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37. 【マンダン地下五階④(後半)】油断は禁物

 もう少しでイカを倒せる、私たちの勝利だ! なんて、思っていたのが悪いのだろう。


 なんと、イカは蔓(・)を(・)割(・)っ(・)て(・)、自分自身を拘束から解放したのだ。


 そして、私たちが対応する前に、こちらに向かって再び氷の魔法で攻撃をしてきた。


「え⋯⋯⋯⋯」


「なぜ⋯⋯!?」


「マジかよ⋯⋯」


 みんな、突然のことに呆然とする。


 え、え――なんで? 失敗した、の? どうして⋯⋯? どうして⋯⋯!?


 私は、イカが蔓から解放されたときのことを振り返る。


 あの時、聞こえた蔓(・)が(・)割(・)れ(・)る(・)音。普通、蔓が切れる時は割れる音なんてしない。ブチって言う音がする筈。


 それに、イカが解放された直後に見えた、煌めくもの。もしかして、あれは、氷⋯⋯? 


 イカは、私たちに見えないように、蔓を凍らせていた? ゆっくり、時間をかけて⋯⋯。それで、蔓が完全に凍りきった時、それを自身の魔法で割った。そういうことだろうか。


「イメージ、できなかった⋯⋯!」


 一瞬、絶望よりも、悔しさが込み上げた。でも、これは完全なる私の力不足。そこまでイメージをすることができなかった、私の落ち度だ。悔しがるよりも、どう改善していくのかを決めないと⋯⋯! 今は、悔しがっている場合じゃない!


「ここから、どうしますか? もう一度、リズムさんの“太蔓(シックバイン)”で――」


 ライムの言葉は、途中で切れた。なぜなら、急に話すことができなくなったから。それは、ライムだけではない。私も、フィアルも同様に。


 “星の盾(スターライトシールド)”の使用時間、終了。私たちは、冷たい海もどきに放り出された。


 え、え――? もう、そんな時間だったの⋯⋯? 


 海もどきに放り出された私たちの体は、無情にも深くへと沈んでいく。


 なんとか泳ごうと手足をバタバタさせるけれどそんなことでは到底水面に届かない。元々私は、泳ぎが得意な方ではなかった。


 もがけばもがくほど、体は下へ、下へと沈んでいく。水上の光が届かなくなっていく。周りが暗くなっていく。


 結局、いくら上へ行こうとしても、酸素が消費されただけだった。


 そして、水はとても冷たかった。私を嘲笑うかのように、冷たい水が底へと引きずり込んでいく。


 私は、絶望した。


 ――冷たい。寒い。息ができない。苦しい。


 こんな、海もどきに負けるの⋯⋯? 


 早く、なんとかしないと。イカに、攻撃されてしまう。


 私が一番心配なのは、自分の体ではない。


 一緒に海もどきに放り出された、ライムとフィアルだ。


 彼らは⋯⋯大丈夫かな? いや、大丈夫ではないだろうな。イカに攻撃されていないにしても、私と同じように寒さに苦しんでいるだろう。もしかして、このまま、私だけでなく、彼らも死んでしまう⋯⋯?


 それは、絶対に嫌だ。私のせいで、彼らが死んでしまうのは、嫌だよ⋯⋯! でも、今の私には、どうすることもできない。

 

 ――苦しい。冷たい。寒い。


 なのに、どうすることもできない。そんな無力な自分に腹が立ってくる。


 私が、二人を巻き込んだから。二人も、こんなに苦しい思いをしているのかな。


 ――心が苦しい。胸が痛い。


 もう、私のせいで誰かが死ぬのはいやだ。同じ過ちを繰り返したくないのに。


 ――ライム、フィアル、ごめんね。私が、広範囲魔法を成功させられなくて、ごめん。


 ――マンダンに、連れてきてしまって、ごめん。


 ――助けられなくて、ごめん。


 ――危険に晒してしまって、ごめん。ごめんなさい。


 あぁ、まだ、死にたくないな⋯⋯。もっと、楽しいことをして、もっと、いろんなことを経験して。もっと、生きていたいよ。


 こんなところで、負けたくない。


 ――お母さん、お父さん、あの日の約束、守れないかも。ごめんなさい。


 ⋯⋯私、さっきから謝ってばかりだな。苦しい、寒い⋯⋯。本当にもう、ダメなの⋯⋯? 嫌だ、嫌だよ。


 意識が朦朧とする中、私は何か助かる方法がないか考える。


 ⋯⋯ダメだ。頭が働かない。もう、本当にダメなんだな⋯⋯。諦めかけたその時、ふと、ある言葉を思い出した。


『これね、魔法を付与出来るだけでなく、困ったときやピンチのときに僕を呼ぶことができるんだ。方法は簡単。助けてって言うか叫べばいいんだ。いつでも駆けつけるから』


『危険な状況になったら遠慮せずに僕を呼んでね! 絶対に、無理はしないでね!? 約束だよ!!』


 それは、私がフィール星に転移してから、まだ一週間くらいしか経っていない頃。ルカ様が、杖に新しい機能を付けてくれたときに言ってくれたことだった。


 私は、最後の力を振り絞って、震える唇でなんとか言葉を紡ぐ。


「ルカさま、たすけて⋯⋯」


 そして、私の意識は飛んでいった。意識が飛ぶ直前、戸惑いながらも私を見た途端に顔面蒼白になった、ルカ様の姿を見られたことに安堵しながら。

「う〜ん。そろそろ、ここに雨を降らせないと不味いかな⋯⋯?」

⇧リズムに呼ばれる直前のルカの言葉。

ルカは真面目に仕事をしていました。突然呼ばれて駆けつけてみれば、そこはなんと海中! 戸惑うルカの気持ちがよくわかります。(^_^;)


お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/


「続きが読みたい!」「ここが好き!」と思ったら、ぜひ評価【★★★★★】、ブックマーク、リアクションボタンをポチッと押してください! 執筆の原動力になりますし、なにより作者が喜びます。(≧▽≦)


次回更新予定は10/14(水)です。m(_ _)m

次回予告:マンダン地下五階にて。リズムたちは助かるのか!? まあ、神様がいればなんとかなる筈ですけれども。(/ω・\)チラッ

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