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鑑定眼の社畜、今日もブラック魔王軍でなんとかがんばります!  作者: 鳶丸


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第040話 社畜、魔王軍四天王がいることに喜びを感じる


 ギーガ親方の鍛冶工房を後にして、煙草を手に入れた。

 もはや無敵かと思える量が手に入ったオレは、気前よく一服つけていた。

 

 ちなみにこのキセルなんだけど、清浄化の魔法を使うとかんたんにメンテナンスができるんだ。

 中をホジホジしたりする必要が一切ない。

 

 ものすごーく便利。

 むしろ前世でも欲しかったくらいだ。

 

「ハルト、結局のところ防衛拠点はどうしますの?」


 今は王城の離宮でのんびり喫煙の最中だ。

 長椅子に足を放り出して、のんべんだらりの構え。

 

「そうだな。まず喫緊の問題は赤デブラ渓谷がだろ?」


「ですわね」


「ただ、魔王軍としてはどこを優先してほしいのかわからん」


 そうなんだよな。

 こういう戦略? 戦術? 的なことはなーんも考えてなさそうだもん。

 あのちびっ子魔王様。

 

 というか、いざとなったら自分が出張ればいいと思ってる節がある。

 たぶん、それだけの実力があるんだろうけどな。

 

 まぁそういう場合、得てして細かい作戦なんて考えない。

 そもそも必要ないからな。

 

「そうですわね。わたくしも実際のところはわかりませんが、キユタ遺跡からつながるバルグジャ大回廊は緊急性が低いと思いますわよ」


「あーめっちゃ山道とか言ってたところだよな?」


 オレのイメージとしてはあれだ。

 三国志とかで見た蜀へといたる道だな。

 

 こう崖のほっそいほっそいところに道を作ったみたいな。

 ちょっと風にでも煽られたら、真っ逆さま。

 そんなイメージだ。

 

 まぁいくら魔法がある世界でも、そんなところから攻めてくるバカはいない。

 いや……いないよな?

 

「そうですわ。ここはかなり道が険しいので、軍で攻めることはほぼ不可能だと考えていいでしょう」


「ちなみになんだけどさ、ヴェラみたいに空を飛べるやつとかいそう?」


 ふとした思いつきだ。

 

「いない、とは断言できませんわね。ただ、飛翔魔法はとんでもなく魔力を使いますのよ?」


「なるほど。難しいってことだな」


 オレの言葉に頷くヴェラだ。

 灰を捨てて、新しく煙草の葉っぱを丸めて火をつける。

 このくらいは生活魔法でどうにかできるようになったぜ。

 

「じゃあ、なんとかの洞窟か、なんとか渓谷か」


 名前が横文字だから覚えられないんだよ!

 

「ナコピェの洞窟と赤デブラ渓谷ですわね」


 そうそれ。

 偉いぞ、ヴェラ。

 しっかりフォローができるのは。

 

「んーどっちの方がいいんだろうな」


「そうですわね。わたくしはどちらかと言えば、赤デブラ渓谷の方がいいと思いますわよ」


「その理由は?」


「いくつかあるのですが……まず比較的に魔王城から近いということですわね。それと、この場所を任されている四天王がいるのですが」


 ちょっと待った!

 い、いま四天王って言ったよね?

 絶対に言ったよね?

 

「言いましたけど……それがなにか?」


「ばっか、お前。四天王って言ったら四天王よ!」


 数々の有名フィクションででてくるんだもん。

 そんなの現実にいるとは思わないじゃん。

 やっぱりファンタジー!

 

「よくわからないですが……話を戻しますわよ。この場所を任されているのが水魔ルロリス。彼女は水妖精(ニンフ)と人間の混血なのですわ」


「ちょっと待とう。色々と情報過多だ。ええと……なんだって、水魔ロリ……ロリイエス?」


「ちがいますわ! ルロリスです! 言ったでしょう? 彼女は混血なので、人間にも理解があると思うのです。他の四天王に比べると!」


 あーそういう意味でな。

 まぁ確かにあの疎外感を感じる視線はしんどいもん。

 

 ここのところはいい人ばっかりだったからな。

 ギーガ親方しかり、龍人族しかり。

 あと、モアナとメルもか。

 

 そういう視点はすっぽり抜けてたな。

 

 防衛拠点を作るのはいい。

 だけど、拠点を作るってことは魔族たちの最前線にいくわけだ。

 そりゃあ色んなヤツがいる。

 

 魔王城の中だって文官たちは、オレのことを嫌な目で見るわけだし。

 最前線にいけば、人間を恨んでいる魔族だっているだろう。

 

 ……なるほどな。

 ヴェラの気遣いに感謝だ。

 

「あ、そうそう。ひとつヴェラに確認しておきたいんだけどさ」


「なんですの?」


「兵站はどうなってるの?」


「へ、へいたん? ってなんです?」


 んー?

 大丈夫か、魔王軍よ。


「兵站ってのは、ものすごくかんたんに言うと、食料とか武器とかそういうのをどうやって補給するかってこと」


「食料はロリマミ大湿原があるので、あんまり心配は要らないと思いますわよ」


 またロリ! ロリばっかりじゃないか!

 

「ちがいます! ルロリスです!」


「ロリが入ってますけど?」


「き、気のせいですわ! まったくもう!」


 私、怒ってます的な表情になるヴェラであった。


「まぁいいや。じゃあ武器は?」


「赤デブラ渓谷に配置されているのはゴーレムと魔獣が中心の部隊ですわよ?」


「ああん? ……ってことは武器が要らないのか!」


 これも完全に盲点だったな。

 そうか、魔王軍で武器が要るのって人型だけか。

 

 ギーガ親方の鍛冶工房を先に回ったから、てっきり武器が必要だと思ってた。

 こりゃあ魔王軍って、色んな意味で認識を改めておかないとな。

 お賃金もないことだし。

 

「そうですわね。ロリルス(・・・・)も魔導師型ですから武器は必要としませんし」


「……今、完全にロリって言ったよね?」


「言ってませんわ! ハルトと同じにしないでくださいまし」


 ぷんすこしているヴェラだ。

 どうにも気づいていないらしい。

 

 いや、そういう態度をとっているのかな?

 よろしい、ここは詰める一手だ。


「いいや、言ったね! 完全にロリルスって言ったもん」


「言ってませんってば!」


「じゃあ、四天王の一人は?」


「水魔ロリルスですわ!」


 そんな自信満々にまちがわれてもな!

 爆笑するっきゃねーだろが!


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