りについたらしい。
(忘れろって言ったって……忘れられないよ……あの力が使えないって、じゃあシュウはどうやってリリィを助けるつもりなんだろう?)
ホヅミは掛け布団を顔半分にまで持ってくる。
(それにシュウと女王様って……相思相愛?)
不安や知欲に目が冴えて、ホヅミはなかなか眠れないでいた。
これ分かりにくいかもですけど、シュウさんもよおしてます。





