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14. ライムのお手製魔物饅頭が五個できました……

ライム、思っていたよりも冷淡な性格になってしまった……。

 翌日、私とライムは村へ行くための準備をして、家を出た。


「早速、杖の機能を使いましょうか」


「うん、そうだね」


 ライムの提案に私は頷く。


 マップがなければ迷う! 絶対に! だって、そもそも一番近い村がどこか、それさえも分からないんだもん!


 それなのに出発するなんて、計画性がないだって? チッチッチ。ノープロブレム! ちゃんと、杖に全て任せるという計画を立てているんですよね! だから、大丈夫! 杖は信頼できるのだ! ここに来てから約二ヶ月、その万能さに何度も助けられた私が証言する。


「“地図(マップ)”」


 ライムがそう唱えると、彼の前に全ての村が表示されている画面が出てくる。「シュン!」っていう効果音が聞こえたような……? 昨日はそんな音しなかったよね? ルカ様、追加しましたか!?


「ええと、ここから一番近い村は……あった! ここですね」


 ライムがその村のところをポチッと押すと、村の詳細情報が表示される。


 うわぁ。やっぱりすごい。さすが、超高性能万能杖! 人口とか、面積とか、歴史とか、文化とか……大量の情報が載っている。え! ここからこの村までの距離まで表示されてる! そんなことまで分かるとは……。恐るべし、超高性能万能杖。


 なになに……。ここから村までは「3km」らしい。意外と遠い……。


 ライムが「ここまで案内」と表示されているところをタップすると、グーグル○ップと同じような画面に切り替わる。最短距離で案内してくれるらしい。助かる……! さすが、超高性能万能杖!


「それでは、この通りに進みましょう。途中、魔物や生物と遭遇する可能性が高いので、注意して行きましょうね」


「は〜い!」


 ライムの言葉に元気よく返事して、私達は歩き始めた。


 二分ほど歩くと……。可愛いオレンジ色のスライムが目の前に現れる。黒いモヤッとしたものを纏っているから、魔物だ。でも可愛い……! 確認してみると、レベルは十五。まあ、私達なら楽勝だね!


 スライムは攻撃的になっているけど、移動速度は遅いから、楽に闇を取り除けそうだ。


 ライムは水の塊を作って、スライムに発射した。それは見事に的中し、スライムを覆う。


 なんか、饅頭みたい。スライム饅頭。あんまり美味しくなさそうだな。


 変な考えは捨てて、今は戦いに集中しよう。なるほど、身動きを取れなくして、且つ呼吸を出来なくしているから、このままやっちゃおう作戦だね。


 ……溺死させるつもりなのかな? ライムさん、同種にここまでするとは……。ええ、もう分かっているので何も言いませんよ。言ったところで「効率のためです」と返されて終わりだし。


 私が意味深な目でライムを見ていると、ライムは私の視線を訝しみながら言う。


「リズムさんの言いたいことは分かりました。それについては何度も説明しましたよね? あなたもそれに納得しましたよね?」


「……そうだけど。効率的なのは分かってるけど。抵抗はないの?」


「ありますけど、もう割り切っているので」


 ……淡々と言うのやめて。抵抗があるように見えないから。割り切っていても、抵抗があるなら、申し訳なさそうに言うとかないの? そんな無表情に近い顔で言われても。抵抗があることが信じられないんですけど〜。


「とにかく、リズムさんはこのスライムから闇を取り除いてくれませんか? 僕の杖は今、“地図(マップ)”モードになっていて使えませんので」


「……わかった」


 取り敢えず、私は自分の役目をやらないと! スライムを救うんだ!


 あらかじめ、杖には“浄化(サンクチュアリ)”を付与しておいた。だから、後はこの杖を身動きが取れなくなっているスライムに当てるだけだ。


「えい」


 私はスライムのところまでてくてく歩いていってスライムに杖を当てた。すると、みるみる闇が私の杖に吸い込まれていく。杖はキラキラと光る。すごいね、闇を吸い取って輝くなんて。普通は黒くなると思うのだけれど。何度見ても、きれいな光景だなぁ。


「よし、闇を吸い込めましたね。それでは、行きましょう」


「……はい!? 行きましょう!?」


 スライムはこのままで? この子、このままだと溺死してしまうんじゃ……。いいの? ライム、いいの? ライムに確認すると、「闇が取れても凶暴化しているので、しばらくはこのままでいいでしょう」と返ってきた。


 ……ねえ。ライムさん、しばらくって言ったよね? 倒す気満々じゃないですか!? しばらくじゃあ溺死しちゃうよ!


「放っておいたら勝手に倒れて、僕に経験値が入ってくるだけで済みますから」


 おいっ!! 済みませんよね!? 冷たすぎん!? ライム、こんなに冷淡な子だったっけ!? 酷いよぉ……!


「……これ以外に良い方法を思いついたのですか?」


 ライムは私に聞く。これも良い方法ではないからね!? 心の中でライムにツッコミを入れて、何か方法があるか考える。


 う〜ん……。水から解放してあげるのが一番いいんだろうけど……。解放しても、スライムは暴れるだろうから、私達に倒されて終わりだよね。……やばい、このスライムを生かしてあげられる良い方法が思いつかん。……確かにライムの方法が一番手がかからなくて効率的だ。とっても可哀想な方法だけどね!


