吸収の真価
セリカさんと星空を見ていたが僕は一度部屋に戻り夕飯が用意されるまで待っていた。
部屋には僕しかいなく、三奈羽はどこかに行ったようだ。
多分、この時間帯だと風呂にでも行ったのだろう。
僕はすでに風呂を済ませてある。
今日、一日で色々なことがあった。
初めて魔獣と対峙し、貞操を狙われ、黄泉を振るい鮮血を撒き散らした。
「はぁ、これからはもっと強い魔獣と戦うんだから、知識ももっと付けないと」
コンコンとドアがノックされる。
「失礼します。夕食の準備が完了しました」
ドアから入ってきたのはメイドのシアさんだ。
「わかりました。すぐに行きます」
返事をするとシアさんはすぐにドアを閉めた。
広間にいった僕はいつもの席に座り待っていた。
生徒の顔色を見ると疲れているのか欠伸をしている生徒や、目を擦っている生徒がたくさんいた。
そして香代がやって来た。
「お疲れぇ、おにい」
「お疲れ、香代は大丈夫?」
「うん、私は大丈夫だけど冴子ちゃんは大丈夫だった?」
「うん、教会の司祭様が回復魔法を使ってくれたからすぐに治ったよ」
そう言うと香代はよかったと言って席に座った。
それからしばらくすると渡辺がやって来た。
「渡辺大丈夫?」
「えぇ、ほんとすごいわね全く痛くないわ」
「冴子ちゃぁん、よかったよぉ」
渡辺に香代が抱きつく。
その姿はとても微笑ましいものだ。
「ハイハイ、百合百合しいのはもうストップね、料理が来たわ」
そんな二人の間に入り止めたのは真美だった。
「えぇ」
香代が残念そうな顔をする。
「ほらミカもなんか言ってあげてよ」
「料理がひっくり返っちゃうから後でね」
「はぁーい」
「香代って私に対して辛辣じゃない?」
「そんなことないよ、私お姉ちゃんのこと大好きだよ」
「私もだよぉ」
この二人も百合百合な展開になった。
「真美も百合百合してるじゃん」
「あはっ」
夕飯を食べ終わった僕は本を読もうと思い、シアさんに聞いて図書室に行った。
「ここかな」
僕は言われた場所につくと大きな扉が待ち構えており僕はドアを開けた。
入った瞬間に本特有のインクと紙の臭いが鼻に入ってくる。
この臭いは個人的に好きだ。
古い本だとなおさら好きだ。
昔の人が書いた本、今の人が書いた本でも変わらないがこの臭いを嗅いでいると
本を書いた人の気持ちみたいなものが感じられる。
そして何より落ち着く。
僕はとりあえずこの世界の常識をちゃんと覚えるために魔法のことやくにのことなどがかかれた本を探す。
しかし、城の図書室と言うこともあってか滅茶苦茶広い。
ビックリするくらい広い。
簡単に説明すると三階建てで構成されており、1フロアに大きな本棚が軽く二、三百ほどある。
つまり、読みたい本が見つからない。
とりあえず探して見ようと思い、なかを歩いていると眼鏡のようなものをかけた人物が本を読んでいた。
「あの、すみません」
僕は声を掛けたみた。
「どうかしましたか?」
その人物は男性にも見えるし女性にも見える顔立ちをしていた。
「あの、僕この世界に召喚されたものなのですけど、この世界の常識を早く身に付けたいと思いまして
そういうことがかかれた本を探しているのですけど、ここまで広いと正直わからなくて、場所を知っていたら教えてもらいたいのですが?」
僕がそう言うとなるほどと呟き立ち上がった。
「私はクリストフといいます。こんな格好をしていますが男です。あと、この図書室の司書をしています」
「僕は早乙女実夏って言います」
「ミカさんはどのような本を読みたいのでしょうか?」
「えぇと、この世界の常識と魔法のこと、魔獣の図鑑とかあったらそれもお願いします」
「わかりました、この世界の文字はわかりますか?」
「すみません、わかりません」
クリストフさんは苦笑した。
「では、この薬を飲んでください。この薬を飲むとこの世界の文字が読めるようになります」
「へ、へぇ『この人はネコ型ロボットなのかな』」
渡された薬を飲むと頭のなかに直接みたことない文字が浮かび次々に吸収されていくのがわかる。
