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追われかぼちゃと勘当姫  作者: 憤怒の灰かぶり
第一章
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勇者はいずこに2

トントントン。

村のあちこちからくいを打ち付ける音が鳴る。エルフたちは村の復興に精を注いでいた。元々人員の少ない中、復興を進めるのはかなりの至難を極めるが、子供達も手伝いながら皆めげずに壊れた建物の修理に取り掛かっていた。そんな中ホヅミは村長の付きの一エルフである女エルフのサーラに付き合ってもらい、魔法の習得に励んでいた。


「ブリーズ!! わわわぁっ!?……痛っ!?」


ホヅミは何とか魔法の発動にまでは漕ぎ着けたのだが、それがどうも安定しない。今のように、風がホヅミの体を吹き飛ばしてしまう。魔法に大切なのはイメージ。サーラから言われる通りに風のイメージをしたつもりだったが、何度やっても完成しない。魔力が散り散りになっており、まとまりがないのだとサーラは言う。


「違う。もっとこう、風が自分の体全体を小さく包み込むようなイメージで、もう一回!」

「はい! ブリーズ! へ? わわ」


ホヅミは宙を旋回する。一回転二回転三回転と回って今度は頭から落ちそうになり、サーラが慌ててホヅミの体を受け止める。


「す、すみません」

「ふむ……筋はいいんだ。筋は」


サーラはホヅミの魔法の出具合から、ホヅミのしているイメージの推測を立てて、正しいイメージの指摘を繰り返すがなかなか上手くいかない。


「ほうほう、どうじゃねホヅミちゃん。魔法の習得は順調かね??」


杖をついて現れたのは、頭に包帯を巻いた村長。胸前にまで伸びた白い髭を、撫でてはご機嫌そうにホヅミの名前を呼んだ。


「村長さん!」

「村長! 家で大人しくしててください! 傷が開いたらどうするんですか!?」


サーラは慌てて村長の元に駆け寄る。


「何を言っておるサーラ。お主も怪我をしておるではないか」

「こ、これくらい、かすり傷です!」


言われてサーラは右肩を抑える。エピルカの風魔法を受けた際に右肩が大きく切り裂かれてしまったのだ。回復魔法を使える者がいない今、つぶした薬草を塗って包帯で巻くという処置をしていた。


「ほっほっほ。あまり無理をするでないぞ」

「すみませんサーラさん! 私のために」


サーラは自身に謝るホヅミを見て少し頬を赤らめると、照れたように指で頬を掻く。厳格な一面から、愛らしい仕草を見せる。


「いいからホヅミ。修行を続けるぞ」

「ほっほっ。サーラはホヅミちゃんの事を偉い気に入っとるわい」

「村長!」


顔を赤くしてぷんすか怒るサーラを見た村長は、また笑い声を上げた。


突如笛の音色が聞こえる。それと同時に例の位置には、緑色のもやが現れる。ホヅミは警戒して緑色のもやをじっと睨みつけるが、村長は温和に首を横に振った。


「あれはワシの出した使いじゃ」


緑色のもやから現れ出たのは、村長の付きの一エルフである男エルフのシンラだった。


「シンラ、どうじゃった?」


シンラは情報収集に長けた能力を有していた。それも森に住む動物や鳥達の声を聞き分けることの出来るというものだ。


「は! ハイシエンス王都の外れにある北の町ニトに、勇者の目撃情報が入っていました」

「そうか、それでその信憑性しんぴょうせいは?」

「五分五分かと」


立膝をついて前に構えるシンラを見て眉をひそめた村長は、ホヅミの方へと振り向く。


「ホヅミちゃん、行ってみるか?」

「はい!」


ホヅミもそばでシンラの報告を聞いており、村長の言葉に頷いた。


「旅にはサーラが同行するから心配はせんでいい」

「村長! しかし」


その発言にはサーラも黙ってはいられないようだ。エルフの村は先刻以上に百孔千瘡ひゃっこうせんそうな状態である事をサーラは危惧きぐしていた。


「急ぎ旅じゃ。魔法の習得は旅の最中にしても問題はなかろうて」


村長がサーラに視線を送ると、サーラは何も言えずに黙り込んでしまう。サーラも急ぎの旅であるという事は重々承知していた。恩人であるリリィが酷い目に合わされるのは、サーラも耐え難いもの。



そしてホヅミの出発の時を迎える。村の復興作業に立ち入っていた者は、皆ホヅミの出発前を見送るために作業の手を止める。荷造りはサーラがあれやこれやと用意してくれていた。ホヅミとサーラの二人は、蔓で編まれた籠を背負い、村長の前にて立ち並ぶ。ホヅミは荷物の他に、サーラから小さな短剣を手渡されていた。日本でいう包丁に近くて、これで身を守れと言われた時には、ホヅミは笑みが引きる。

サーラはというと刀身の狭い、軽量性のある長剣を腰に差していた。軽量性のあるといっても、興味本位で持たせてもらったホヅミにとっては、随分重い様に感じられる剣であった。


「それではお主達。くれぐれも気をつけよ。もしあのエピルカという貴族に遭遇した場合は、交戦をせずすぐに逃げ帰るのじゃ」


これからサーラとホヅミが向かうニトの町は、歩けば半日で着く距離にあるという。つまり朝である今から向かえば、夕暮れ時に着くほどの距離だ。ホヅミにとっては長距離でも、この世界に住む者にとってはそれを近いと言うのだ。ホヅミはリリィと歩いたあの一日をしみじみ思う。


「では、行って参れ」

(待っててねリリィ。絶対助けるから)


ホヅミは心で固く決意をすると、サーラと共に背を向ける。


「おーい!必ずリリィ様を救ってきてくれよ!」

「お姉ちゃんを助けてよ!」


エルフは大勢が連れ去られている。それを踏まえた上でリリィだけを助けにいく旅路であると、サーラも生唾なまつばを飲み込んでの同行であった。ホヅミもエルフ達を助けてあげたい気持ちで山々だが、今はリリィの身を案じるしかない。

村長の言い方だと勇者は人で、人はエルフに対して偏見の目を向けている様だ。だがホヅミは勇者ならばエルフ達も偏見ないだろうと考えていた。あわよくばエルフ達の奪還もお願いするつもりである。



サーラがホヅミの前で笛を吹くと、緑色のもやが現れる。

サーラが先導をし、ホヅミとサーラの二人はもやの中へと姿を消した。


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