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39. 【マンダン地下五階⑥】戦いの幕を下ろしましょう

 私がルカ様に説明を求めると、彼は説明をしてくれた。


 ざっとまとめると、こんな感じ。


 まず、私に呼ばれたルカ様は、“星の盾(スターライトシールド)”を張ってイカから私たちを守り、更に“癒やし(ヒール)”を使って私たち全員を回復させた。


 そして、水属性の広範囲魔法を使い、海もどきの水に激しい流れをつけて、イカごとぶん回した。それによって、遠心力で地下五階の真ん中が水のない空間になる。


 最後に、空間魔法を使って私たちを“星の盾(スターライトシールド)”ごと浮かせたという。


 ⋯⋯色々と、すごいことをやっているのでは? この神様は、どんな魔法も使えると言っていたけれど、本当だったんだ。広範囲魔法まで使えるのは、神様だから? それとも、彼の実力?


 私は、ルカ様のやったことが凄すぎて、暫し言葉を失っていた。でも、ライムとフィアルはそこまで驚いていなかった。多分、私が起きる前にルカ様から説明を受けていたんだろうな。フィアルはともかく、いつも奇声を上げる筈のライムが静かにしているっていうのはそういうことなんだろう。


 まあ、神様なら、このくらい楽にできるよね。うん、そう思うことにしよう。今までも、それでやり過ごしてきたんだし。


 ⋯⋯おっと。驚きのせいで、一番大事なことをルカ様に伝えていなかった。まずは何よりも⋯⋯。


「ルカ様、色々と思うことはありますが、それは一旦置いておきますね。まずは、私のことを⋯⋯私たちのことを、助けてくださり、ありがとうございました! とても、助かりましたし、本当に感謝しています。そして、忙しい中、呼びつけてしまい、申し訳ありませんでした!」


「ううん、大丈夫だよ。確かに突然のことで驚いたけど、でも、僕にとってはリズムになにかあった方が嫌だから」


 なんということだ! ルカ様が優しすぎる! 本当に神だわ、このお方は。突然呼び出したこちらの心配もしてくれるって、本当に優しい。彼のその言葉に、胸が温かくなる。


「ルカ様は、とっても優しい方ですね! そんな方と巡り会えた私は幸せ者です!」


 私は、思ったことをそのまま彼に伝えた。すると、彼は一瞬目をパチパチとさせた後、急に赤くなった。


 口元に手を当てながら、彼はいつもよりも熱さを孕んだ瞳で私に言う。


「〜〜っ、僕の方こそ⋯⋯、リズムみたいに明るい人に出会えて、幸せだよ」


 そう言って、彼は優しく微笑んだ。


 彼の、今までに見たことがない優しい微笑みを見て、私の心臓が跳ねる。


 う、わ〜〜!?!? なんか、すごい破壊力!! 顔が良いから表情や言葉一つでもこんなに凄まじい威力を発揮するのか!? なんか、なんか⋯⋯っ。やばい〜〜っ!! 


 私とルカ様がお互いに赤くなっていると、さっきまでフィアルとこれからのことについて話し合っていたライムが、割り込んできた。


「ちょっ、何二人揃って赤くなってるんですか!? まだイカとの戦いは終わっていませんよ!! 油断しないでくださいっ!!」


 真剣に戦いの相談をしていたライムだから、普通に話している私とルカ様に苛立ちを覚えたのかもしれない。不機嫌オーラを纏っているのが、目に見える。


「その、ライムも、ありがとう。それに⋯⋯、ごめんね。私が、ダンジョンに行きたいって言って、ライムたちを連れてきちゃったせいで、危ない目に遭ったから」


 私はライムにお礼と一緒に謝罪を伝える。すると、ライムはまだ少し不機嫌オーラを纏いながらも、苦笑いをして言った。


「いいえ。そんな、謝らないでください。今回のイカとの戦いは、僕にとって、ただ危ないだけの戦いっていうわけではありませんし。得られたものは、たくさんあります。何より、一番の発見は、目標ができたことです」


「目標?」


「はい。『リズムさんに安心してもらえるくらいに強くなる』。それが、今の僕の目標です」


 そう言って、ライムは少し照れたように微笑んだ。


 ライムが、いつもは見せない表情を見せてきたせいか、私の心臓はまた跳ねた。


 わぁぁあ!?!? こっちもやばい!! ライム、いつもは可愛いのに⋯⋯あ、いや、最近は格好良いけど! でも、今のはいつもの比じゃない!! 表情もセリフも、もう、本当に⋯⋯すごい〜っ!!


 ルカ様、ライムと、二人のいつもと違う一面を見せられて、私の心臓はさっきから暴れっぱなしだ。どういうこと!? 本当に、二人とも、どういうこと!? 


 二人の言葉自体は、めちゃくちゃ嬉しい。けど、それだけじゃないっていうか⋯⋯。なんか、今まで味わったことがない、変な気持ちになる。なんだろう、これ⋯⋯?


