9. ライムからの重大発表
「そういえば、伝え忘れていた事がありました」
ライムがそう思い出したように言ったのは、一緒に夕飯を食べ終わった頃のこと。
私は話し合いを終えてから、ライムに家のことを説明した。ライムが使う部屋とか、神様の結界の事とか。後者はすでにある程度説明してあるけれど改めて詳しく説明したらライムはまた驚いていた。「ぷほぁ〜」っていう奇声を発する程に。
そりゃそうだよね。私だって、カミキソで知った時は驚いたもん。むしろ驚かない人はいないでしょうね……。
でも私はその事実よりもライムの奇声に驚いたよ! いるよね、驚くと奇声を発する人。ライムがこのタイプだったとは。しっかり者のライムも、驚いたらこんな声が出てくるんだね〜。これから、驚かす事があればライムの声に注目しよう。何か、面白いものを聞くことができるかもしれない。
閑話休題、ライム、何かを伝え忘れたって言ったよね? まあ、大切な事は全て聞き出したから然程重要な事ではないと思うけど。何だろう?
聞いてみると、ライムから衝撃の一言が。
「実は、僕、人間になれるんです」
「…………うん? たった今、ライムが人間になれるとかいうとんでもない幻聴が聞こえた気がするんだけど……?」
「幻聴ではありません。事実です」
「そっかぁ〜。事実かぁ〜。…………うん? 何か、またとんでもない幻聴が聞こえたんだけど。私、疲れてるのかな」
「だから、幻聴ではありません! 信じられないのなら、見せますから!」
そう言って、ライムは腕に着けているラムネ色のブレスレットを触って、「変身」と唱えた。
すると、なんということでしょう! ライムが光に包まれて、忽ち人間の姿になったのだ。
……なるほど。これは幻覚だね。とうとう幻覚まで見えるようになってしまうとは……。本物のライムはどこへいったのだろう。
人間の姿の幻覚ライムは、ラムネ色の髪と瞳を持った美青年だった。髪の毛、艶がすごい。ぷにぷに触感かもしれない。
そして、ライム、格好良すぎない!? 可愛さも残っていて、これは神様とはまた少し違う感じの格好良さだ。カッコ可愛いというのはこういう人のことをいうんだね。ちなみに神様は神秘的な格好良さをお持ちである。
神様といいライムといい、どうして異世界の方々はこうもイケメンなのだろうか……? イケメンしかいないなんてことないよね? そんなことがあれば、私の目が潰れる可能性も無きにしも非ず。……笑い事じゃないからね……? 私の目の健康が懸かっている。
私がそんな事を考えて現実逃避(?)していると人間姿の幻覚ライムが話しかけてきた。
「リズムさん? 大丈夫ですか……?」
「ううん。大丈夫じゃないかも。あのね、今はさっきの幻聴に加えて幻覚も見えてるんだ。これって絶対に大丈夫じゃないよね……?」
「大丈夫ですよ〜。あなたは正常ですからご安心を。……どうですか? 安心しました?」
「してません」
私がそう言うと、幻覚ライムは大きなため息をついた。心なしかイライラオーラを纏っている気がする。
「ここまでしても信じてくれませんか……? どうやら、あなたは現実を見ることが苦手なようですね。そして、現実逃避が得意なんですね。僕が爆発する前にさっさと現実を見ることをお勧めしますよ」
……? はて。爆発するとは? ……はっ! もしかして幻覚のライムが爆発するってこと? なら、大丈夫かな。幻覚だし。
私の表情から私が思っていることを察したのか、ライムはまたもやため息をついて言った。
「仕方がありませんね。僕にできることは説得のみとなったようなので、最終手段を取らせていただきます」
「最終手段?」と私がライムの発言を不思議に思っていると、ライムは大きく息を吸い始めた。
……待てよ。もしかして。もしかしなくてもこれは……。ライムお得意の機関銃攻撃では……!?
今のライムは結構イライラが溜まっている筈だ。ということは、これから繰り出そうとしているのは今までで一番攻撃力が高いものではないだろうか……? これを食らったらまずいと私の中で警報がなっている。これは本当にやばいやつだ。
危険を感じた私は慌てて現実を見ることにした。
「はい!! わかりました! ライムさんは人間にもなれるんですね……!? いや〜、すごいな〜! あは、あはは〜」
私の言葉に満足した様子のライムはにっこりと笑って言った。
「信じてもらえて何よりです。この姿のほうが色々と便利なので、普段は人間になりますね」
ライムの笑顔は可愛い! そして人間の姿である今は格好良くもある! だけど、その素敵な笑顔に終始黒いものが混ざっていたような……? ライムは怒らせないようにしよう……。
私がそう心に決めた時、突然目の前に神様が現れた。
「うわぁ!」
「ぷへぇ!」
私とライムが神様の出没に驚き、同時に声を上げる。
……突然現れるのはやめてほしい。心臓に悪いから! 寿命、縮むから!
