33. お泊りといったら恋バナ!
「テントを三人分持ってきました。これを組み立てましょう」
通路で野宿をすることになり、どうすればいいか悩んでいた私とフィアルにライムがそう言った。
おおっ、流石! こうなることを予想して、テントまで持ってきていたなんて⋯⋯! 私はまさか野宿をすることになるなんて思わなかったから、そんなもの持っていこうとも考えなかったのに。
通路は、そんなに広いわけではないけど、テント三つくらい縦に並べれば入りそうだ。通路が狭くなくてよかった。
「リズムさんは自分で組み立てられますか?」
「うん! キャンプをしたことがあるから!」
「きゃんぷ? 聞いたことがありません。きっと、そちらの世界のものなのですね」
えっ!? この星にキャンプが存在しないだと!? そんなこと知らなかった⋯⋯。
「ライムは、キャンプを知らないんだ⋯⋯。じゃあ、今度、みんなで行こうよ!」
私がそう提案した時、某エルフの元気な声が私の耳に届いた。
「できたぞ! テント完成!」
「「えっ!?」」
フィアルの声に驚き、彼の方を見た私とライムは、視界に入った光景が異常すぎたため、声を揃えて驚いてしまった。
フィアル、準備早すぎない!? しかも、私とライムのテントまで組み立ててくれてるんだけど!?
珍しくフィアルが大人しいな〜って思っていたけど、まさか黙々とテントを組み立てていたとは思いもしなかったよ⋯⋯。
「⋯⋯⋯⋯では、夕食にしましょうか」
「夕飯! 賛成!」
「ライム、理解諦めないで!?」
ライムは、切り替えが早いな⋯⋯。うん、ある意味長所だとは思うよ。よし、私も理解することは諦めよう!
私達は、夕食用に持ってきたサンドイッチを食べる。うん、美味しい! 沢山戦ったし、思ったより頭を使ったから、これでエネルギーをチャージしないとね!
サンドイッチは、ライムの水魔法で氷を作って、それを保冷剤代わりにしていたから、キンキンに冷えているけれど。冷たいサンドイッチもこれはこれで良いと思うよ。
「今、夕食?」
「「「わっ!?」」」
突然、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。その声に驚き、私とライムとフィアルは同時に声を上げる。
「ルカ様⋯⋯」
また、この神様は! どんだけ驚かすのが好きなの!? このタイミングで登場するとは思わなかったから、素直に驚いたじゃん!
「ここは⋯⋯ダンジョンだよね? 通路で野宿なんて⋯⋯珍しいね」
「僕達だって、したくてしている訳ではありません! 性格が悪い謎の声の主に脅されて、結果的にこうなっただけなので!」
ライムはその時のことを思い出したのか、若干イライラオーラを纏っている。
何ていうか、このダンジョンって性格が悪い生物が多いよね。二階にいた例の性悪最低バッタも、四階にいる陽気な謎の性悪最低音声も。みんな揃って狂っていると思う。
⋯⋯あ、マズい。思い出したら少し腹が立ってきた。一回落ち着こう、深呼吸、深呼吸。
「性格が悪い謎の声の主⋯⋯? どういうこと?」
ルカ様、それ聞いちゃう? 多分八つ当たりしちゃうと思うけど、我慢してくださいね。
心の中でそう言って、私達はルカ様に今日あったことを話し始めた。
――♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪――
「あ〜⋯⋯なるほどね。みんな、お疲れ様」
ルカ様はそう言って苦笑している。現在、私達は今日の戦いを全て説明し終え、思い出したことによって腹を立てている。
「もう、本っ当に何なんですか、このダンジョンは! 性悪が多すぎなんですよ!」
「もう一度バッタを八つ裂きにしたくなってきたぜ⋯⋯!!」
「声さんも八つ裂きにしてみたいな」
こんなことをさっきからずっと言っている私達である。そう言ってしまうのも仕方がないと思って許してくれているルカ様、感謝しています。八つ当たり的なことをしてしまって申し訳ありません。そう思っているけど、このイライラは止まらない。感情とは厄介なものだ。
「うん。君たちが大変だったことはよく分かったよ。取り敢えず、深呼吸しよう?」
「「「スゥ〜⋯⋯ハァ〜⋯⋯」」」
よし、冷静さ復活! ありがとうございます。
「折角の野外でのお泊りなんだからさ、もっと楽しい話をしようよ」
ルカ様はそう言った。野外でのお泊りって言っても、地下ですけどね。野外の魅力である開放感っていうのが一切ないんですよ。
「楽しい話⋯⋯? お泊りといったら、恋バナとか?」
「うん!?」
「はい!?」
「それは楽しいのか⋯⋯?」
私がそう言った途端、ルカ様とライムが目を見開き、少し赤くなった。フィアルは、「恋バナって楽しいのか⋯⋯?」って言っている。いや、私にもそれはわからない。でも、お泊りといったらこれが定番では⋯⋯?