「この文字は読めますか?」
クリストフさんは紙に文字を書いて僕に見せてきた。
「あいうえお」
「正解です。では目的の本を取ってきますね。少し待っててもらえますか」
クリストフさんは階段を上っていった。
図書館を見渡すとさっきまでとは違い文字が読めるようになりどこにどんな本が置いてあるか何となくはわかるように
なっていた。
そこで僕は気になるものを見つけた。
料理本だ。
料理本は昔からよくお世話になっていた。
料理ができなかった頃は料理本をずっと読んでたくさん失敗した今となってはいい思い出だ。
でも、頑張って作った料理を美味しそうに食べてくれる真美と香代を見ていたらもっと美味しいものを作れるように
頑張ろうとか思えてくるから頑張った。
一番苦労したのは味噌汁だ。
味噌汁と言う料理は簡単な料理に見えて難しかった。
出汁が違うことに全く違う味わいになるためにマスターするのに二年ちょっとかかった。
そのお陰もあってか出汁を使う料理のほとんどを同時にマスター出来た。
例えばだし巻き卵など・・・
昔の思い出に浸っているとクリストフさんが降りてきた。
「ありましたよ、これがこの世界の歴史です。こちらのが魔法のことが書かれたもので、これが魔獣の図鑑です。
魔獣の図鑑は三階の一番左端にある通路の本棚にまだ三十冊ほどありますので今度からはそこへ行くと魔獣の図鑑は
読めますよ。私は他の仕事がありますので外へ行きますが他にも読みたい本があれば好きに持っていってくださっても
構いませんよ」
クリストフさんは僕にそう告げて図書館から出ていった。
「持っていっていいって言ってたし、料理本も持っていこう。この世界の料理がわかるかも知れないし」
僕は先程目に入った料理本を手に持ちクリストフさんに渡された三冊の本をもって部屋に戻った。
「お帰り、どこ行ってたの?」
部屋に入ると三奈羽がそう言った。
「図書館に行ってた、この世界のことをもっと知りたいから」
「ふーん、真面目だね昔から」
「別にこれくらい普通だよ、知らないせいで誰かが死んだりした方が辛いし。だから最低限のことは覚えようとしてるだけ」
「確かにそれは辛いね。でもね、ミカばっかりがしんどい思いをしなくてもいいよ。私もミカのすることに手伝うからさ
もっと頼りにしてよ、足だって治ったんだから」
三奈羽は僕に近づいて本を一冊奪うと自分のベッドに座り込んだ。
「わかったよ、これからはもっと頼るから覚悟しといてね」
「楽しみにしてます」
三奈羽が奪った本は魔獣の図鑑だった。
僕は魔法に興味があったので先にそれを読んでみる。
魔法とはあらゆる生物が見に宿す魔力を放出することで世界の摂理に干渉することであらゆる現象を引き起こすことが
できることである。
魔法には属性があり、火、水、風、土、無、雷がある。
この五つは魔法を使えるものならば誰もが使える。
この他にも氷や大地などを習得することもできるがそれは魔法を極めたものにしかできない。
勇者はイメージだといって氷を行きなり扱うことも可能にしたがどうやら異世界では科学という分野があり
世界を構築しているのは原子と呼ばれる小さな物体が集まってできていると言っている。
にわかには信じることはできないが本当のことらしい。
異世界の知識を魔法に活用することもできると言っていた。
しかし、ごく稀に現れるオリジナルスキル所持者のなかにはオリジナルの魔法を発動できる者が存在する。
現在までで確認されているものは、初代国王が所持されていたとする王国創造や勇者が使う光魔法など
オリジナルスキルは剣士などに補正が掛かる剣術とは別にこういった魔法を使えるようにするスキルがあることがある。
オリジナルスキルで発動する魔法はとてつもなく強力であり、上級魔法を上回るほどの効果を持っている。
空間魔法なども存在し、かつて剣士でありながら空間魔法を暑かった剣士は空間をも切り裂いたと言われており
