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3-2

まずは、お風呂。そして着替え。

そう言われて私はのんきに「そっかーわかった」と思ったけど、そこからが大変だった。


「待ってー!自分で脱ぎます!」


伸びてくるメイドさんの手。

服を脱ぐことすら自分でさせてもらえないなんて。


「そんな…聖女さまのお世話ができないなんて……」

「私たち、何か聖女さまのご不興を買ったのでしょうか……」


ところが、メイドさんたちは泣き落としをしてくる。

私が女の子の涙を無視できないと知っていて……!?


「お任せしたほうが早いですよ、メイさん」

「カナちゃん!なんでそんなあっさり脱がせてるのー!」

「みなさんのお仕事を取ったら、悪いですから」


カナちゃんの順応性の高さ、すごい。


「あーっ、てか、裸はまずいですよ!いや!オタクの前でそんな!」

「女の子同士じゃないですか…」


いや、そうだけど!

いくら同性だからって、アイドルとオタクなんですから……!


自分の手で目を隠していると、カナちゃんはすたすたと浴室のほうに向かってしまった。


私の周囲には、困り果てた表情のメイドさんたち。

もう覚悟を決めるしかないのか……。


「……えっと、じゃぁ…お願いします……」



お風呂は銭湯くらいの広さがあったから、私はカナちゃんには極力近付かないようにした。

というか離れた場所でメイドさんたちに泡まみれにされ、体を隅々まで洗われてそれどころではなかった。


私がいちいち

「自分でします!」

「大丈夫です!」

「いや本当に!汚いんで!!」

と暴れている一方で、


カナちゃんは静かにメイドさんたちに身を任せているようだった。

アイドルだから…慣れてるのかな……?


カナちゃんはやっぱりすごい……。



お風呂を上がったら、今度はお洋服選び。


ずらっとドレスが並べられた部屋に通されて、さっきとは違うメイドさんたちに


「聖女さまは何色がお好きですか?」

「どのようなデザインが、」

「髪型はいかがなさいましょうか」


と口々に言われ。

正直、なんでもいい……。私なんて飾り立てても……。


と思ったけど、でも。

同じ部屋でカナちゃんもドレスを選び始めたから、むくむくとオタクの本能が。


「あっ、このドレス、カナちゃんに似合うんじゃない!? カナちゃんと言えばやっぱりクリアブルーだよね!フリルよりはレース使いが繊細な…、スカートは膨らみすぎないもので、うーん、こっちのバックリボンもかわいい……」


急に生き生きしだした私を見て、メイドさんが目を丸くした。


「まぁ。聖女さまは、カナさまのドレスを決めるのがお好きなのですか?」

「そうなんです!というか、こんなの着てくれないかな~って普段から妄想してて!やば!夢が叶っちゃう……!」

「まぁ、素敵です」


うふふ、とメイドさんが微笑んで、


「では、こちらのジュエリーを合わせるのはいかがでしょう?」


と言って大きなジュエリーボックスを見せてくるので、当然加速。


「わっ、素敵です…!このネックレスとか、きっとカナちゃんに似合う!」

「まぁ、本当」

「さすが聖女さま。すばらしいセンスですわ」

「カナちゃんに似合う衣装は、普段から本当にすごい考えてたので…!!」

「あー、もう。メイさん、私は自分で決めますから。メイさんも自分のを決めてください」


ところがカナちゃん自身からストップがかかってしまう。


「あ…っ、オタクのキモいとこ出てた…すみません……」


妄想が現実になると思ったら、おさえきれず。

しゅん、とうなだれる私に、カナちゃんはそれでも優しかった。


「着せ替えごっこは、また今度にしましょう。とりあえず今は、侍女のみなさんをお待たせしてるようですから」

「え、そうなの?」

「えぇ、さっきお風呂でメイドさんたちに聞きました。着替えたら、ラムさんたちが今後のことについてご説明してくださるそうですよ」


お風呂で、私がバタバタ洗われている間に、カナちゃんは情報収集してたんだ。

カナちゃんのほうが年下なのに…しかも私に巻き込まれただけなのに……。


「ごめんね、カナちゃん……、私、ふがいなくて……」

「……メイさん、」


申し訳なくてうつむいてしまう。

私ときたら…何にもできなくて。それなのに変なところではしゃいで。


「メイさん、大丈夫ですよ」


それなのに、カナちゃんはそんな私の手をぎゅっと握った。


「ここの人たち、みんな良い人ですし。なんとかなりますって。……それに、ひとりじゃないですから」


大丈夫ですよ、って。

カナちゃんはいつも私に言ってくれた。


試験が大変な時。

バイトで失敗したとき。

就活がうまくいかないとき。


私は弱音を吐いたり愚痴を言うのが苦手で、いつも溜め込んでいた。

そんな時に、カナちゃんはいつも気付いてくれて。


『あれ?メイさん、なんだか疲れてます?』


何も言わなくても、私の手をぎゅっと握ってくれて。


『大丈夫ですよ。メイさんには私がついてますから』


ひとりじゃないって言ってくれた。

いつも元気をくれた……。


「うん……そうだね。ありがとう、カナちゃん」


顔を上げると、カナちゃんはにっこりと笑ってくれた。

アイドルとして、私に接する必要なんてもうないのに。


アイドルじゃなくなっても、カナちゃんは根っからの「他人を元気にできる人」なんだ。


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