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死に戻ったら私を殺した魔術師さんに両想いを強要されています!  作者: 華宮ルキ(扇レンナ)
第1章 魔術師さんからは死に戻っても逃げられないようです
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第3話

 アニーが私に返したのは、言葉ではなく大きなため息だった。


 全身からあきれたという空気を出し、彼女はエメラルド色の瞳で私を見つめる。


「馬鹿をおっしゃらないでください。私はここに居続けますよ」


 当然のように言ってくれるのは嬉しいけど、今後のことを考えるとやっぱりよそに行ったほうがいいと思う。


 ――という私の気持ちを読み取ってか、アニーは私の額を軽く小突いた。


「私はフィロメネお嬢さまが心配なのですよ」

「それって、私のせい?」

「言い方を変えれば、そういうことになりますかね」


 あまりに遠慮のない物言いに、ちょっとだけカチンとくる。


 しかし、彼女の言葉を否定することはできない。


 前回は、恨みを買って刺されて亡くなっているわけだし。


「今のフィロメネお嬢さまを見ていると、不安でいっぱいなのです」

「うぅ」


 まぁ、玉の輿を目指して悪女ムーブをしていたわけだし、彼女の心配ももっともだ。


 ……これ以上言っても、現段階では無駄だろう。大人しく引き下がるべきだと思う。


「じゃあ、私が心配をかけなくなったら、アニーは好きに生きることができるのね?」


 言葉にしたあと、やってしまったと後悔した。


 だって、これじゃあ私がアニーのことを邪魔に思っている風に受け取られてもおかしくないもの。


 私の不安をよそに、アニーは自身の唇に指をあてる。


「そうですねぇ。その通りですが、フィロメネお嬢さまを見ていると、そんな日は一生来ない気もします」


 彼女が傷ついていないことには安心したけど、そういわれるとなんだか腹が立つ。


 私が落ち着くことは一生ないって言われているに等しいんだもの!


「その日は絶対に来るわよ! 今に見ていなさい!」

「本当ですかねぇ」


 アニーの言葉に、やっぱりやっぱり腹が立つ。けど、同じくらい嬉しくもある。


 だって、前回ではこんな風にアニーと軽口をたたくこともいつの間にかなくなっていた。なつかしさが胸いっぱいに広がって――涙があふれた。


「あ、あれ?」


 どうして、私は泣いているの?


 涙の理由がわからないまま、慌てて涙を手で拭う。


 突然泣き始めた私にアニーはうろたえるえことなく、静かにレースのハンカチを差し出してくれた。


「まったく、フィロメネお嬢さまはいつまで経っても泣き虫なんですから……」


 ハンカチを受け取った私をアニーは困ったような表情で見つめていた。でも、その瞳には隠し切れないほどの心配が宿っていて、心が温かくなる。


(私はアニーの気持ちも踏みにじっていたんだ)


 こんなに私のことを心配して、大切に思ってくれる侍女がいた。


 彼女もまた、私の行動に苦言を呈していた。なのに、私はその苦言を無視して、邪険に扱って……。


(ご、めん、なさい)


 謝っても許されることじゃないとわかっている。


(ごめんなさい。アニー、もっとあなたの言葉を、聞けばよかった)


 だけど、今の私にできることは心の中でひたすら謝罪をすることだけ。


「フィロメネお嬢さま。今ならまだ、大丈夫ですよ」


 彼女の言葉の意味が、痛いほどわかる。


 今ならまだやり直せる。命がある限り、やり直せるんだ。


「わ、たし、もう今までみたいな行動はしないわ……」

「はい」

「もっと別の方法で、この家を救うから」


 私の決意をアニーは黙って聞いてくれた。


 優しい手の感触は、きっと未来永劫忘れない。いや、忘れたくない。


 たとえ死んでも――忘れない。

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