まだ、この突然の登場には慣れていないんだよね。このまま慣れなかったらどうしよう……? この問題について、「神様なんだから何とかしてくれよ〜!」と言いたい。言えないけど。
それは置いといて。私、聞いたんだからね! ライム、本日二回目の奇声を発していたよね……? 「ぷへぇ!」って……そんなこと言う人、初めて聞いたわ。驚き方、独特過ぎん?
「えっと……?」
ほら、神様も困惑しているから! やっぱりライムの奇声には驚くよね。
「そちらの方は……?」
あ、そっちか。まあ、普通はそっちだよね。
「こちらは今日、仲間になったスライムのライムです!」
「お、お初にお目にかかります。ライムです」
「初めまして。僕はこの星の守護神のルカだよ。そんな堅苦しい言葉使わないで、もっと楽にしてよ」
「そ、それは……なるべく善処します」
神様相手に楽には無理だと思います……。ライムの気持ち、すっごくよく分かるよ。神様もそれは少し分かるのか、苦笑いして言った。
「うん。善処、よろしくね。それで、ライムはスライムなの? ……人間の間違いじゃなくて?」
「はい。今は人間になってますけど、スライムですよ」
「……? どうして?」
「確かに……なんで?」
私と神様は説明を求めてライムを見た。
そういえば、どうやって人間になったのかの説明は受けていないような……。多分、ライムが身に着けているラムネ色のブレスレットが関係しているんだろうけど。
私達から説明を求められてライムは慌てて口を開いた。
「えっと……その“どうして”は人間になろうと思った理由についての説明ですか? それとも、どうして人間になれたのかについての説明ですか?」
「両方についての説明で」
「では、まずは人間になろうと思った理由をお話します。それは……単純に、スライムよりもこちらの方が
便利だからです」
「「確かに」」
私と神様の声が重なる。
うん。確かにスライムよりも人間の方が走ったり歩いたりしやすいよね。だって、スライムは歩くの大変そうだったもん。移動するには逐一ジャンプしないといけないしね。神様も多分同じ事を考えたんだろうね。私と同じですぐ納得していたし。
「そして、どうして僕が人間になれたのかについてですが……端的に言うと、このブレスレットのおかげです。これは、どのような生物でも好きな生物に変身することができるという魔法具なんです。自分がなりたいと思っている生物を想像しながら“変身”と唱えると、その生物になることが出来ます。しかし、変身できる生物はこのブレスレット一つにつき一種類のみだそうです。僕は人間になるためにこれを使ってしまったので、もうこのブレスレットは“人間になるためのブレスレット”と言えますね」
な、なるほどぉ……! そんなすごい魔法具があるのか、この星には。いや、あるわ。今、目の前に。そして、確かこの家にある食料庫も魔法具だ。魔法具すごすぎ!
私が驚いていると、神様はライムに質問した。
「どうしてそんなものを持っているの?」
確かにどうして!? 普通にしていたらそんなもの持てないでしょうよ。十五年間誰にも会わなかったライムのことだから、誰かから貰ったわけではないと思うけど……。
「これ、僕が生まれたダンジョンに落ちていたんです。それをそのまま拾って使いました」
それをそのまま拾って使ったって……。ライムも、そういうことするんだ。
「そうなんだ。あ、ライムも杖いる?」
「杖ですか?」
「うん。僕が今持っている杖。そのブレスレットと同じく魔法具なんだ。神世界にしかないけど。リズムも
持っているよね」
「はい。今は肩掛けモードにしてますけど」
「この杖に、魔法を付与して使うとその魔法を強化できるんだ。あと、魔力も安定するね。“助けて”って言ったら僕が駆けつけるっていう安全機能も付いているよ」
「そ、そうなんですか。すごいですね……」
神様は平然とした顔でそんなこと言うけど……ライムはその性能の良さに困惑している。まあ、そうなるよね。特に安全機能の部分に関しては、すんなりと受け入れられる方が異常だよ。というか、この杖、魔法具なんだ!
「これを使ってリズムと一緒に闇を消していってくれたら助かるよ」
「闇とは……?」
神様はライムに、今のフィール星と闇のことを説明し始めた。
新美青年誕生! リズムは目の健康を保つことができるのか⋯⋯!?
お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/
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次回更新予定は6/14(日)です。m(_ _)m
次回予告:神様とのやり取りの続きと、ライムとリズムのレベル上げです!(/ω・\)チラッ




