第039話 社畜、ギーガ親方に挨拶をする
神の試練。
それは遙か昔に神から贈られた試練の場……らしい。
まぁ要するにダンジョンだな。
聞けば聞くほどダンジョンだ。
魔族領にも幾つかあるらしい。
で、魔王様はそのうちのひとつを踏破したんだって。
ニヤニヤしながら、暇つぶしだったがなとマウントとってたけど。
まぁそれはいい。
大事なことは、ダンジョンを作る能力とかあるのかってこと。
残念だけど、そういうのはないらしい。
となると――手作りダンジョンか。
それもそれでおもしろそうだな。
っていうか、魔族には色んな適性を持っている人がいるはずだ。
そうした人たちと力を合わせて防衛拠点を作ってしまう。
最初はなんとかの洞窟がいいかなと思う。
だけど、攻勢が強まっているんなら、渓谷の方でもいいだろう。
前線でがんばってもらっている間に後方に作る。
一筋縄ではいかないようなダンジョンを。
なに、作るのは最大で三個だ。
そんなに大したことじゃない。
と、思いたい。
「ふむぅ……なるほどな」
ってことをオレを語ってきかせたわけだ。
どうせ寄せ集めの魔王軍なんて、ほぼ軍として機能してないんだから。
なら、防衛拠点をしっかり作りましょう、と。
オレだってニンゲン側に攻め込む気はない。
侵略するなんて面倒臭いことしたくないんだよね。
そもそも集団転移してきたヤツらだっているし。
だったら、とりあえずは攻勢を防ぐだけでいい。
その間に色々と準備できることはあるだろうからな。
「まぁ細かい仕事を任せたいという気持ちはあるが……」
魔王様が言う。
「ハルトの力を発揮させるには、その方がいいか」
「わたくしもそう思いますわ!」
おっと、ヴェラは乗り気のようだ。
「いいだろう。防衛拠点となるダンジョン作成を命じよう!」
ただし! と魔王様が声を張り上げた。
「わらわのご飯はどうしてくれるのだ!」
と言われても、だ。
しらんがな。
そりゃあ現場監督としてダンジョンを作りに行くんだ。
何日かかるかわからないが、当然そっちに出張するわけ。
となると、こっちには帰ってこれないからな。
「いっそのこと魔王様も一緒に行けばいいのですわ!」
ヴェラがまたとんでもないことを言いだした。
できるわけねーだろ。
ちびっ子だけど魔王様なんだから。
「いい考えだ! それを待ってた!」
乗り気! まさかの乗り気なの!
ってか魔王城でのお仕事どうすんだよ?
二人で盛り上がっている魔王様とヴェラ。
こいつらがトップで大丈夫か?
魔王軍よ。
なんだかんだとあったが、すぐに決定とはいかなかった。
で、要検討ということで、今は魔王様たちが会議中だ。
一方でオレたちはと言うと、鍛冶場に顔をだしていた。
「あー! ハルト!」
メルだ。
すっかり鍛冶場に馴染んでいるみたいだ。
「ハルト、体調がよくなったのですね」
モアナもいる。
そりゃそうか。
この二人がいなきゃ話にならんもんな。
「んんー、ハルト? 戻ってきたんかいな」
ギーガ親方だ。
今回は巨人サイズで、前掛けをつけている。
ってことは鍛冶をしてるのかな。
「親方、久しぶり!」
おう、と笑ってくれるギーガ親方だ。
「炉の調子はどう? 順調だって聞いたけど」
がはははと笑いながら親方が言う。
「調子ええでかなわんわ」
そりゃよかった。
ヴェラに例のアレをだしてもらう。
炎晶石だな。
「親方、これ」
「んー、なんやこれ?」
「炎晶石の鉱石ってやつ? なんか加工したら炎晶石になるんだって。親方ならなんとかなるんじゃない?」
かかかと大笑いする親方だ。
でもなんだかちょっと迫力がある笑い方だな。
「ほぉ……そりゃあ、やりがいあるがね!」
「今日はそれを渡しにきたんだよ。親方ならなんとかすると思ってさ」
本当のことを言えば、鑑定眼先生は加工の方法も教えてくれた。
だけど、なんでもかんでも情報を渡せばいいってわけじゃない。
特に親方みたいな職人にはな。
試行錯誤しながら、あれこれ試すのが楽しいんだから。
ってことで少し雑談してからお暇する。
最後に聞いておくことはっと。
「ギーガ親方! 香り草ってどこで手に入れるの?」
「そりゃあ、備品係に行きゃええがね」
「え? そこで手に入るの?」
メテナ廃神殿へ行くときに、あれこれ借りた場所だ。
あそこにあるの?
親方に礼を言って、備品係へ。
そこで念願の香り草を手に入れることができた。
しかも、いっぱい。
ぬわははは。
この無敵感。
懐があったけえと気もでかくなるぜ!
さぁこれで準備は整ったな。
「なにも整っていませんわね」
「ヴェラ、ひとつ教えてやろう」
「なんですの?」
「正論ってやつはなぁ、時に人を傷つけることもあるんだよ!」
「しりませんわ」
なんてやつだ。
情の機微を理解せぬとは。
さすが悪魔っ娘だな!
リアル多忙のため、かなりゆっくり更新になると思います




