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3.庶民に聖女は難しい

「聖女さま、お待ちしておりました」


見上げるほど大きなお城の前に、ずらりと並んだメイド服姿の女の子たち。

その女の子たちの前にいる、メイド服とは違うきれいなドレスを着た5人の少女。

さらにその先頭に立つ、鮮やかなレモン色のドレスを着た子が、代表するように私に言ってきれいにお辞儀をした。


おぉ…これは、よく見る貴族のお姫様のお辞儀だ。スカートをつまんで、とても優雅に腰を落としている。


「あの…これは、」


私をこのお城まで連れて来てくれた執事のような人に訪ねた。

彼はにっこりと私に笑いかける。


「聖女さまのお世話係でございます」



『私は……この国に協力しません!』


私の言葉に、王様やその周囲の人たちは大慌てだった。


『も、もちろんそのようにいたします。ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。聖女さまも、カナ殿も、この王城でもっとも良い離宮に部屋を用意いたします。ただ…このような事態は想定しておらず、早急に準備をいたしますがそれまで多少のご不便をおかけしてしまいますが…、どうかご容赦を』


いい年した男の人が本当に困った顔をしているのを見て、私も少し申し訳なくなった。

協力しない、なんて…言い過ぎたかな。

もちろん、そんないじわるを言うつもりじゃなかった。

ただ、カナちゃんが「身分のない者」と呼ばれて私も頭に血が昇ってしまったのだ。


『もともと聖女さまのための離宮は用意しておりますが…お休みになる部屋は、一室しかなく、』

『とりあえず、今日はその部屋でかまいません。予定外だったんだから、部屋がひとつしかないのはしょうがないことですよ、ね。一緒に行きましょう、メイさん』


結局カナちゃんと同じ部屋ということになってしまった。

う~ん、あんまりよろしくないけど……確かに、予定外だったんだろう。


『今日だけだよ、カナちゃん。同じ部屋は絶対ダメだからね、』


カナちゃんは無言でにっこり笑った。



そんな感じで、なしくずし的に一緒の部屋で休むことになってしまったアイドル・カナちゃんと一介のオタクである私は、王様に離宮を用意してあると言われ、案内の人についていくように言われた。


私たちが召喚されたのは、王城の中でも王様やその家族が住む中心の王宮。

歴代の聖女は、その王宮の近くにある離宮ということだった。


私とカナちゃんは馬車に乗せられ、このお城に連れてこられたのだが……。


そこで信じられないくらい大勢のお世話係?に迎えられた、というわけである。


「聖女さま、はじめまして。ラム・ユフィンと申します。聖女さまの身の回りのお世話をさせていただきます。あら……そちらの方は……」


わっかわいい!アイドルみたい!

思わずドルオタの血が騒いでしまう。色鮮やかなドレスを着た女の子たちはまるでそれぞれのメンバーカラーをまとったアイドルみたいで良い。

ドレスを着た女の子たちは5人、レモンイエローのラムちゃんの他に、ピンク、オレンジ、ラベンダー、グリーン。カナちゃんのさわやかなクリアブルーとかぶってないのもよかった。


「彼女は、カナ殿。聖女さまの大切なお方だ。聖女さまと同じようにお世話するように」


私の後ろから、執事さんが厳かに言う。うん、助かります。それでお願いします。


「かしこまりました。さ、聖女さま。カナさま。お疲れでしょう、中へ」


ラムちゃんは私の手を取って、お城の中へと促す。

わっ、やわらかい手…ふわっと良い匂いがする。


「ラム嬢、聖女さまは……」

「後のことはこちらにお任せになって。聖女さまのお世話はきちんといたしますわ。殿方はお下がりになって」


ツンとした感じもいい!

ラムちゃんは、お世話係と言っていたけど…お嬢様なのかな?しぐさも優雅で、ちょっとワガママそう。でもしっかりしていそうだ。他のドレスの子たちのリーダー格っぽいし。


「あの、ラム…ちゃん、でいいのかな……」


明らかに私の方が年上だし、ちゃん、で良いのかな……。


「はい、なんでしょう。聖女さま」

「えっと…これから、私は……私とカナちゃんは、どうなるの?」


「はい、そのあたりもご説明するよう仰せつかっております。でもまずはとりあえず、……」

「とりあえず?」

「とりあえず、お風呂ですわ!」


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