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追われかぼちゃと勘当姫  作者: 憤怒の灰かぶり
第一章
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勇者はいずこに5

風の(ブリーズ)……」


ホヅミの体に纏った風は、右の掌へと集まっていく。


弾丸ショット!」


弾かれた風の塊は、一匹の黒いイノシシの魔物、イノブーに向かって飛んでいく。イノブーは躱そうとするも、高速の魔法を躱すことならず直撃。イノブーは青い血液を吹いて吹き飛んだ。


「ぶひぃ!?」


イノブーはその鳴き声を断末魔だんまつまに、ぴくりとも動かなくなった。


「いいぞホヅミ! よくやった」


サーラとホヅミはニトの町へ向かう道すがら、幾度か魔物に襲われていた。しかしどれも弱い魔物ばかりで、サーラはその全てをホヅミに任せていた。そのおかげかホヅミは魔物に怯えることも少なくなり、一人でも魔物と戦うことが出来るほどには上達していた。


「はい! これもサーラさんのおかげです!」


尊敬そんけい眼差まなざしを向けられ、サーラは鼻が高くなる。



辺りはすっかり夕暮れになっていて、サーラもホヅミも疲れて口数がすっかり少なくなっていた。凸凹な道はいつの間にか平坦な道になっていて、何も目立ったものが見当たらない森の中といったところだ。しばらく歩いているとサーラの目には、遠くの方に町の景色が映り、それをホヅミに伝える。森から抜けるとちょうど人の手で舗装されたと思われる道のカーブの所に出てきた。視界が綺麗になり、サーラによれば後は一本道を真っ直ぐに進んでいくだけらしい。



「着いたー!」


最初に声を上げたのはホヅミ。大きく背伸びをする。町からは人のにぎわいが聞こえてきていた。ホヅミはさっそく町に入ろうと一歩踏み出すと、サーラに肩を引かれた。


「ホヅミ、アタシはここまでだ。後は任せたぞ」

「え? どういうこと? サーラさんは行かないの?」


サーラの言葉に疑問ぎもんを持つホヅミ。サーラは寂しげに、頭一個分したのホヅミを見下ろす。


「アタシは魔族だ。人間でないと、町には入れない」

「何で? どうして魔族は町に入っちゃいけないの?」

「いや、そうじゃない。入れないんだ。町には結界が張ってあって、魔物はもちろん、魔族も通さない。それに例え入ったとしても、魔族のアタシらは命を狙われる」


そう語るサーラは重く悲しい面持ちをしていた。サーラにはエルフの持ち物を持っていると不審がられるからと、蔓の籠を回収する。お金だけをポケットに入れて、ホヅミは町へと踏み出した。


「サーラ師匠! 今までありがとう!」


別れを惜しんで振り返るホヅミは手を振って、小さくなっていくサーラを憂いの目で見つめていた。


「あたっ!?」

「気をつけな、嬢ちゃん」


ついホヅミは人にぶつかってしまった。すみませんと謝ってから再び町の外を見ると、そこにサーラの姿はなかった。寂しい気持ちも悲しい気持ちもこれから先への不安も全て心に押し込んで、ホヅミは振り返る。



「よし、まずは聞き込みからね」


ホヅミは切り替えて、勇者を探すべく手当り次第に、町を歩く人間に声をかけてみることにした。


「あの! すいません。勇者を探してるんですけど……」


とつい声が小さくなってしまうホヅミ。それも町を歩く人は派手な武装をした人ばかり。目つきの怖そうな人もたくさんいて、声のかけやすい雰囲気でもなさそうだ。ふと、前から町人の様な格好をした優しそうなおばさんが歩いてくるのが見えて、ホヅミは慌てて駆け寄った。


「あの! 突然すみません。私、勇者を探してるんですけど」

「あんた知らないのかい? 今勇者様が町に来てるんだよ」

「ほんとうですか!? どこにいらっしゃるんですか?」


複数のりんごが入った籠を片手に赤い頭巾を被ったおばさんは、親切に勇者の居場所を教えてくれた。何でも今勇者は、酒場で仲間を募っているらしい。その噂を嗅ぎつけたのか、あちらこちらから我こそはと仲間に名乗り出るためにやってきた猛者もさがこの町にたくさん居るようで。通りで怖そうな人がいっぱい居るのだ。



ホヅミは赤頭巾あかずきんのおばさんに教えてもらった通りに道を歩く。そうして辿たどり着いた酒場からは、何やら騒がしい声が聞こえてきていた。


「ちくしょう! なんだよあいつ! かした野郎だぜ!」


ドンッ

と酒場のドアが強く開け放たれると、目付きの怖いスキンヘッドが筋肉の塊をぐいぐいと前に出して姿を現す。


「あの野郎! 偽物だったらただじゃおかねぇ……あ? 何だ? お前さん……ひょっとして」


恐ろしい面で、ぎろりとホヅミを睨みつける。


「お前さんも、勇者に用があってきたのか?」

「えっ……あ、はいっ」


体に力が入って思わず声か裏返ってしまう。筋肉はじっとホヅミを睨みつけると、フッと鼻を鳴らしてホヅミの横を通り過ぎる。


「止めとけ止めとけ。お嬢さんなんか相手にもされねぇぜ! はっはっはっ」


離れていく筋肉を尻目にほっとするホヅミは、そっと酒場の出入り口を覗き込む。酒場の中は酒に任せてガヤガヤ騒ぐものから泣き崩れる者までいて、いったいどこに勇者などいるのかとホヅミは思う。ホヅミは真っ先にカウンター越しに立つ、落ち着いた雰囲気をかもし出すマスターの元に寄った。


「あの、こちらに勇者さんが来てるって聞いたんですけど」


マスターはキュッキュッと音を立ててワイングラスを布で拭きながら、何も言わずに顎を左にやる。その先には身を鎧で固め、背に大きな剣を背負った男がテーブルに肘をついて座っていた。ホヅミは恐る恐るその男に近づいて、声をかける。


「あの、勇者……さん?」


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