ドラグナ帝国付近にある山が二つになっているのはその剣士が修行をしたときに切り裂いたと言われている。
重力魔法を所持した勇者は魔獣との戦闘で多くの魔獣を潰し戦場を血で染め上げたと伝承されている。
ほんとうに異世界の勇者は何でもありですね。
そもそも魔法を使えるものは女性しかいない。
何故なら魔法を発動させる際に必要な魔力転換炉が男性には存在しない。
形は下の図のような形をしており、心臓にある。
図を見ると細ながいダイヤのような形をした物が書いてあった。
これが魔力を外へ放出する際に必要な魔力転換炉
残念ながら男性にはこの魔法を使うのに必要な期間がないため魔法は使えない。
『つまり、これがあれば魔法を発動できるってことか』
しかし、次に書かれている文を読んで背筋が凍った。
今まで何人もの錬金術師や魔術師が男性のからだのなかに人工的に魔力転換炉を埋め込むと言う
実験が行われたが成功はしなかった。
理由はやはり自分が作り出したものではなかったからだ。
魔力転換炉にも自分と会わないと魔法を使えないようで他人が勝手に埋め込むだけでは
発動できないと言うことが判明した。
我々は今後も実験をしようと試みるが不可能であった。
魔力転換炉を自らの手で作り出すことができたのならば話は別だが・・・
僕は最後の文を読むと脳裏にとあるスキルが浮かび上がった。
創造
これはセリカさんのオリジナルスキルであり事故で僕も習得してしまったスキルである。
セリカさんの話によると強度は普通の物よりも強くなるが時間が大幅に掛かるため先頭向けではないと言っていた。
つまり、これを作り出せたのなら僕は魔法を使うことができる。
創造はイメージとセリカさんは言っていた。
材質は書いていないだけど何となくわかる
形はわかる。場所もわかる。
あとは自分の心臓に魔力転換炉を作り出す。
少しずつからだの中から力が抜けていくのがわかる。
これが魔力が減るってことだろう。
30%
50%
少しずつ心臓に構成されていく魔力転換炉
70%
あともう少し
そしてついに・・・100%
ようやく魔力転換炉を創造できた。
集中していたため時間はどれくらい経ったかわからないが三奈羽が寝ているのを見ると十分以上はかかっている。
「これで、魔法が使えるかもしれない」
僕は期待に胸を踊らせさっきの本に書いていた初級魔法を発動する。
「流れ落ちしは生命を育みし命の源 水」
呪文を唱えると手のひらから水が流れ出てきた。
そのまま水は床に零れて木で出来た床を湿らせた。
「やった、魔法が使えた」
喜びのあまり大声を出しそうになるが三奈羽が起きてしまうので声を押さえた。
『ミカ、君って今物凄いことしたよ自覚ある?』
黄泉の声がした。
「魔法が発動できた。これで戦闘のバリエーションが増える」
『はぁ、男性で魔法を使えたのはミカが初めてだよ私もビックリだよこんなこと今まで一度もなかったんだよ』
黄泉が興奮と呆れているのかその中間ほどの感じで僕に声をかけてくる。
「よし、明日からもっと他のことも勉強して魔法も覚えて黄泉を使えるように訓練しないと」
『体、壊さないようにしてよね』
「わかってるよ、大丈夫だって。本当はもっと練習したいけどもう遅いし明日にするね」
『おやすみ』
「おやすみ、黄泉」
僕は魔法が使えた興奮も覚めないなか眠りについた。
翌日、目が覚めた僕は昨日のことを思いだし興奮していた。
しかし、昨日読もうと思っていた他の本を読んでいなかったのを思いだし朝食までの間に読んでおこうと思い本を読んだ。
僕が読む本はこの世界の常識だ。
この世界は五つの国が存在している
人間が住む ユーデル王国 ハイロア皇国
獣人が住む ベルゲル獣国
亜人が住む リルミナ大国
竜人が住む ドラグナ帝国
魔人が住む ノートル魔国
この五つの国が現在存在している。
今は五つの国共に協力関係ではあるが昔は戦争が日常茶飯事であった。
それを止めたのは十一代目勇者の久留義だ。
彼は魔獣を討伐するためにニホンという国から召喚された勇者で聖剣を使って数多の魔獣を葬った勇者だ。
