11. ピンチはいつもアポなしでやってくる
諸事情により、本日から固定での更新を終了することにいたしました。突然の変更となってしまい、本っ当に申し訳ありません……!!
更新時間の詳細については、活動報告の方をご確認くださいますよう、よろしくお願いいたします。
レ、レ、レベル三十!? 三十、さんじゅう……。あはは、これは幻覚かな……? おっかしいな〜。私、規則正しい生活をしていると思うけどなぁ。なんか、幻覚が見えるほど疲れてるみたい。疲れている人の中には自分が疲れているって自覚がない人がいるみたいなんだけど……私、このタイプだった?
「まだ、こちらには気が付いていないようですが…………リズムさん?」
私の表情から、ライムは私の気持ちを察したらしく、慌てたように言った。
「今、お得意の現実逃避を発揮しないでくださいね!? 逃避したい気持ちは分かりますが、残念なことにこれは現実なんです! 現実を見ましょう! 苦手克服は大切です!」
「え、これ幻覚じゃないの? ……あぁ〜、そうか! ライムも疲れているんだね! だから私と同じような幻覚が見えるんだ」
「そんなわけないでしょう!? どうしたんですか、リズムさん!? あなたのこと、少し変わっている人だなとは思っていましたが、ここまでおかしい人だとは思っていませんでしたよ!?」
「私って変わってるの!? おかしいって、酷いよライム!」
なんで私はライムに悪口を言われているの!? そんなこと言うなんて、酷い! そもそも私、変わってないし! おかしくないし!! 今の会話でライムにはイライラが積もっていったらしい。私が少しショックを受けていると、ライムはイライラオーラを纏いながら静かな声で言う。
「リズムさん? 今、大切なところはそこではありません。目の前のこの生物……いや、闇を纏っているから魔物ですね。それを何とかする事が一番の重要事項です。いいですか、これは現実です。げ・ん・じ・つ! ですからね。さすがに“現実”っていう言葉の意味は分かりますよね」
「は、はいいぃ! なるほどなるほど、そうなんですね! これは現実なんですね! そして、この兎は魔物なんですね!! 分かりました、理解しました〜!!」
ひいぃ〜! ライムさん、恐い、恐いです〜! ニコニコしているけど目が笑っていなかった。“爆発まであと十秒”の幻覚が見えたよ? これはマジで! ライムって、意外と怒りの沸点低いんだね。
そして、この生物が纏っているのはやっぱり闇なのね!? カミキソによると闇を纏っている=魔物である。魔物とは闇によって攻撃的になっていて、レベルが高くなっている生物のことを言う。人間も闇に纏われることがあるらしい。恐い!
って、こんなこと考えている場合じゃない! どうやってこの魔物を倒すか考えないと……。
え〜っと……カミキソによると魔物って、闇を取り除くと生物に戻るらしいんだよね。そして、私の光魔法“浄化”を使うと、その闇は取り除くことができる。だとしたら、まずは杖で“浄化”の魔法を使う!
作戦は決まったので、私はライムにこれからやることを伝えた。ライムはそれに頷いてくれる。よし、早速杖に魔法を付与しよう! 私は肩掛けモードだった杖を元に戻して、魔力を安定させる。
「“浄化”!」
私がそう唱えると、杖が私の魔法を纏って光った。準備は完了。あとはこれをあの魔物に当てるだけ! 魔物はまだこちらに気が付いていない。今なら飛び出していけば闇は取り除くことができるだろう。
私が兎の方に動こうとしていると、ライムがあることを提案する。
「あの、僕の杖にもその光魔法を付与してもらえませんか? 二人で向かった方が良いと思うので」
「確かにそうだね。じゃあ、杖を貸して」
ライムは杖を肩掛けモードから元に戻して私に渡してくれた。
「“浄化”。よし、できた」
私は光ったのを確認してから、杖をライムに返す。
道具に魔法を付与するのは大量の魔力を消費するらしい。だから、なんか疲れたぁ……。魔力切れはないけど、たくさん魔力を消費すれば体は疲れるそうだ。ちょっと、休憩してから突撃しよう。ライムにもそれを説明したら、こう返ってきた。
「大丈夫ですか!? すみません……! 僕の杖に魔法を付与したからですね……。たくさん休んでください。もし兎がこちらに来ても、僕がこの杖で闇を取り除いて戦いますから」
「えっ!? それは大丈夫! 私も戦うよ! それに、そこまで大量の光魔力を付与したわけじゃないから。もうすぐ回復できるよ」
私がそう言ってもライムは不安そうだった。もう、心配性なんだから〜。いや、でも付与するだけでこんなに疲れるものなのか。まあ、ライムにも言った通り、今回は大量に付与したわけじゃないから回復スピードは速いけど。ほら、もう元気になったもん!
「よし、回復したよ! ありがとう、ライム。じゃあ、突撃しよっか!」
「思ったより早く元気になって良かったです。そうですね、突撃しましょう!」
頷き合って、私とライムは兎の方へと走り出した。たった五歩近づいただけで……。
うげっ! もう気付いたよ、この兎。早すぎない? もうちょっと鈍くて良かったのに〜!
気付かれたけど、元々近い距離だったからか兎の体に杖を当てることができた。私の杖は更に強く発光して闇を吸い取っていった。
おお〜! すごい……! きれい〜!
杖によって闇から解放された兎は、見た目こそ変わらないものの、雰囲気が少し柔らかくなった。私が兎の頭を凝視すると、脳内には「レベル17」の文字が浮かび上がった。これで家に帰ってくれれば良いんだけど……。
「これで、もう大丈夫ですかね……?」
生物に戻った兎を見てライムが言った。でも、兎は私達を見ると、警戒したのか急に突進してきた。
えぇ〜! 何この近距離突進! 危ないよ!
