敗者同士の会話と観察してた神
「久子ちゃんじゃないか。どうしたのボロボロで?」
そんな友達の言葉に笑って、俺は言う。
「負けたんだよ。言わせんな。テメーも負けたんだろ? なんでそんなに元気なんだよ? 完全に死んだんだと思ってたぜ?」
「死んだよ? 神の力も失ったし。もうすぐ存在も消える。そんな今だからこそ、騙らずに本当の事を語れるね」
「そうかよ。話せよ冴木理愛。テメーの最後の語りを」
「じゃあ語る。悪役のふりばっかりで疲れちゃったし。馬鹿で愚かで頭おかしくて大嫌いだけど、それでも大好きな弟の話と私の話をさ」
「はなせはなせ。最後だから最後まで聞いてやる」
笑って俺は急かす。
「まず簡単に言うよ。力を与えつつ弟を姉離れさせたかったんだ。姉を殺してその姉を想いだけで神にまで押し上げちゃうイカれた弟を」
「テメエは力を持ってたんじゃなく与えられていたのか。でも、一つは絶対に失敗したと思うけどな。そんな姉想いな弟を更生させんのは無理だろ。てかお前ら姉弟はこじらせすぎ。好きだけど殺したいほど嫌い。嫌いだけど死ぬほど大好きってさ。馬鹿なの? 死ぬの?」
「本当に死んじゃったからそう言わないでよ。まあね。全ては弟の為だった。化物な神に手を借りたのも、全能の神を殺したのも、なにもかも。君を呼んだのも」
「あいつに玩具にされそうになっても俺ならなんとかしてくれるってか? 全能の神の力を奪ったのは保険だな」
「そう。最終的にどんなにこじれても久子ちゃんならなんとかしてくれるからさ。保険は多い方がいいでしょ? あんな化物な神に力を借りたんだからさ」
「お前は俺を買い被りすぎ! 無理だろあんな化物! 戦ってみてそう感じたわ!」
「ははは! でも彼女は帰ってくれたみたいじゃない? 君との戦いは楽しかったみたいだね。久子ちゃん保険は安心安全だ!」
「ハァ……ループの世界を創造して、一部の主人公の精神ぶち壊して、全能の神を殺してさ。それの理由が弟の為ってなんだよ」
「これは目的のついでだけど私を殺させる為でもあるけどね。疲れたんだよ私は。望んで神様になったわけじゃないし。最期に大好きな弟に殺されたんだから、私の人生は満ち足りていたのにさ」
「どうせついでに死ぬならまた弟にってか。変態が」
「弟に力を与える為に、絶対に私は弟に殺されなくちゃいけなかったし」
「そうそう。なんで力を与えるんだよ?」
「選ばれた人間だと思ってる弟を、本当に選ばれた主人公にしたくてね。大体、姉を神に出来る力を持ってるのに一般人はおかしいでしょ? 私が死んで神になったせいで主人公的なポジションを奪っちゃったし」
「ああ。お前ら姉弟を苦しめてた奴に復讐したんだよなお前。復讐劇の主人公になっちまってたのか。一つの世界に主人公は普通一人だからな」
「そう。一般人な弟を主人公にするために、主人公だらけの世界で学んでもらう。そしてその世界の主人公になってもらう。私は天才だね」
「一度ミスって世界崩壊させてるけどな。んで、一般人だらけの世界にして主人公にさせやすくした訳か。あーあ。語らせるんじゃなかったよ。しょうもねえ……」
「ふふ。ご静聴ありがとうございました。会話してたけど。そろそろ消えるみたい……もう少し語りたかったんだけどな。久子ちゃん。一つだけお願いがあるんだけど」
「どうせ。弟を頼むとかだろ? 任せろ。だから私の質問とお願いを一つだけ答えた後に叶えろ」
「察するのがすごいね。久子ちゃん。いいよ。叶えて貰うわけだし、こちらも答えて叶えよう」
「なんで長いループの世界にしたんだ? 意味なくね? 時間も飛ばされる時間帯に干渉に抗った俺以外は設定されてたみたいだし。あの化物の言ってたけどさっさと目的達成させる方向にするべきなのにループなんて意味わからんややこしい世界になんでしたんだよ?」
「それは矛盾した願望かな。私は何だかんだ言っても弟と一緒にずっとずっといたかったんだ。姉として殺されるのはけっこう痛いから久子ちゃんに譲ったけどね」
こいつ……まあ、最期だからな
「おいテメエ。だけど、最後だし許してやろう。俺は納得したしさっさと願いも言うわ。久子ちゃんって呼ぶんじゃねえ。お前には俺の本名教えただろうが。怒るぞ?」
「ごめんね。なんか和風な顔立ちと格好なのに本名は西洋風なんだもん。呼びづらくてね」
「いいから言え。友達にしか教えねえし呼ばせねえんだから」
「うん。ヒルデリア。くれぐれも弟の事を頼むよ。じゃあね」
「ああ。じゃあな!」
別れを言って狙いすましたかのように友達は消えた。
ボロボロだし友達にも二度と会えなくなったし、今日はかなり飲んでもいい日だろう。動けるようになったら帰って一杯やる。そう決めた。
「全知全能の神。どうやら解決したみたいですよ」
「ああ知ってる。神の核兵器使えないな」
「それに新たな神が誕生したようです」
「おお! 純粋な神? それとも人間からの成り上がり?」
「成り上がりです」
「さっさとくたばれよ。なんだよ。まったく」
「相変わらずですね。全知全能の神」
「ハッどんなに立場が上でも成り上がりは絶対に認めないからな。我は」
「下位の神様なのにすごいプライドですね。最高です」
「腐っても全知全能の神だからな。おい、誰が腐ってんじゃボケ!」
「腐ってるなんて一言も言ってませんけど?」
「ノリツッコミというやつだ。で、どんな奴なんだ?」
「冴木竜也という名前で、階位は中位に属されました」
「おおい! カス子と同じで軽々と我を抜かす成り上がりじゃないか! しかも我に無礼な言葉を浴びせた一般人な奴じゃなかった?」
「ですね。それから神の資格と主人公の資格。両方を手に入れたみたいですよ」
「これだから身の丈を知らぬ人間は嫌いなんだ」
「私はこの人間には感謝がありますけどね」
「なんでだ!? 接点ないだろ!?」
「私の世界の主人公がバワーアップしまして。干渉に対する抵抗をかなり強化したみたいです」
「……お前の世界じゃ意味ないだろ」
「でも、パワーアップは事実ですので。感謝です」
「そうかよ! カス子が絡むとろくな事にならねえな!」
「全知全能の神は予想外を嫌いますからね」
「まあよいわ! 我は一つ進化の可能性を残しておるからな! これで、上位の神に名を連ねたら成り上がり共をいじめてくれるわ!」
「さすがです。最上位と言わないクオリティさすがです」
「うるさい!!」




