表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も本当の俺を知らない〜人気バンド天才キーボディストは裏の大富豪〜  作者: にんじんさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/22

第21日常のカウントダウン


 ボスの断末魔が響き渡った統制室に、間もなくして赤と青の激しいサイレンの光が差し込んできた。

 Jが事前に手配していた国際警察の特殊部隊が、重武装で一斉にビルへと突入してきたのだ。床に転がるボッコボコにされたテロリストたちを見て、百戦錬磨の警察官たちが一瞬で硬直した。


「波瑠様、お怪我はありませんか!」


 非常口の向こうから、アリスカの身柄を完璧に確保した男装の彼女が、キャップを回しながら戻ってきた。そのすぐ後ろからは、警察の保護班に肩を貸された初老の男――行方不明になっていた、メガ企業のローレンス社長が姿を現す。


「ローレンス……無事だったか」

 俺が声をかけると、ローレンス社長は痛々しい姿のまま、俺の前に崩れ落ちるようにして両膝をついた。


「波瑠様……筆頭株主であるあなた様を、私の不徳の致すところでこのような大事件に巻き込んでしまい……本当に、本当に申し訳ありませんでした……!」


 世界的な巨大企業のトップが、18歳の高校生の前に額を床に擦りつけて涙を流し、必死に謝罪している。警察の幹部たちや、我がグループのクラウス、ヘンリックがそれを見守る中、俺は小さく息を吐いてローレンスの肩に手を置いた。


「もういい、ローレンス。お前が最後にあのデータをアリスカ(ネズミ)に盗まれる前に俺に託そうとした、その忠誠心は本物だった。事情は全て把握している。お前を裏で脅迫していたテロ組織も、お前の秘書だったアリスカも、全て俺とJで完全に片付けた」


「あ、ありがとうございます……!」


 俺は立ち上がり、Jに視線を送った。

「J、後始末の陣頭指揮はお前に任せる。7200億の損失処理、負傷した現地職員への通常の三倍の補償手続き、それからローレンスの社長職への復帰に関する法的処置。全て最速で終わらせてくれ」


「御意。波瑠社長代理の指示通り、ミリ秒単位で執行いたします」

 Jがいつも通りの洗練された一礼を向けた。


 世界経済を揺るがした大事件の戦後処理。それを数言の命令だけで完璧に終わらせ、俺は統制室の時計にふと目をやった。


 東欧の現地時間、深夜四時。

 脳内で時差を逆算し、日本の現在時刻と、 SKYTOON のスケジュールを頭の中に思い浮かべた、まさにその瞬間。

 俺の背筋に、テロ組織の銃口を向けられた時以上の、本当の冷や汗がドッと噴き出した。


(――待て。今日、何曜日だ……!?)


 スマホの画面を叩きつけるように起動する。画面に表示された日本の日付と、久から送られていたLINEの通知が、俺の網膜を激しく突き刺した。


【久:おい波瑠!マスコミはなんか黒服の男たちが全員追い払ってくれたけど!それより明日ライブ本番だぞ!早く日本に戻ってこい!!】


「あ……ライブ、やばっ……!!!」


 思わず、世界を裏から牛耳る支配者トップとしての威厳をかなぐり捨てて、素の高校生キーボーディストの声で叫んでしまった。

 Jやアリスカを捕まえた彼女、最高幹部たちが一斉にポカーンと俺を見る。


「J! プライベートジェットのエンジンを今すぐ最大戦速で回せ! 日本の管制塔をもう一度力技で黙らせろ! あと二十四時間以内に日本の上空へ入らないと、俺、バンドのクビがかかってるんだ……!」


「かしこまりました。……国際法を三回ほど無視して、マッハの限界を超えさせましょう」

 Jが不敵に笑い、即座にコンソールへと飛びつく。


 世界を救う裏の戦争はこれにて完全落着。

 だが、俺には何よりも絶対に遅れてはならない、あいつらとの『夢のステージ』が待っている。ワイシャツの煤を払うのももどかしく、俺は日本のスタジオへ向かって、再び東欧の滑走路へと全速力で駆け出した。


■ あとがき&ちょっとした用語解説


第21話をお読みいただきありがとうございます!

評価とブックマークをおねがいします。

「日本帰国・メンバーとの再会編」がスタートします!お楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