35. 【マンダン地下五階②】気が利く最強の盾
バッシャーン!! という音が三つ分、地下五階に響いた。勿論、私たちが水に落ちた音だ。
はい、なんか落ちましたけど!? 普通に落ちたんですけど!?
うわぁ、なんか水、深いし広いよ? これ、溺れるのでは!?
こんなに勢いよく落ちたら溺れる可能性大いにあり! やばくない!? どうしよう!?
私がパニックになっていると、ライムとフィアルが泳いで私の近くに集まって、すぐに水中で盾を張ってくれた。
どうやら、私達全員の周りを盾で囲って、ライムの水魔法で盾の中に残った水を蒸発させる、という作戦らしい。
確かにこの作戦なら、息ができるようになるかもしれない! 私の中に希望が生まれた。
でも、すぐにライムの“氷の盾”もフィアルの“炎の盾”も意味のないものとなってしまった。
“氷の盾”は、やはり水に弱いのか、すぐに溶けてしまった。
“炎の盾”など、水中で生き残るわけがない。
二人の盾作戦は失敗してしまったようだし、これから溺れるだけなのでは!?
私の中に生まれた小さな希望は、儚く散ってしまった。
どうしよう、どうしよう!?
再び混乱していると、ライムが私に話しかけてくれているのが目に入った。
水の中だからなんて言っているのかうまく聞き取れないけど。
口の動きでなんとか⋯⋯! う〜ん⋯⋯?
す、た、ら、い、と? すたらいと? って⋯⋯。あっ! スターライト! “星の盾”のことか!!
確かにこの盾なら何からでも守ることができるよね! 例え敵が水であったとしても!
「“星の盾“!」
私がそう唱えると、淡く光る透明の球体が私たちを覆った。
いつもは星型の盾が出現して守ってくれるんだけど、今回は相手が水だから透明な球体で守ってくれるらしい。
私が水から守ってほしいと願いながら使用したからか、球体の中の水は一瞬にして蒸発。見事に息ができるようになったのだ。
やっぱりこの盾、最強だ!
いつの間にか、私たち三人の服も乾いているし。気が利いているなぁ。すごいわ。
私を、溺れるかもしれない、という恐怖から救ってくれたこの魔法に心から感謝した。本当に助かった⋯⋯! 本当にありがとうございます⋯⋯!
「リズムさん、大丈夫ですか?」
「リズム、無事か!?」
ライムとフィアルは、私のことを本気で心配してくれたようで、開口一番にこう言ってから、私の体調をチェックしてくれた。
二人の優しさが身にしみる⋯⋯! こんなに心配してくれるなんて、嬉しいなぁ⋯⋯。
なんて、こんなこと思っている場合ではないだろうけど。だって、この“星の盾”もあまり長くは持たない。
最大で十分間しか、この盾を出現させることはできないのだ。
さらに、使用した後は体に負担がかかるし、次にこの魔法を使えるのは一時間後。これを使い終わるまでに、敵を見つけて倒さねばならない。正直、かなり厳しい。
ライムたちも、そのことを理解しているようだ。私の健康状態をチェックし終わり、ほっとしたような顔をするもつかの間、険しい表情になった。
「リズムさん、この盾はあと何分ほど持ちますか?」
「ええと⋯⋯大体八分半くらいかな?」
「なら、あと八分半でこの階にいる生物を倒せばいいんだよな?」
「そういうことになりますね。まずは、生物を探しましょう」
うん、そうだよね。まずは相手がどんなやつなのかを知る必要がある。この階が水で満たされていることから考えると、きっと水中に住む生物が相手だろう。
でも、そうするとこっちは結構不利な状況だ。相手は水中で戦うなんて、お手の物。
こっちはそれに慣れていない。
そして、そんな相手をあと八分ほどで倒さなければならない。あ、あれ⋯⋯? これ、相当ヤバいのでは⋯⋯!?
早く、生物を見つけないと⋯⋯! “星の盾”が消えると、私たちは溺れてしまう。
辺りをぐるりと見渡すけれど、生物らしい姿は見えない。辺りを細かくチェックしても、見つからない。どうしよう⋯⋯!
本当は、いないのでは⋯⋯!?
二階や三階ののときに聞こえた電子音も今回は聞こえないし! どうしろっていうの!?
