実験の終了。得たもの
人が神の世界と呼ぶ場所の一角で、二柱の神が話していた。
「偽善と騙りの神よ。君の作った世界。読ませてもらったよ」
「読まれる事のない物語が読まれる。感謝と賞賛しかありませんね……ぜひ感想をお願いします。全能の神よ」
「……君の力がすごい事は分かったね。一つの物語の主人公となりえる人物達を一つの世界へ閉じ込める。意図はわからないが」
「全能の神に言われると、すごいという言葉は皮肉ですね。でも残念ながら失敗したんですよね。もっと独走する人が多いと思ったんですけどね」
「どういう事だ?」
「うーん。主人公同士を集めて、少しずつ記憶とか性格をいじって狂わせて、おかしい世界へぶちこんだら皆が勝手に突っ走ると思ったんですよ。そしたら普通に生活しだしてね。残念ですよ私は。もう少し手に入ると思ったんですけどね。少しずつしか頭の中を改変させてくれない主人公達が悪いのかもしれませんが。いやはや人の可能性の極みである主人公は本当に思い通りに動いてくれないですね」
「君は何を言っているんだ?」
「そうですね。誰にも行動を覗かれないように行動してたんですけど。気づかれました。神の資格を持ってる人間を複数人呼んだのがそもそもの間違いでしたよ。もう少し続けたかった。想定の範囲内でしたけどね」
「ふむ。気付かれたという事は今の君の立場は分かってるね? 面白いとは思ったが、別の神が管轄する世界の人物を自分の世界に呼び込むのは違法であり禁忌だ。君から神の資格を剥奪しようと思っている」
「ですよね。あ、最後に一つ語らせてもらっていいですか?」
「……なんだね。君の最期を聞いてやろう」
「だから意図ですよ。そんな世界を創造した意図です。それはですね……」
「なんだね」
「馬鹿な神をぶち壊してやろうと思ったんだよ!」
「!? グバッ! バカな! なんだ力が入らん!」
「油断しすぎなんだよバーカ! 全能の神も大したことないな! はははははっ! 後、相手を見下すときの私に似て、しゃべり方が偉そうなんだよ! 今度からきをつけてくれたまえよ……今度なんてお前にないけどな!」
「……」
「あーそうだそうだ。意図ね。いきなり言われても分かんないよね。油断する馬鹿なお前にはなるべく短く簡単にまとめて語ってやるよ」
「……」
「可能性を秘めた主人公にはとんでもスキルがあったりしまーす。主人公のテンプレだね。その力を奪うために自分の世界に呼びます。でも一般人と違って主人公は強力な意思と精神力を持っているので簡単に奪わせてくれません。じゃあどうすると思う?」
「……」
「まず、善の性質を持った奴なら人を殺させて罪悪感を持たせる。意思が弱くなる。奪える。じゃあ悪いやつは? あらゆる拷問をかけて廃人にして奪いまーす。同時にそれをやるシステムをつくってみました。私は天才だ! 呼び出した奴を片っ端から拷問したかったけどね! 自分の世界だと神様は完全な干渉はできないからさ! 他人の世界にちょっかいだす神様には全力で反撃出来るわけだけど。人間には干渉できないなんてめんどいルールだよね?」
「……」
「んで他にも、殺された場合の遺書を書かせたりとかもしていたのだけども。例え善の主人公と呼ばれる存在でも殺した相手を許さないって意見が多数でさ。偽善の神としての私はその負の感情がご褒美でした! こうして力を得ていった私です」
「……」
「でも、もう少し粘ってみようと思った時に、とあるパン屋さんに止められちゃってねー。恐怖でしたねー。ポーカーフェイスで私はしれっとしてたけどさ。洗脳を破っていきなり話しかけてきたんだよ!? 信じられる!? ルールブレイカーな久子ちゃんも洗脳を緩くするたった一言で正気に戻るし! こりゃもうすぐ破綻すると思ってさ! 主人公の中で、たった一人の間違って連れてきた一般人を観察しながら久子ちゃんをいじって遊ぼうと思ってたのに!」
「……」
「あ、長くなってしまったね。短く話すというのは嘘なんだ。騙して悪かったね」
「……」
「死んでるね。一人の主人公から拝借した『神殺し』はすごい力だ。全能の力も、『神降ろし』という能力で奪えたみたいだし。この二つだけでも計画は成功と言えるね。前より好き勝手に出来る。あはははは!」
その場に一柱になった神は笑う。
「さあて、次は『全能』の力の名の下に、新たな世界を構築しよう。せいぜい足掻いて、もがいて、苦しんで、隣人を騙して富を得て、偽善を為すがいい! それが私の力になるのだから! 特等席でみせてもらうよ! さあ騙ろう! 騙って騙って騙り尽くそう!」




