↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
24/42

20. 私の宝物

 まずは、相手の感情を知る! 話はそれからだ。先程も説明した通り、“想いの歌《フィーリングメロディー》”を成功させるには、相手の感情に合った歌(メロディー)を選択しなければならない。


 相手の感情を知るって、どうやればいいの……? と、思うでしょう? ふっふっふ、私は、カミキソのおかげで相手の感情を知る方法を知っているんですよね!


 その方法とは、ズバリ! “想いの歌《フィーリングメロディー》”と唱えてから、相(・)手(・)を(・)凝(・)視(・)す(・)る(・)のです! 


 うん、よくわからない! カミキソがあっても、よくわからないんだよね。知っているが、理解はできていない……。よくわからないのは毎度のことなので、そこはそういうことなんだ〜って思うことでやり過ごしましょう! 


 はい、ということで、今からあの凶暴な、素早すぎる狼をジロジロ見てみよ〜! 狼の動きは速いけど、目で追えない程ではないから、凝視することはできると思う。私、観察は得意な方なんだ。


 狼は、しつこくライムの氷の盾(アイスシールド)に体当たりしている。痛くないのかな……? 冷たくないのかな……? 本気で何回もぶつかって、元気そうなのが不思議だわ……。


 そして、流石ライム! 狼の、勢いがすごすぎる攻撃を食らっても、ライムの盾は先程から傷一つ付いていない。盾、頑丈すぎる! ライム、すごすぎる!


 こんな事を考えながら、私はしっかりと狼を凝視することに成功していた。


 すると、何ということでしょう! 狼から、ふわふわと文字が出てきたのです! 漫画の吹き出しの中に、文字が書いてある。


 ……レベルを知るときのように頭に浮かんでくるというわけでも、心の声が聞こえてくるというわけでもなく。文字が出てくるなんてね!


 そして、当たり前だがこの文字は私以外には見えていない。みんな、真面目に戦っている(戦いを見守っている)。そんな中、私はこの光景のシュールさに一人固まっていた。


 だって、考えてみてよ! まず、狼はライムの盾に攻撃(体当たり)している。ライムはその盾を強化しながら狼に無情攻撃(水の塊)を繰り出している。そして、女の子は震えながら、男の人は厳しい顔で攻防を見守っている。


 それはいい。いや良くないか。取り敢えず、問題は……私の場合、狼から吹き出しが浮いて出てきているように見えることだ。


 真剣な戦いの中に見えるふわふわとした場違いな吹き出しと文字。なんだこれは!? ちぐはぐすぎん!? と、思わず心の中でツッコんでしまうのも納得でしょうよ!?


 どうしてこの魔法はこうもシュールなのだろうか。もうちょっと、普通に相手の感情を表してくれないかなぁ!?


 と、全力でツッコミまくっていた私だけど、吹き出しの中に書いてある文字を読んだ途端、ツッコミが止まる。


『人を傷つけてしまった……』


『こんなこと、したくないんだ……!』


『どうして? なぜだ……!? 体が、いうことを聞かない!』


 それが、深い悲しみと絶望に染まっているから。狼は、人を傷つけてしまったことを悲しみ、体をコントロールできないことに悔しさと絶望を感じているようだ。


 傷つけたくて暴れているわけではないんだ……。闇に操られている感じなのかな……? この狼は、被害者でもあったんだ……。


 狼の気持ちを知って、私は闇の恐ろしさを思い知る。それと同時に、狼のことも、助けたいと思った。


 そのためには、動きを止めてもらわないと。闇を吸い取らないと、何も解決しないから。


 狼の気持ちである悲しみと絶望に寄り添うことができて、さらに狼を落ち着かせることができる歌(メロディー)。私が奏でないといけないのはそんな歌(メロディー)だ。


 どんな歌(メロディー)にするかは決まったけど……。何の歌(メロディー)を奏でるのかは決まっていない。どうしようかな……?


 私はどの歌(メロディー)にしようか迷ったけど、答えはすぐに出てくる。


 ――これだ。この歌(メロディー)しかない! 


 私が悲しみに暮れた時に、絶望に染まってしまった時に、お母さんが即興で作って歌ってくれた、私の思い出の歌(メロディー)。


 私のお母さんは、音楽家だった。歌を作るのが得意で、たくさんの歌を私に聴かせてくれた。悲しい時、嬉しい時、苦しい時……いつも、傍に居て、一緒に歌(メロディー)を奏でていた。


 たくさん、たくさんある思い出の歌(メロディー)の中の一曲。私が選んだのは、今の狼にピッタリのものだ。この思い出の歌(メロディー)で、狼の心を救ってみせる!


 私は、息を吸って、歌(メロディー)を奏でる準備をする。


 私の思い出の、宝物のような歌(メロディー)。大好きなお母さんと奏でた、最高で素敵な歌(メロディー)。昔、お母さんが私を救ってくれたこの歌(メロディー)で、今度は私が狼を救ってみせる。


 ――だから、力を貸して、お母さん。


「♪どうしてそんなに泣いているの」


 突然、歌い始めた私に、ライムも狼も、女の子も男の人も、みんな驚いて一瞬こちらを見る。でも、すぐにまた狼は体当たりを続けた。


「♪いつもの笑顔はどうしたの」


 それでも、私は歌い続ける。気持ちを乗せて、思いを込めて。


 三十秒ほど歌うと、狼の動きが鈍くなっていくのがわかる。女の子の震えは止まって、彼女と男の人は私の歌に聴き入っているようだった。


「♪いつだって傍にいるから 一緒に空を見上げて笑おう ほら」


 私は、夢中になって歌う。思い出を奏でる。お母さんと歌ったときのことを思い出しながら。


 いつの間にか、狼は体当たりをやめて、こちらをじっと見ながら歌に耳を傾けてくれていた。その隙に、ライムは狼にそっと近づいて杖を当てた。杖は光り、闇を吸い取る。狼の闇を取り除くことに成功した。ナイス、ライム!