「生物なんて、全くと言っていいほどいないぞ⋯⋯」
「そうですね⋯⋯。早く見つけなければならないのですが⋯⋯。取り敢えず、僕は魔法でここの水を少しずつ蒸発させていくことにしますね。この盾が消えてしまったときに、上の方で呼吸できるようにします」
「確かに! ライム、頭がいい! 是非ともよろしくお願いします!」
「頼んだぞ! 生物探しは俺とリズムで頑張るからな!」
ライム、流石〜! それは賢い!
ライムがこの大量の水を少しでも蒸発してくれれば、それによってできた隙間で呼吸することができる! 万が一、“星の盾“の使用時間をオーバーしてしまっても、生き残ることができる!
よし、ライムが頑張ってくれることだし、私もフィアルと一緒に生物探しを頑張ろう!!
「フィアル、じゃあ、私は前方を徹底的に探すから、フィアルは後方をお願い!」
「おう! わかった! 後方は任せろ!」
フィアルと役割分担をして、少しでも効率的にする! ⋯⋯あれ、なんか私、ライム化してない? まあ、今はそれを気にしている暇はない! 考えるとしたら後で考えよう!
地下五階は、本当に海中のようになっている。海藻があるし、岩もある。
だが、なぜか生物という生物がいない。いや、本当に魚の一匹もいないのだ。微生物くらいはいるかもしれないけど、彼らは見えないのでいない判定してしまおう。
これがマンダンじゃなかったら、静かできれいな海の中、最高っ! って思えたのになぁ⋯⋯。
いやぁ、この景色を初めて見るのが、結構なピンチ真っ只中なのがかなり残念だ。
と、こんなこと考えている私だけど、しっかりと、丁寧に、前方を探しているから安心してほしい。
勿論、生物らしき生物はいないが。
そして、もうこの盾が持つのは残り六分となっておりかなりのピンチなのだが。
さっきから焦ってしまいそうになりながらも、必死に冷静さを保っている私を、誰か褒めてほしい。
ライムも、頑張って水を蒸発してくれている。
それでも、まだ水は三センチメートルほどしか減っていない。この調子でいくと、本当にヤバいかもしれない。
本当に、焦りを押し殺すことができている私を褒めてほしい。これ、超大変なんだよ!?
私が焦りと戦いながら、必死に生物を探していると、水の中が波打つような、そんな感覚を覚えた。
それは私だけではなく、ライムたちもそうだったようで、彼らも驚いていた。
え、なんだろう⋯⋯? この波動が生物によるものだとしたら、いいのやら悪いのやら。
生物の居場所を特定する鍵になるかもしれないけど、生物による攻撃かもしれない。
波動はどんどん大きくなっている。
生物は、こちらに近づいてきているようだ。“星の盾”があるから、どんな攻撃も防げるとは思うけど⋯⋯不安だよ!
「は⋯⋯!?」
「え⋯⋯!? リズムさん、後ろ!」
「後ろ⋯⋯? ええっ!?」
何あれ、何あれ!?
とても大きい影が私たちの方へ前進してきているではありませんか!? どういうことですか!?
幻覚⋯⋯ではなさそう。ライムたちにも見えているもん。
その影はどんどん近づいてくる。ついに私たちの目の前にきて、その生物の正体が明らかになった。
私たちと対決する生物⋯⋯それは、イカだ。めちゃくちゃ大きい、地球でいうところのダイオウイカのような生物。
レベルは⋯⋯五十。高っ!? 高すぎる! 属性魔法はわからないけど、それでも今までとは一味違う、強敵であるということは間違いない。大丈夫かな⋯⋯? 私たち、勝てるかな⋯⋯?
ううん、弱気になっちゃダメ! 私たちはイカに勝てる! イカに負けない! 人間は思い込みが得意なんだから! 人間の思い込む力、舐めないでよね!
「あれは⋯⋯魔物、でしょうか?」
「「え⋯⋯⋯⋯」」
レベル五十で、闇持ちで、水中対決が得意な生き物ですって!? なんやねん、それ⋯⋯。間違いなく、今まで戦った中で一番の強敵だ。
“星の盾”の使用時間、残り五分。私たちとイカの戦いが幕を開けた。
リズムは初めて“星の盾”を、ダッシュして家に逃げる以外の目的で使いました。
お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/
次回更新予定は10/7(水)です。m(_ _)m
次回予告:マンダン地下五階にて。イカとの対決、始まります!(/ω・\)チラッ