私達は慌てて避ける。するとこの兎、なんと今度は大ジャンプ! もしかして、このまま私達を潰すつもりですか!? こんなに大きな兎に潰されるの!? 堪ったもんじゃない。死因が兎に潰されたからって、何か嫌だ〜! そもそも死にたくないし!!
そんなこと考えている間に兎は落ちてくる。私もライムも何とか避けた。って、えぇ〜!? 地面がめちゃくちゃ凹んでいるのですが!? どんだけ強力&重い尻もちなのよ〜!
兎は闇が取れたばかりで混乱しているのか、攻撃的になっているようだ。こういう時はどうすればいいの……? 私が考えながら動いていると、突然兎は目にも止まらぬ速さで私の目の前に来て、炎魔法を放とうとする。
え――?
私は反応できずに固まってしまう。え……!? え……? もしかして、かなりのピンチでは? この兎の魔法攻撃を一発でも食らったら私は無事ではいられないだろう。命の危険だってあるかもしれない。どうしよう……!?
魔法が放たれて、丸焦げになる……! と思ったとき。ライムが水を纏いながら私と兎の間に割って入り、兎の攻撃を食らう。水魔法で炎を相殺しているといえど、レベル十七の生物の攻撃を受けたライムはその威力によって吹き飛ばされる。そして、木にぶつかる。
「うっ……!」
ライムの苦しげな声が私の耳に届く。ライムは背中を強く打ち付けてしまったようだ。
え――?
私の目の前には巨大な兎。近くの木の下にはぐったりとしているライム。この数秒間で起きたことについて、整理しきれない。訳が、分からない。私を庇って、ライムは……。どうして、こんなことになっているの? 何で、どうして……!?
大切な仲間が傷つけられて、私は混乱していた。
私がフリーズしている間にも、兎は次の攻撃を繰り出そうとしている。
っ! 混乱している場合じゃない! 私は大きく深呼吸をした。一度、冷静にならないと。折角ライムが助けてくれたんだ。私までやられるわけにはいかない!!
――取り敢えず、こいつを倒さないと。でも、ライムも治療したい。どうしよう……!?
私とこいつのレベルは離れている。圧倒的に私のレベルの方が低い。普通に戦えば、私に勝ち目はないだろう。
だが、私にはこいつに勝つ方法が一つだけある。どんな相手も倒すことができる、一撃必殺の技が。でも、一撃必殺なだけあって強力だから、代償がいる。私とこいつのレベルの差からして、三日魔法が使えないという代償が妥当だろう。
魔法が使えなかったら、こいつを倒したとしてもライムを治療できない……! 私が考えていると、兎は炎の球を打ってきた。私は木に隠れながら、それを躱す。よし、このまま隠れてライムの所に行こう!
兎が私を見失った隙を狙ってライムの所に行き、光魔法“癒やし”を使った。気絶しているライムの体が私の光に包まれたと思ったら、すぐに彼の怪我が治った。良かった……!
ライムの怪我が治ったのを確認して、私は兎の前に飛び出した。一撃必殺の技をお見舞いしに来たよ!! よくも私の仲間を傷つけたな! これでも食らえ!!
私は大きく息を吸って――
「“滅びの断末魔”!」
と大きな声で唱えた。すると、兎を大量の音符が覆っていく。兎の姿が音符に隠れて見えなくなった数秒後、音符がパッと消えると、兎の姿はもうそこにはなかった。
やった! 倒せた! 今回はグロい倒れ方じゃなくて良かった〜!
兎を倒せて私は一安心&大喜び。だって、レベル十七の生物に勝てたんだよ!? 誰だって嬉しくなるでしょう! そしてこの音魔法、初めて使ったんだよね。すごかった!
魔法の名前からしてなんかヤバそうだなと思っていたけど、この魔法で倒した生物の消滅の仕方がきれいで、結構良い魔法だった。“滅びの断末魔”は、唱えるとどんな魔物でも、生物でも一撃で倒せるという一番強力な音魔法。音魔法所持者の中でもこの魔法を使えるのはフィール星では私だけだ。
しかし、この魔法で倒す生物や魔物が、自分のレベルより上だと、それに合った代償を払うことになる。一番重い代償は“この魔法の使用者の命”だ。自分のレベルより下の生物or魔物相手でも、この魔法は強力すぎるがゆえに体に負担が掛かる。
私が喜ぶ&“滅びの断末魔”について整理していると、ライムが目を覚ました。
「リズムさん? あれ……? あの兎はどうなりましたか?」
「ライム! 良かった……! あいつはもう私が倒したから、安心して! ライム、ごめんね……! 私のせいで痛い思いさせて。でも、ありがとう。庇ってくれて」
「はい。リズムさんが無事で何よりです。……どうやってあの生物を倒したかは、家に帰ってから聞きますね」
「……はい」
おお、ライムよ、それについての説明は欠かさないのだな……。
でも、良かった……! 兎も倒せたし、ライムもすっかりいつも通りだし。
安心したらなんかぼんやりしてきた。それと共に、体が重くなってきて、視界も暗くなっていく。きっと、“滅びの断末魔”を使ったから、その負担だろう。
ライムが私の名前を呼んでいるような……。その声もだんだん遠くなっていって、私の意識はなくなった。
リズムとライムが格好良すぎるのだが⋯⋯!? 思ったよりすごい戦いになりました。
お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/
次回更新予定は6/28(日)です。m(_ _)m
次回予告:リズムの夢の中で、新たな出会い(?)が!?(/ω・\)チラッ




