1.推しは私の人生
推し活。
それは人生。
つらいとき、悲しいとき。
推しの笑顔で、歌で、私は元気をもらった。
推しのために働いて、稼いで。
それもこれも、推し活のため。
*
私の推しは、「Ydol」というアイドルグループの伊豆田カナちゃん。
メンバーカラーはクリアブルー。メンバーで一番歌がうまくて、歌いだしやサビなどの大事なところの歌唱を任されることも多い。
カナちゃんとの出会いは3年前、大学生になって初めての夏休み。
駅前でチラシ配りをしていたのが、カナちゃんやYdolのメンバーだった。
「私たち、ライブしまーす!」
「良かったら来てください!」
夕方までのバイトが終わって、家に帰るところだった。
駅前はそれなりの繁華街だ。チラシ配りをしている人は珍しくもないけど、ヒラヒラのアイドル衣装に身を包んだ彼女たちはちょっと目立っていた。
いわゆる地下アイドルってやつか。
なんとなく存在は知っている。でも私はそれまでアイドルを好きになったことなんてなくて、これからもないだろうと思っていた。
友達の中には、一生懸命推し活をしている子もいるし、たまに付き合ってライブに行ったりすることもあるけど。
なんかああいう、きゃぴきゃぴしたのは苦手だし……。
さりげなく離れようとした私を追いかけてきたのが、カナちゃんだったのだ。
「おねえさん!今日って、何かご予定ありますか?」
ちょっと離れたところにいたのに、走ってきた!?
きれいな水色のフリルの衣装を翻して、わざわざ声をかけられたことに私は驚いて固まってしまった。
「あ、えっと…、いや、予定は…ないです、けど……」
はずかしいくらいしどろもどろになってしまう。
私は今までの人生でそう目立つほうではなく、彼女たちのような華やかな人たちとはあまり接点がなかった。おどおどした私の態度はお世辞にも褒められたものではなかったと思うが、私の言葉に彼女はにっこり笑った。
「わたしたち、Ydolっていうアイドルグループやってます!今日、そこのライブハウスでライブするので、良かったら!ご新規さんは割引チケットがあるので!」
そういって、チラシを差し出す。
ニコニコ笑った女の子たちが並んだチラシには、今日の日付が書いてあった。
「ライブ…、って、女がひとりで行ったら、浮かない?」
「え……っと、ちょっと珍しいかもです、けど!まったくいないってわけではないですし!それに!」
にこっ、と笑う。
その笑顔がまぶしかった。
「私が、お姉さんに来てほしいなって!」
「え……、」
「私、伊豆田カナっていいます!一生懸命ライブするので、来てください!」




