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1-2


何度思い出しても、いい。

私とカナちゃんの出会い……。


それから3年が経ち、私は就職し25歳に。そしてカナちゃんは19歳になった。


試験勉強がつらかったとき、どろどろの三角関係に(まったく関係ないのに)巻き込まれそうになったとき、バイト先でちょっとモラハラされたとき、就活で行き詰っていたとき。


私を救ってくれたのは、いつもカナちゃんだった。

キラキラの笑顔をくれたカナちゃん。

救われるような歌声を届けてくれたカナちゃん。

小さなライブハウスのステージにカナちゃんが立っているのを見ると、いつも元気が出た。カナちゃんに会うため、特典会に参加するためと思えば、なんでも頑張れた。


でも、会えるのは……今日で最後。


カナちゃんは、グループを……アイドルを、辞める。



ずっとグループを大きくしたい、もっと大きな舞台に立ちたいと言っていたカナちゃん。でも残念ながら、その夢はかなわなかった。


先日、カナちゃんのグループ脱退が発表された。

地下アイドルの宿命。

地上を目指して、かなわずに辞めていく。


カナちゃんも今年で20歳だ。これから先の人生を考えたら、これが一番良いんだろう。

……ただのアイドルとファンという関係の私たちは、もう一生会えなくなるけど。


脱退が発表されたのは、わずか1ヶ月前のことだった。

いや、1ヶ月も猶予があったのは不幸中の幸いだ。週に1度のライブハウスで私はまだ今までの感謝を伝えることができた。手紙も書いた。今までの貯金をはたいて、ライブ後の特典会は完売させた。


でもそれも、今日が最後。


「カナちゃん、今までありがとう」

「メイさんも…最後まで来てくれて、本当にありがとうございます」


カナちゃんは私の手をぎゅっと握った。

3年間可能な限りライブに通った私は、完璧に認知されている。ファンの数自体少ない地下アイドルの現場では珍しいことではないけど、カナちゃんは馴染みである私にもいつも敬語だ。


そんなところもストイックで好きだった。

でも、そんなカナちゃんに会えるのも、今日で最後。

最後だから、笑顔で送り出したい。

そう思っていたのに…涙があふれてくる。


「あのね、カナちゃん、私。カナちゃんに言いたいことが……」


私はカナちゃんの手を両手でぎゅっと握った。

カナちゃんはとってもかわいい笑顔で首を傾げる。本当は、言いたいことなんか伝えられるはずない。

3年間、私のすべてをかけてカナちゃんを応援してきた。それを、こんな少しの時間で伝えきることなんて…できるわけない。


それでも、なにか一言でも伝えたくて、私はカナちゃんの手を握った。


騒がしい周囲の音。その中で私の声が良く聞こえるようにか、顔を近づけてくれるカナちゃん。


あ、まただ。

カナちゃんは話をよく聞こうとするとき、顔を近づけるクセがある。

ファンの中には危ない人もいるから、やめたほうがいいって何度も言ったのに……最後まで、そのクセなおらなかったね。


いや、それにしても……近い!近すぎる!さすがにかわいすぎる!かわいすぎてまぶしい!


私はぎゅっと目をつぶった。

いや、かわいすぎてまぶしい?って、比喩じゃなく本当にめちゃくちゃまぶしくない?なに?照明トラブル?


そのまぶしさの中で、私は目を開けられなかった。


「おぉ……召喚の儀式は成功しました!」


まぶしさの中で、そんな声が聞こえた気がする。


……召喚の儀式?


まぶしさがようやく収まった時、私が見た景色は……さっきまでいた、小さなライブハウスとはまったく違う場所だった。


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