「ほら、思いつかないでしょう? これが一番なんですよ。さあ、村へ行きましょう」


 微笑みながら言うのやめてもろて! 今のは微笑む内容ではない! スライムが可哀想だと思わないのか。ライム、無情ですね!! 


 中々動こうとしない私に、ライムは大きな溜息をつく。


「はあぁ……。逐一魔物が現れる度にそんなことをしていたら日が暮れてしまいますよ」


「でも…………はい、分かりました」


 反論しようとした私だけど、ライムからの無言の圧が強すぎて、結局折れてしまった。


 スライムへ


 うちのライムがすみません。救いたかったのですが、私には救う方法が思いつかず……。どうか、来世では闇なんかに取り憑かれないで幸せになってください。ご愁傷様です。


 理澄より


 私は、スライムに心の中でお別れの手紙を送って、また歩き出した。


 五分ほど歩くと、今度は大きな鳥に遭遇する。この鳥も闇持ちだ。なんか、闇持ち多くないっすか? 普通はこんなに闇持ちの生物(魔物)に会わないと思うけど。運が悪い……。


 しかも飛んでるし!! 杖、届かないんですけど!? どうすればいいのやら……。


 私が考えていると、ライムはまた先程の水の塊を発射して鳥に当てた。……ライム、命中率高っ! さすが、二ヶ月やっている技なだけに上手だね!


 そして、これは鳥饅頭かな? ついさっきこの光景を見たよ? まさかこんなに早く再びライムの無情攻撃を見ることになるとは……。運が悪い……。


「リズムさん、今です!」


「……はい」


 私はまた意味深な視線をライムに突き刺しながら鳥に杖を当てる。すると、闇を吸い込んで杖が光る。うん、きれい! さっきできた心の傷が癒やされるよぉ……! この光に当たって、ライムのその冷たい心も温かくならないかな。


「これで、闇を取り除けましたね。では、行きましょう」


「………………はい」


 あぁ……! 傷再び……。そうだよね、ライムの無情攻撃は私にもヒットするんだったよね。


 ライムの意見も分かるよ!? 実際に効率は良いと思うし。でもねぇ……!! 苦しいのよ! この方法は! ライムよ、わかってくれ……!


 鳥さんへ


 うちのライムがすみません。救いたかったのですが、私には救う方法が思いつかず……。どうか、来世では闇なんかに取り憑かれないで幸せになってください。ご愁傷様です。


 理澄より


 私はまた、心の中で鳥さんに手紙を送る。二枚目だよ、これ。できればもう一生送りたくないんだけど、きっとそうはいかないよね……。


 私達はまた歩き始めた。



 ――♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪――



「ああぁ……! やっっっと着いたよ〜!!」


「魔物が思ったより沢山出たので、意外と時間がかかりましたね」


「うん、そうだね〜……」


 ははは、ライムよ、私はもう疲れたよ。体力的にはまだ大丈夫だけど、精神的にはもうダメだ。


 家から村に着くまで、何体魔物が出たと思う? 五体だよ、五体!! やばくない!?


 私、あの手紙を五枚送ったんだから! もう心が苦しくて苦しくて……。誰か乗り越えた私を褒めてくれ。頑張ったんだよ、私!


「大丈夫ですか?」


「どうだろうねぇ……?」


「……すみません。あの五体の生物達のことですよね。リズムさんに、苦しい思いをしてほしくて言った訳ではないんです。ただ――」


「そうしないと、時間がなかったんだよね? うん、ちゃんと分かってるから。ありがとう。ライムは、私のために心を鬼にしてくれたんだよね」


 私はそう言っても、ライムはまだ申し訳なさそうな顔をしている。


 確かに苦しかったけど、ライムには感謝してる。これは本当だ。ライムが私を誘導してくれなければ、私達が村に着くのは夕方だろう。私一人だったら、きっとこんなに早くここまで来れなかった。


「はい、もうこの話は終わり! 折角村に着いたんだから、村を探検しよう! 回復薬を買うんだよね? 早く行こうよ!」


 私は気を取り直して、楽しむことにした! もう過ぎたことなんだから、いつまでもウジウジしているなんてダメだ!! こんなに楽しそうなところがあるんだから、切り替えて思いっきり楽しまないと損じゃない!?


「……そうですね。村を楽しみましょう!」


 ライムも、私の言葉で切り替えたようだ。ふわりと笑ってそう言ってくれた。


「まずは、泊まる場所を探さないとね!」


「はい、探しに行きましょう」


 野宿は嫌だ。きれいな所で寝たいもん!


 私達は村に入っていった。

ライムは時間通りに村へ行くためにリズムを引っ張るお兄ちゃん的存在(年下ですが)にしようと思っていたんですけどね……。なんか、冷たくなってしまいました。( ゜д゜)


お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/

次回更新予定は7/12(日)です。m(_ _)m

次回予告:宿屋に辿り着くまでのお話。(/ω・\)チラッ

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