「〜〜っ、えっと、その、ありがとう。私も、ライムたちに頼ってもらえるように、強くなりたいって思うよ」


「っ! は、はい⋯⋯! その、ありがとうございます⋯⋯っ!」


 私、絶対に今、顔が赤い。さっきと同じくらいに。今の言葉だって、なんとか言えたっていうレベルだもん。ルカ様に続き、ライムにまで謎の攻撃を食らった私。ライフは、もうゼロに近い。


 三人揃って赤くなる私たちを、フィアルは何故か温かい目で見守っている。なんか、うんうん頷いてるし! フィアルは、まるで、全てを知っているかのような表情だ。


「ふぃ、フィアルも、ありがとう。それに、ごめ⋯⋯」


「おっと、この先はさっき聞いたからもういいぞ! そんな、リズムが謝るようなことじゃねぇし。俺が、楽しそうだと思ったから着いてきただけだ!」


「フィアル⋯⋯。本当に、ありがとう」


 フィアルも、優しいな。危ない目に遭わせたことには変わりないのに。私のせいじゃないって、言ってくれている。みんなが優しすぎて、その言葉に甘えたくなってしまう。でも、ダメだ。これからは、みんなを巻き込まないようにしないと。


「取り敢えず、イカを倒しちゃおう」


 ルカ様が、はっとしたように言った。もう、彼の顔は赤くない。


 ルカ様に言われて、私もはっとした。ごめん、イカ。あなたの存在を、忘れていたよ。


「ここからなら、絶対に安全だから。一気に攻撃しちゃっていいよ」


 ルカ様に言われた通り、私たちは、それぞれイカに攻撃をする。


 イカの方も残りのライフが少なかったのか、私たちがたった五発、魔法を当てただけで倒れた。勿論、グロい倒れ方ね。そして、私たちを囲んでいた水が、すぐにパッと消える。


「⋯⋯勝った?」


「⋯⋯はい、多分?」


「俺たちの勝ちだ〜!」


 私とライムは、あんなに苦戦していたイカに、ちょっと攻撃をしただけで勝てた事実がうまく呑み込めない。でも、フィアルはすんなり呑み込めたようで、一番に喜んでいた。


 え、本当に、勝ったの⋯⋯? イカ、こんなに弱かったっけ? ルカ様が数種類、魔法を使ってくれたおかげなのかな?


「おめでとう! このダンジョンは攻略完了だね!」


 ルカ様も“星の盾(スターライトシールド)”を解除して、私たちを地面に下ろしてから、勝利を祝ってくれた。


「本当に、勝ったんだ⋯⋯! 嬉しい!」


 私は、ようやく勝ったという事実を実感できた。ライムも同じようで、達成感溢れる表情で「やりましたね」と言っている。勿論フィアルは、最初から喜んでいる。


「あ、ダンジョンのお宝が出てきたよ。ほら、上を見て」


 ルカ様にそう言われ、上を見てみる。すると、なんということだろう、上から、何か光るものが落ちてきているではないか!? 何、あれ? ルカ様はダンジョンのお宝って言っていたけど⋯⋯。


「あれは、経験値⋯⋯でしょうか」


「あ、銀貨もあるぞ!」


「本当だ。木の実みたいなのもあるよ」


 お宝は、ゆっくりと私たちの手に落ちてきた。これらは、どんなものなんだろう⋯⋯?


 ルカ様に聞くと、全て説明してくれた。⋯⋯ルカ様って、フィール星のこと、なんでも知ってるんだね。すごいわ⋯⋯。神様だから?


 私は、落ちてきたお宝と、ルカ様の説明をまとめた。


 まず、経験値。これは、その名の通り、経験値が貰えたってこと。このダンジョンの場合は、「300EP」貰える。


 次に、木の実。このダンジョンの場合は、食べると経験値が早く溜まるようになる、という効果がつく、“経験の実”が貰える。経験の実は、ミカンのような見た目をしている。味はない。無味。できれば美味しくしてほしかったなぁ。


 そして、木の実二つ目。このダンジョンでは、魔法回復薬(マジックポーション)の材料になるという、“魔法回復の実”が貰える。魔法回復の実は、林檎のような見た目をしている。こちらも味はない。無味。ダンジョンで貰える実って、味がないのかな⋯⋯。


 他にも、中銀貨一枚、小銀貨五枚、大銅貨九枚と、日本円に換算すると約一万五千九百円、お金が貰えた。これはありがたい。ライムはお金を持っているけど、私は今まで一文無しだったから。


 そういえば、フィアルって、お金持ってるのかな⋯⋯? まあ、普通のヒトはみんな持っているだろうから、きっとフィアルも持っているよね。


「じゃあ、僕はもう帰るね。帰り方は、僕があげた知識か、ライムたちに聞いて。また、今夜」


「はい。ありがとうございました!」


 ルカ様は、微笑んで帰っていった。彼が来てくれて、本当に助かった。彼のおかげで、今、こうして生きていられるんだもん。感謝の気持ちでいっぱいです。


 その気持ちは勿論、ライムとフィアルも一緒で。彼らも、ルカ様にお礼を伝えていた。


「それでは、帰りましょうか」


「うん!」


「おう!」


 ライムの言葉に、私とフィアルは元気よく頷く。そうして、私たちはマンダンから出るべく歩き出した。

フィアルはきちんとお金を持っています。


お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/

次回更新予定は10/21(水)です。m(_ _)m

次回予告:マンダンから帰った後の話。リズムたちのレベルはどうなったのか⋯⋯!?(/ω・\)チラッ

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