30. 【マンダン地下四階➀】広範囲魔法に大興奮!
ライムが会場に着くと、さっきの陽気な声がまた聞こえた。
『さあ、最初の挑戦者が会場に到着しました! 挑戦者さん、あなたのお名前を教えてくださ〜い!』
「ライムです」
『ライムさんですね! ありがとうございま〜す! それでは早速、始めていきましょう! ライムさんと対戦するのは〜⋯⋯!』
声がそう言うと、ポンッという音と共に敵が数匹召喚された。すごいマジック! どんな魔法を使ったんだろう⋯⋯? って、そんなこと考えている場合じゃない!
『こちらのと〜っても元気なワンちゃん三匹で〜す! でも、こちらのワンちゃん達、少〜し凶暴なんですよね〜。レベルは右から順に、三十二、三十、三十一です! 魔法属性は、水、土、風!』
レ、レベル高くないですか!? と叫んでしまいそうになるのを必死に抑えながら、私はアナウンスを聞く。こんなに高レベルで凶暴な生物達三匹って、キツいよね!? ライムのことは大丈夫だと信じているけど。私もこういう生物を相手しないといけないなんて⋯⋯不安になってきた。
でも、一旦それは後で考えよう。今はライムの応援だ! そして、どんな感じで戦わなくちゃいけないのか、それを見極めないとね!
「まっ、ライムならいけるよな。ただ、思っていたよりも手強そうだな⋯⋯」
フィアルから見ても、あの凶暴な犬は手強い相手なんだ⋯⋯。あの、五百メートル全力疾走を準備運動を言っている体力エグいフィアルから見ても。
『対決を開始する前に、ライムさん! なにか言いたいことはありますか?』
「そうですね⋯⋯。そろそろ日が暮れるので、なるべく早く終わらせたいということでしょうか?」
『おおっ! これは、余裕そうですね。ですが、油断はしない方が良いと思いますよ〜』
ここに来て早く終わらせたいって言えるライム、すごい。なんでこんなに余裕そうなんだろう⋯⋯?
そして、ライム! 絶対に油断はしないでね! ライムがやられちゃったら私もフィアルもすっっっごく悲しむからね!
『準備は良いですか〜? そろそろ戦闘開始しますよ』
「ええ、いつでもどうぞ」
『は〜い! それでは、観客席にいらっしゃるお二方も一緒に開始の合図をしましょう!』
はい!? 私達も!? こんなところで呼びかけられるとは思ってもみなかったよ。フィアルも一瞬驚いていたけど、すぐに顔をキラキラさせ始める。なぜ!? 適応能力、高くない!?
『私の声に合わせてくださいね〜! 五、四⋯⋯』
『「「三、二、一⋯⋯」」』
『始め!』
陽気な声が響いた。すると、今まで攻撃はまだしてこなかった犬達が、一斉にライムに向かっていったではありませんか!? なんで!? 今まで、ピクリとも動いていなかったはずなのに!
「もしかして、魔法かなんかで動きを封じていたのか⋯⋯?」
「えっ! そうなの!? すご⋯⋯」
「あくまで予想だけどな」
そう予想できるフィアルもすごい! 私の周りにはすごい人外さんが沢山いるなぁ⋯⋯。
そんなことを考えながらライムの方を見ると、ライムは氷の盾で犬三匹の攻撃を防いでいた。こうなることを予想して、早めに動いていたんだ⋯⋯! 流石〜!
あれ!? でも⋯⋯氷の盾にひびが入っている!? 嘘でしょ!? あの、とってもとっても硬いライムの盾に、ひびが!? 犬三匹は流石にキツいか⋯⋯。
ライムも、一瞬驚いたような顔をしていた。でも、すぐに不敵に微笑んだ。
え、何、あの笑みは。普通に格好良いんですけど! ピンチのときにする表情じゃないよね!? なんか作戦でもあるのかな? いや、ライムのことだからきっとあるんだろうな。
「“雹”!」
なんか、聞いたことがない技名が聞こえてきたんだけど?