「♪楽しいを探しに行こう」


 私が歌い終わると、ライムと女の子と男の人はパチパチと拍手をしてくれた。ありがとう! 純粋に嬉しいっ!


 ――ありがとう、お母さん! おかげで狼を落ち着かせることができたよ。


 私は心の中でお母さんにお礼を言っていると、いつの間にか狼が私の近くに歩み寄ってきた。そして――


「ガウッ!」


 と吠えられた。……はい? 何か、お礼を言ってくれている気がするけど……?


「えっと……。闇から解放されたようでよかった! もう大丈夫だよ」


 取り敢えず、返事はしておいた。何を言ったか、狼はわからなかったと思うけどね。狼は人間の言葉を知らないと思うから。「闇が取れて、更に饅頭にならなかった幸運な狼よ。もう大丈夫だから、暗くならないうちに家に帰っておくれ」ということを伝えたが……。狼は私の近くから動こうとしない。


 ……まあ、伝わっていないのなら、当然だよね! 


 どうしよう……? と、私が困っていると、ライムが女の子と男の人を連れて私に話しかける。


「リズムさん、怪我はしていませんか?」


「うん。大丈夫。ライム、ナイスだったよ!」


「いえ。リズムさんの歌の力ですよ。きれいな歌声でした!」


「ありがとう!」


 歌を褒められて、私は嬉しくなった。だって、家族以外に歌声がきれいだとか言われたの、初めてなんだもん。それに、お母さんとの思い出の歌を褒められたんだし。これは嬉しいに決まってるよね!


「あの、助けてくださってありがとうございます!」


「本当に感謝している。あんたらは、俺と娘の命の恩人だ」


 女の子と男の人からはお礼を言われた。二人とも、さっきまで震えたり、緊張したりしていたのが嘘のように明るい笑顔だ。よかった……! 元気そうで!


 でも、男の人の方は所々怪我をしている。狼と戦っていたんだから、当然だよね。


 私の光魔法“癒やし(ヒール)“で治してあげたいけど……。光魔法、勝手に使っていいのかな……?


 確か光魔法って、百年に一人しか使い手がいないという、とてもとても珍しい魔法なんだよね……? 使ったら、騒ぎにならないかな。ライムにも、なるべく他の人の前では使わないようにって言われているし……。


 私は迷って、ライムの方を見る。ライムは私の視線に気づいて、更に私の言いたいことにも気づいてくれたようだ。周りを見て、私達四人と狼一匹しか辺りにいないことを確認してから頷いてくれた。察しの良い人で助かるよ……!


「あの、その怪我、痛くありませんか? よければ治しますよ」


「お嬢ちゃんが? そんなことができるのか?」


「はい! お任せください。“癒やし(ヒール)”!」


 私が唱えると、男の人の身体がポウッと微かに光って、みるみるうちに怪我が治っていく。


「すごい! お父さんの怪我が!」


「おお! こりゃ、すごいな! すぐ治ったぞ。何から何までありがとな。お嬢ちゃん達、名前は? もしかして、これは光魔法か?」


「私は村上理澄……あっ、リズム・ムラカミです。こっちはライム。この光魔法のことは、他の人には内緒でお願いしますね」


 確か、フィール星では、名前が最初で姓名が後だったっけ。だから、私の場合はリズム・ムラカミになるんだよね。私は、光魔法のことについて、他の人には言わないようにお願いした。


「ああ、わかった。ありがとな。俺はクラーク・ハイドってんだ」


「私は、カリーナ・ハイドです。……あの、よろしければ、私達のお店に寄ってくれませんか? お礼がしたくて」


「お礼なんて、いいですよ、そんな。当たり前のことをしただけですし」


「はい、リズムさんの言う通りです。感謝の言葉だけで十分ですよ」


 私もライムも「さすがにお礼なんて……」と思ったから、お断りしようとしたけど……。二人から、キラキラした目で攻撃され、折れてしまった。


 ということで、これから二人の果物屋さんへ行くことになった。


 そして、歩き始めようとした時……私は、狼がまだ私達の近くにいることに気が付いた。


「えっ! ちょっと、狼さん、まだいたの!?」


「ガルッ! ガウガウ!」


 はい、何を言っているのかわかりません!! 今度は本当にわからない。私、狼語は知らないんだよね。ライム達も困惑した顔で狼を見つめている。


「ウォーン!」


 急に遠吠えしましたけど!? どうしたんだ、狼さん……!? と思ったのも一瞬で。すぐに、狼の前にステータスが表示された。


 ……もしかして、仲間になろうって言ってる?

饅頭にならなかった幸運な狼は、リズムに懐いた様子。(*´ω`*)


お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/

次回更新予定は8/16(日)です。m(_ _)m

次回予告:狼と仲間に!? &カリーナたちからのお礼について (/ω・\)チラッ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。