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37. 【マンダン地下五階④(前半)】油断は禁物

 広範囲魔法を成功させる鍵は、イメージだ。


 どんなに魔法を操るのが上手でも、イメージをすることができなければ広範囲魔法を成功させることなどできない。


 自分はどのような魔法を使うのか。どんな効果をつけるのか。


 出現させる場所は? 範囲は? 


 見た目でさえも、イメージしなければならない。


 広範囲魔法が至難の業といわれているのは、そのイメージが難しいから。


 ただイメージをするだけでは、成功なんてできない。勿論、魔法の操作も大切だ。魔法を使うのが広範囲なだけに、魔法の操作の難しさも格段に上がる。


 第一にイメージ、第二に魔法操作。


 この二つをきっちりやらなければ、広範囲魔法は成功しない。


 だから、この難しい魔法を使用することができたライムとフィアルは本当にすごい。


 私も広範囲魔法の練習はしたことはあるが、イメージが甘かったり、具体的に想像できなかったりして失敗した。嫌になったため最近は練習していない。


 更に言うと、私は、今日、初めて広範囲魔法というものを見たのだ。成功したらこんな感じになるんだ〜っていうのを初めて知った。


 ⋯⋯これは、成功率相当低いと思いません? 絶望的だと思いますよね? 


 はい、その通り。私も成功する自信など毛頭ない。


 だが、やらねば私たちは無事ではいられない! 成功しなければ詰む。


 “星の盾(スターライトシールド)”の使用時間が終わって、冷たい海もどきの中で凍死か溺死するなんて嫌だから、絶対に成功させる! 


 私は、広範囲魔法のイメージを始める。


 まず、一番のテーマは蔓。イカを拘束できるくらいの、大きく、太く、頑丈で、寒さに強い蔓。それが、イカを拘束するシーンを、頭の中で想像する。


 ライムのように、当たったら凍る、みたいな効果は付けないようにしよう。


 効果を付けると、成功率が低くなってしまう。私に成功させる力なんてないだろうから、危険な挑戦はしないでおこう。


 こんな調子で、蔓の大きさ、太さ、色などを決めていく。蔓が出現する場所も決め終わり、大体のイメージが完成した。


 でも、これだけではまだ成功させるのは無理。


 もっと、もっと細かく、もっと具体的に。


 もっと、もっと⋯⋯。イメージをしなければならない。


 この蔓が出現して、拘束された時にイカがとる行動は? 


 どんなふうに動く? 


 どんな魔法を使用する? 


 もし、蔓を引き抜かれてしまったら? 


 もし、引き千切られてしまったら? 


 蔓は追加で出現させる必要がある? 


 強度はこのくらいでいい? 


 どのくらいの時間、出現させている必要がある? 


 疑問点を絞り出して、答えを考える。


 また疑問点を絞り出して、答えを考える。


 そんな作業を何十回か繰り返す。


 少しずつ、少しずつ⋯⋯。魔法を完成させていく。


 一体何分、何秒が経過したのだろう。


 ライムもフィアルも、私の集中が途切れることのないように、静かに待っていてくれている。もうすぐ、完成するから。ごめんね、もうちょっと、待っていてほしい。


 組み立てて、組み立てて、組み替えて、また組み立てる。


 そんな作業をたくさん繰り返して、ついに魔法が完成した。


 正直、これでいいのかはわからない。きちんと成功するかな? これで失敗したら⋯⋯。


 ううん、今はそんなことを考えるよりも、優先すべきことがあるじゃん! そっちを考えよう。


「⋯⋯できた」


 私が二人にそう言うと、二人は無言で力強く頷いてくれた。ありがとう、頑張るね。


 このまま、イメージをした通りに、魔法を展開する。それは、簡単なことではない。


 でも、二人のために、私のために、未来のために。必ず、成功させてみせる。


「“太蔓(シックバイン)”!」


 私がそう唱えると、イメージした通りに、大きくて、太くて、頑丈そうな蔓が、十一本、出現する。


 イカが反応する前に、ものすごいスピードで蔓を巻き付ける。


 勿論、イカは暴れた。でも、勿論そんなことは想定済み。


 私のイメージ通りに更に蔓が増えて、イカをぐるぐる巻きにする。


 これで、イカは身動きが取れなくなった。


 でも、これではこちらが攻撃をした途端に蔓も一緒に千切れてしまう。


 それでは、イカが復活してしまうので、本末転倒だ。勿論、これについても対策済み。


 イカをぐるぐる巻きにしていた蔓は、互いにくっつきはじめる。


 そして、再び十一本の大きな蔓になる。それらはイカの足と頭の方に行き、それぞれが足と頭を拘束する。より強く、より太くなった蔓に拘束されたイカは、動くことも難しいだろう。


 これで、イカも身動きがとれないし、私たちもイカを攻撃できるってこと。


 イカは、そのまま海もどきの底の方へ引き込まれていき、無事に地面とくっつけたようだ。


 よし、完璧! 


 これは、成功だ! やったぁ!! すごい、広範囲魔法、成功! 私も魔法の才能あったりして!


 私がそんなことを考えていると、イカがまた暴れ出した。


 あ、やばい。もしかして、怒ってる? もしかしなくても、怒ってるよね。


 てか、広範囲魔法を使う前から怒ってたんだった。


 すみません、もうこんな自惚れないんで、どうかお鎮まりくださいませ。そんなに暴れても、蔓は千切れませんよ?


「すごいです、リズムさん! この戦いが終わったら、色々と話しましょうね!」


「ありがとう、ライム! ぜひ、たくさんお話しよう!」


「リズム、すげぇ! リズムも一発で成功させるなんてな。俺も、一緒に話したい!」


「うん! ありがとう! フィアルも一緒に話そうね」


「はい! みんなで話しましょう!」


 私の広範囲魔法が成功して、みんな興奮気味。


 一瞬、目の前にいる敵のことと、今がピンチだということを忘れるくらい。


 でも、勿論すぐにみんな、イカに意識を持っていく。今は、喜んでいる場合じゃない! 一瞬、喜んだけど。まあ、そのくらいは許して! それより、イカ退治だ。


「リズムさんが拘束してくれたので、後は攻撃をして倒すだけですね」


「と言っても、俺の魔法は全く効かないけどな。ライムとリズムに任せた! 応援してるぜ!」


 よし、二人がそう言っているし、イカを攻撃しちゃおう! 


 私とライムは、二人でイカに攻撃を始める。間違ってでも蔓を切らないようにしないと。絶対に、蔓に当たってはいけない。


「頑張れ〜! が・ん・ば・れ〜〜!!」


 隣では、フィアルが結構な大声で応援してくれている。うん、気持ちはとっても嬉しいけれど、もう少し声量を下げてほしいな。よろしく!


 私とライムは、順調にイカにダメージを与えていく。


 ⋯⋯このイカ、体力相当あるよね!? めちゃくちゃ頑丈なのかな? なんでまだ生きてるの!? もう結構攻撃してるんだけど⋯⋯? どうなっているんだろう? 流石はマンダンのボス。


 ――この時、私たちは油断していたのかもしれない。


 イカを拘束している蔓が、少しずつ凍ってきていることに、少し気をつければ気がつけた筈なのに。


 気づくことができなかった。

広範囲魔法、成功⋯⋯?


お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/

次回更新予定は10/11(日)です。元々、このエピソードと次のエピソードで一話の予定でしたが、長くなったので分割しました。その関係で、明日も更新します。m(_ _)m

次回予告:マンダン地下五階にて。ちょっとシリアスかも?(/ω・\)チラッ

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