↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

5.由希子さんについて

5.由希子さんについて


 実は由希子さんのことを僕はよく知らない。

 どこで生まれ、どこで育ったのか。

 年齢がいくつなのかも正確には知らない。

 見た感じは僕より少し年上。二十代半ばではないだろうか。

 身長も僕と大きく変わらないから、160センチ代後半だろう。女性にしてはやや背が高めだ。

 少しだけ茶色に染めたショートボブの髪型は初めてあったときから今でも変わらない。

 そう。初めてあったとき。あのときのことは忘れない。

 兄貴と親父とお袋が確かに死んでいるのを確認してから、僕は家を出た。目指したのは裏山の中腹にある遊園地跡だった。長い坂道を自転車で登り切るのは現実的で無いと判断し、生まれて初めて僕は無免許運転という犯罪に手を染めた。

 乗ったのは原チャリだ。

 クソ兄が随分昔にバイトして買ったものだった。

 潰れた遊園地に夜中ひとりで入り込むのは結構なスリルだ。

 満月で、夜とは思えない程明るかった。

 もしもあの日、夜空に月が輝いていなければ、懐中電灯のひとつも用意していなかった僕は、あまりの視界の悪さにそれ以上進むのを諦めていたかもしれない。そうなると由希子さんと出会えなかったわけで。

 まあ「もしも」を今さら考えても仕方ないだろう。

 事実は、原チャリを降りて月明かりを頼りに廃遊園地内を進んだ僕が、三十分後にカゴが外れた観覧車の前で、自分の首に包丁を突き刺しぶっ倒れたということだ。

 そして由希子さんに助けられた。それ以来、由希子さんは僕の家に住んでいる。家族四人を一度に失った僕を心配して、面倒をみてくれている。

 由希子さんは優しい人だ。

 人間とは思えないほどの優しさを持っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。