でも、それよりも私は、恋バナって聞いた途端に赤くなったルカ様とライムの方が気になる。もしや、この反応は⋯⋯?
「ルカ様、ライム、もしかして好きな方とかいます⋯⋯?」
二人は私にそう聞かれると、目に見えて赤くなった。ほうほう、なるほどねぇ。私はニヤニヤしてしまう。いつもは私が振り回される側だけど、今日は私が振り回せそうだ。
「二人の好きな方って誰ですか⋯⋯?」
「〜〜っ、いや、それは⋯⋯」
ルカ様はなんとか私の質問に答えるべく、言葉を考えているようだ。ライムはさっきから口を固く閉ざしている。
「ルカ様の好きな方って、やっぱり神様ですか⋯⋯?」
「えっ、あ、いや⋯⋯。〜〜っ、それは、違う」
「えっ、違うんですか!? 私が知っている方⋯⋯?」
「そ、れは⋯⋯⋯⋯ごめん。今は、言えない⋯⋯っ!」
ルカ様は、真っ赤になって、顔を覆ってしまった。ちょっと深堀りしすぎたかな? いや、だって、神様の恋なんて、気にならない人はいないでしょ。
ん? 「今は言えない」ってことは、いつか言ってくれるってこと?
まあ、多分聞いても沈黙で返してくるだろうから、少しそっとしておいてあげよう。よし、次は⋯⋯。
「ライムは? ライムの好きな方って、スライム?」
「⋯⋯ぇあ、その⋯⋯僕は、そもそもあまりスライムに会わないので⋯⋯っ」
確かに! ライムって、十五年間誰にも会わずに生きてきたもんね。そんな彼が今まで会ってきたヒトって、ものすごく限られているのでは?
「じゃあ、私が知っている確率が高いってこと!?」
「っ! ⋯⋯それは、〜〜っ、ぼ、僕も、今は言えないです!」
ライムはそう言って蹲ってしまった。ライム、本当にこの手の話題に弱いよね。ルカ様も負けてないけど。
ん? ライムも「今は言えない」って言った? ということは、いつか言ってくれるってこと?
ダメだ、きっと二人ともこれ以上は話してくれないだろうなぁ⋯⋯。まあ、二人に好きな方がいるってことを知れただけでも収穫だよね。⋯⋯相手が誰なのか気になるけど。
じゃあ、次は⋯⋯。
私は、フィアルに目を向けた。すると、何とも言えない表情をしたフィアルと目があった。何、その顔。フィアルに聞いてみると
「いや、二人の気持ちを考えていたら、ちょっとな。リズムって意外と恐ろしかったんだな」
と、返ってきた。フィアルさん、それってどういう意味ですか!? 悪口ではないよね⋯⋯?
「それよりも、フィアルはどう? 好きな方とかいる?」
「いない、いない。そもそもそういう気持ちを経験したことがないからな」
「そうなんだ」
フィアルらしいと言えばフィアルらしい答えだ。よかった、仲間がいて。私にもそういう人はいないし、そういう気持ちも経験したことがないんだよね。
「そういうリズムはどうなんだ? 好きな人とかいないのか?」
「うん、いない。フィアルと一緒で経験値ゼロだよ」
私がそう答えると、フィアルはルカ様とライムの方へ行って言った。
「だってよ。二人とも、頑張れよな!」
ちょっと回復していた二人だけど、フィアルのその言葉を聞いたらまた真っ赤になってしまった。
フィアル、何が「だってよ」なの? ここでそう言う意味がわからない。そして、頑張れって⋯⋯もしかして、フィアルは、二人の好きな方を知っている?
でも、二人が言いたがらないことはこれ以上言及しないようにしよう。⋯⋯二人とも、大丈夫かな? 中々回復しないけど。やっぱりやりすぎたかな? 恋バナしようって言う人の気持ちが少しわかった気がする。
「二人とも、大丈夫?」
私が声を掛けると、二人は同時にビクッとして、消え入りそうな声で大丈夫、と返してくれた。
何も知らないリズムにやられる神様とスライム(今は人間姿)with二人の想いを知っている狼(今はエルフ)。
お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/
「続きが読みたい!」「ここが好き!」と思ったら、ぜひ評価【★★★★★】、ブックマーク、リアクションボタンをポチッと押してください! 執筆の原動力になりますし、なにより作者が喜びます。(≧▽≦)
次回更新予定は9/30(水)です。m(_ _)m
次回予告:マンダン地下五階に着くまで。(/ω・\)チラッ




