1度目の記憶
「ドンリー王よりアルタリスク公爵家へ王命である。アルタリスク公爵の王族への侮辱罪、そして王国を混乱に陥れた大罪人。よってアルタリスク公爵家全員を王宮の地下牢へ収監とする!」
「アルタリスク公爵家は断じて王家に剣を抜いていないと誓えます。それなのになぜ!?公爵はこの戦争を引き起こすべきではないと止めていたんですよ!?」
「王が決めた戦争に口を挟んだ。これは王に逆らった証では。」
「あなたたちはこの戦争が正しいとでも言うの!?騎士の立場である以上、自分や仲間の命が失ってしまうかもしれない戦争を自国の王が己の欲の為に始めたのよ!?それも勝ち目など全くない!!」
冷ややかに言い放つ騎士へ立ち向かうお母様の隣で私は妙に落ち着いていた。
いや、心臓は暴れていたけれど、この先の最悪の未来を止めるんだという強い決意が自分を奮い立たせていた。
「アルタリスク公爵夫人及び令嬢を拘束し馬車へ。使用人たちは屋敷内で監禁するように。」
雑に地下牢へと投げ込まれると、血を流して床に倒れているお父様と泣き叫ぶお母様
もうこんな両親は見たくない。
もう目の前で両親を失いたくない。
「お父様、お母様、」
「フィ、オナ…、すまない、」
「私は大丈夫です。お父様、…お話があります。」
この場において泣きもせず真剣な表情の私に戸惑いながらもお父様はなんとか体を起こしてお母様に寄りかかるようにして聞く体制を整えてくれた。
「ふぅ…、っく、…うん。話し、なさい。」
「はい。まずはお父様、お母様。申し訳ありません。」
突然頭を下げた私に両親は眉を寄せる。
「私は、私たちアルタリスク家が、ここに連れられることを知っていました。」
驚愕する両親と罪悪感で目を合わせられなくなるが、ぎゅっと手を握りしめて、2人としっかり目を合わせる。
そして、齟齬のないよう、ゆっくり順に話していく。
「私たちアルタリスク公爵家はマムラ王国の王族たちの手により滅ぼされました。」
「フィオナ…?何を、言っているんだ、」
「私がこの地下牢に入るのはこれで2度目です。1度目は地下牢に入ってしばらくすると近衛兵たちに連れ出され、王族たちの元へと連れて行かれました。」
歯を食いしばり、思い出したくもないあの場面を当事者の2人に言わなければならない。
涙をボロボロ流す私に、両親は私が嘘を言っているのではないと思ったのか、続きを促してくれた。
「この戦いに負けたマムラ王国はカスティーラ帝国から辺境の荒れた土地と人質の要求をされました。その辺境地へ人質として向かうことになった王女が私を使用人になるよう命じました。…そして、お父様とお母様は、その後すぐ広場で、処刑されました。」
静まり返る地下牢に私の小さな嗚咽が響く。
悔しくて悔しくてたまらないっ!
何もできない自分がとても腹立たしかった!
必死に自分を奮い立たせ、気を飛ばさないようにしていると温かいものに包まれた。
「っフィオナ!」
「フィオナ…っ、」
両親だ、私の、大切な…っ、
温かい、生きてる。
声を上げて泣く私を温かい温もりが優しく包み込んでくれた。




