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私とカナちゃんについて……。
私が言葉に詰まっていると、ラムちゃんはにっこりと笑った。
「ただの世間話ですわ。緊張なさらないで」
ちょうどいいタイミングで、私の目の前のテーブルにお茶が置かれた。次に、カナちゃんの前にも。それからクッキーやらなんやらの焼き菓子が載せられたお皿。
テーブルの上は、ちょっとしたお茶を楽しんでいるような雰囲気だ。とはいえ、座っているのは私とカナちゃんだけ。
お茶を持ってきてくれたメイドさんたちはもちろん、ラムちゃんたちも立ったままで緊張しないでと言われても……。
「……ラムちゃんたちも、座ったら?正直に言うと……ちょっと、話しづらい」
「あら。これは失礼いたしました」
私がそう言うと、すぐさまメイドさんたちがどこからかテーブルと椅子を運んできた。
私とカナちゃんが座っているテーブルには、ラムちゃんが同席するかたち。
離れたところにある執務机にはサシャちゃん。記録が取りやすいようにだろう。
そして運ばれてきたテーブルに他の3人が座って、あっという間にそれぞれのお茶の準備が整えられた。
メイドさんたちが何人いるかはわからないけど、驚くほどの手際の良さだ。
「サシャが聖女研究に長けているとお話しましたが……わたくしたちも、一通りは習っております。歴代の聖女さまたちは、あまり身分の上下にこだわらない方が多いとか。メイさまもそうなのですか?」
「うん、まぁそうだね。身分とかはあまり考えないかな。……まぁ、カナちゃんが尊い存在だとは思うけど」
「尊い?とは?」
「カナちゃんは、特別な存在なんだよ」
ちら、と隣を見る。
カナちゃんはこの状況に順応しているように見える。少なくとも表面上は落ち着いているけど、私は……正直、まだ信じられない。
カナちゃんとこうしてならんで、お茶を飲んでいるなんて。
「あ、でも去年のバスツアーでは一緒にバーベキューしたよね」
「そうでしたね。一昨年のお茶会では、一緒のテーブルになれませんでしたけど」
「え…っ、一昨年のこと覚えてるの?」
しかも、一緒のテーブルになれなかったということまで。
「当たり前です。私はファンのことは覚えていますよ」
「神アイドル……っ」
いくら規模の小さな現場だからって……神対応すぎる!
私が涙ぐんでいると、ラムちゃんは首を傾げた。
「神……ですか?」
「そう!カナちゃんは……!」
「えーと、ラムさん。メイさんは、私のことになると、ちょっとおかしいんです」
前のめりになる私をぐい、と押しとどめて、カナちゃんは言った。
えーんなんだか塩対応。でもそんなところもいい。
「メイさんは私のことが大好きで、すべてが良く見えるんです。だから、メイさんが私のことを言う時は3割…いえ、5割減くらいで聞いてください」
「カナちゃん!なんてこと言うの!」
「一般人に熱すぎるオタク語りは引かれますよ」
「う……っ、それは……!」
熱すぎるオタク語りについては、確かに思い当たる節が……。
私たちの様子を見て、ラムちゃんはくすくす笑った。
「メイさまは、カナさまのことが大好きなんですね。わかりましたわ」
さざめくような笑いが部屋に広がっていく。
それはもちろん、悪い類のものではない。かわいい女の子たちが楽しそうにしていて、とても癒される。
「おふたりは姉妹とか家族というわけではない…ということですわよね?」
「それはもちろん、カナちゃんと家族なんて恐れ多いです。カナちゃんはアイドルで……えぇ、とアイドルはないんだっけ」
「歌手、という職業はありますか?」
カナちゃんが助け舟を出してくれたが、ラムちゃんは首を振った。
「かしゅ、という仕事は聞いたことがありません」
「えぇと…歌い手というか。歌を歌うのが、私の仕事なんですが」
「まぁ、歌を…ですか?聖歌隊はありますが、それを生業にしているという人は聞いたことがございません。楽器を演奏する音楽家はいますが……、」
そうなんだ!
歌手がいない世界なんてあるんだなぁ。
「カナちゃんの歌は素晴らしいんだよ。身も心も癒されるし、ダンスも……」
「メイさんは私の歌が好きで応援をしてくれているんです」
「なるほど、メイさまはカナさまの支援者ということなのですね。ということは、もしかしてメイさまは貴族のお生まれで……?」
支援者、というと……パトロン?
パトロンをしているということは貴族なんだろうっていうこと?
「いや、そんなんじゃなくて…、私たちの世界では、誰でも気軽にそういう人たちを応援するの。もちろん私はカナちゃんに人生をかけてるけど、」
「まぁ、人生を!」
「ごめんなさい、本当にメイさんは大げさに言っているんです」
カナちゃんにじろりとにらまれた。
いや大事なポイントだからそこは…本当に人生かけてるから……ていうかそういう顔もかわいい……。
思ったけど口に出したら怒られそうだから、私はぐっと口を閉じた。