勇者はユーデル王国に召喚され国のために戦争にも参加していたが命を散らしていく人を見るたびに心を痛め
ついに決心し五つの国が協力関係になるために力を尽くした。
最初は誰もが彼の言っていることに耳を貸さなかったが時間をかけると共にそれは実現された。
そこからはすぐだった。
あっという間に五つの国がてを取り合う素晴らしい世界が誕生した。
奴隷制度
十年ちょっと前までは奴隷制度が存在し、多くの者が奴隷とされていた。
主に亜人や縦陣が奴隷にされることが多かった。
亜人族と獣人族には容姿が優れたものが多かったためである。
人間も奴隷にされることがあったが亜人や獣人の方が戦闘面でも魔法のエキスパートであったり、身体能力が高かったため
人間はあまり奴隷にはされなかった。
竜人は種族スキルである竜化で奴隷にしようとしたものを追い払ったため誰も奴隷にはされなかった。
魔人族も同様である。
しかし、奴隷制度は五つの国が協力関係であるなかに不必要なものであったため
王族が集まり、長い年月をかけ奴隷にされたものを完全に解放することが出来た。
今では奴隷が発覚した場合鉱山へ送られ死ぬまで働かせられる。
これは一種の奴隷と考えても間違えではないが自分がしたことと同じことを味合わせるという効果的な刑である。
この世界は男性が少なく女性が多く誕生する。
理由は様々であるが世間では女尊男卑の考えが染み付いている場合がある。
戦闘面でも男性は魔法が使えなくほとんどの男性は男子力を鍛えて貴族の女性と結婚したりする。
男子力とは家事、料理、裁縫、その他の四つがあり、ステータスとして表示される。
男子力は女性にも表示される。
男子力が高い人物は王族などからも求婚され男性にとっては自分の人生に大切な技能である。
しかし、異世界から召喚されたものの世界は私たちの世界とは大きく異なり男子力なるものは女子力と呼ばれているらしい。
男性の方が女性よりも強い権力を持ち、我々の世界とは違い魔法がなく魔獣なども存在しない。
人間しかいないらしい、もしかしたら他の種族もいたのではないかと考えられるが人間しか見られない。
戦争なるものはあるが平和な世界。素晴らしい世界だと聞いた。
つまり、異世界は我々の世界とはほとんど真逆の世界と言ってもいい。
異世界の男性は男子力が低くいが戦闘能力は普通の女性より圧倒的に高い。
勇者などがその例である。
彼らは男子力が低かったが戦闘能力は非常に高かった。
剣を振るえば大地と海を割り山を崩壊させる。
聖剣を振るえばマグマが吹き出し空が落ちてくるなどの例えがあるほど戦闘能力が高い。
強い男性が好きな方には持ってこいの男性ではあるがやはり男子力が高い男性の方が結婚をするにはいい。
異世界の男性で強くて男子力が高い方はいないのだろうか、もし居たら確実に多くの女性に求婚されるであろう。
もしそんなおとぎ話のような男性と出会えば必ず堕とすべし
今時結婚もすることができずに死んでいく女性が多い。
ならばその人たちの分まで自分が幸せになりましょう。
素晴らしい旦那様を見つけて幸せな家庭を築く。
僕はそっと本を閉じた。
『なんじゃこりゃ、いや聞いてたからある程度心の準備はできていたけど、まさかここまでだったとは』
僕は一気に自分の貞操の心配をした。
要するにこの肉食動物が蔓延るジャングルにウサギが放り出されたようなもんだ。
僕は考え事をしていると朝食に呼ばれた。
三奈羽はまだ寝ている。
「おーい、起きろ三奈羽朝食だよ」
僕は三奈羽をそっと揺すり起こすと目を少し開けた。
「おはよう、もう朝ぁ?」
呂律が回っていない。
寝ぼけているのだろう。そして三奈羽は布団を株ってもう一度寝る。
「こら、起きろー」
大声を出しながら布団を奪う。
「あぁ、私の最終防衛兵器がぁ」
「そんなこと言ってないで早く顔を洗って来なさい」
「もぉう、わかったよぉ」
三奈羽は渋々うなずくとベッドから出て顔を洗いにいった。
感想待ってます。