ここで一応説明しておこう。普通、水魔法、炎魔法、風魔法、土魔法、草魔法、電気魔法を発動するときは技名を詠唱する必要はない。そもそも、これらの魔法には技名がないんだ。そのため、詠唱するにしても自分で名前を付けないといけないんだけど⋯⋯。
でも、詠唱しなくてもいいってことは、詠唱してもいいってこと。だから、私も何回か草魔法を使うときに技名を唱えたことがある。
実は、詠唱した方が、技の成功率が上がるんだ。音魔法や光魔法などは詠唱しないといけないでしょう? それはそれらの技の成功率が低く、詠唱せずに成功させることは不可能に近いから。
更に、詠唱することによって技の質が良くなったり、魔法を操りやすくなるというメリットもある。詠唱についての唯一のデメリットといえば、技名を考えるのが面倒くさいという点かな。発動までにほんの少し時間がかかるっていうのもデメリットかも。
私がカミキソで詠唱についての情報を振り返っていると。
突然、ライムがいる戦闘会場の上に黒雲が出現し、瞬く間に大粒の雹が降り出した。犬達はそれに当たるまいと避けるけど、流石に避けきれない。
うん? 雹に触れた部分、凍っていってない!? どんどん犬が氷漬けになっていくところを、驚きながら見る。
すごい! ライムが今、使ったのは広範囲魔法なんだ! 広範囲魔法っていうのは、その名の通り広範囲の魔法を使うこと。どの魔法を使うのか、どの効果をつけるのかなど、広範囲魔法を作るには自分で色々と考えなくちゃいけなくて、大変なんだ。想像力が重要らしい。
広範囲魔法は、作るのが大変で、成功させるのが難しい代わりに、威力は凄まじい。その証拠に、さっきまで元気にライムに攻撃していた犬達はもう身動きが取れなくなっている。
うわぁぁぁあ!! すっごい!! すごすぎるよ、ライム! 広範囲魔法って、こんなにすごいんだ! それを成功させるなんて⋯⋯!!
「すっげぇ⋯⋯!!」
フィアルも、目をランランと輝かせてライムを見ている。広範囲魔法なんて、普通は見ないもん。フィアルの気持ち、めちゃくちゃわかる。多分私も同じような表情をしているだろうし。
戦闘が始まってわずか十分くらいで、ライムは犬をみんな氷漬けにして勝利した。すご⋯⋯。
『な、なんと! ライムさん、広範囲魔法で一気に片付けました! あっという間に勝利です! おめでとうございま〜すっ!!』
あの陽気な声がライムの勝利を宣告する。
「すごい⋯⋯!」
「すげぇ⋯⋯!」
私とフィアルは、もう大興奮! だって! 本当にすごかったんだもん! 広範囲魔法なんて、初めて見たよ! 突然黒雲が現れ、降り出した雹で犬達を一気に氷漬けにしていったんだよ!? うわぁ、マジですごい!!
「ふぅ。無事に早めに終わらせることができてよかったで、す!?」
何食わぬ顔をして戻って来たライムに、私とフィアルは突っ込んでいった。ライムは突然の急接近に驚いたようだ。目を丸くしている。
「ライム、すごかったよ! 本当に、本当にすごかった! めちゃくちゃ格好良かった!!」
私が興奮しながら早口でそう言うと、だんだんライムの顔が赤くなってきた。
「そ、うですか⋯⋯! 〜〜っ、そう言っていただけて、嬉しいです」
「うんっ! 本っ当に格好良かった!」
「あ、ありがとうございますっ」
ライム、顔が真っ赤だ。褒めすぎたかな⋯⋯? でも、本当に、本当にすごかったから、私がこうなるのも仕方ないよね。
「ライム! いつの間にあんなすごいの出来るようになったんだな! 今度、俺にも広範囲魔法のやり方、教えてくれよ!」
「私も! ライム、お願い!」
「わ、わかりました! 〜〜っ、二人とも、一旦、離れてくれませんか⋯⋯?」
「あ、ごめん」
いけない。興奮しすぎて距離感がバグってしまったようだ。取り敢えず落ち着かないと。
『それでは、次の対戦へ参りましょう! 次なる挑戦者は〜⋯⋯そこの赤いエルフ君!』
「よっしゃ! そんじゃ、行ってくるわ! 応援よろしくな〜!」
「うん。頑張って!」
「なるべく早く終わらせてくださいね。応援しています」
私とライムに手を振りながら、フィアルは会場の方へと歩いていった。
広範囲魔法は難しく、普通はできるようになるまで一年以上かかります。ライムはすごいのです。
お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/
次回更新予定は9/20(日)です。m(_ _)m
次回予告:フィアル、対戦開始! (/ω・\)チラッ




