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自ら死を選んだ公爵令嬢と高潔な騎士のやり直し両片思い  作者: 葵和心


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10/21

品のない王族




冷え切った地下牢に響く2人の足音

奥の牢の中には身を寄せ合うアルタリスク公爵家


「っ!」


「遅くなってしまい申し訳ありません。公爵」


「ジークハルト殿下っ!グレジア殿!」


2人を見て安堵したアルタリスク公爵は夫人に強く頷いてみせると、間にいる娘に強く寄り添った。


「公爵、御令嬢は無事なのか?」


「はいっ、眠っております。たくさん泣いたので疲れたのでしょう。申し訳ありませんが、娘の保護をお願いしても?」


「ああ。ウィル、頼んだ。」


「はい。」


呑気な顔をして立っていた見張りの兵から奪った地下牢の鍵を使って牢を開ける。

公爵夫妻のロープを切るが、2人は娘から離れようとせずに抱きついていた。


「…私が御令嬢を運びます。お2人もすぐに治療を受けてください。」


「私はフィオナに着いて行くわ!この子にあんな寂しい思いさせたくないもの!」


「カリナ…、」


"あんな"寂しい思い

フィオナを運ぼうとしている男に公爵夫人は強い眼差しで牽制する。


「カリナ、彼らはこの国にとっては敵だけど、僕たちにとっては味方だよ。ほら、ジークハルト殿下とグレジア殿の話はたくさんしただろう?大丈夫、絶対フィオナを守ってくれる。…ですよね?殿下、グレジア殿」


愛する家族を守る公爵は、たとえ大国の王太子殿下であろうが、屈強な騎士であろうが裏切ろうならば関係ない。というような強い眼差しで2人を見る。


「もちろん。我々の目的はマムラ王国の王族のみですので。アルタリスク公爵家にはむしろいてもらわないとこちらが困ります。」


「同じく。御令嬢は我がカスティーラ帝国第3騎士団が責任を持ってお守りします。」


「よろしくお願いします。…ほら、カリナ?君もたくさん怪我しているんだ。ゆっくり休もう。」


最後までフィオナの手を掴んでいた公爵夫人だったが、フィオナを抱き抱える騎士のそれはそれは丁寧な様子に渋々手を離したのだった。



「さて、これからですね。公爵」



怪我の治療もそこそこに公爵は殿下と共に王族が捕えられている部屋へ来ていた。

ドア越しに怒号が聞こえ、殿下は呆れた表情をする。


「早くこの縄を解け!このカスティーラの騎士ごときが、王族に縄などつけよって!」


「全員処刑だわ!早く捕えなさい!」


「何突っ立ってんのよ!縄を解きなさいよ!」


手足を縛られているマムラ王国の王族3人はギャアギャアとカスティーラ帝国の屈強な騎士たちに騒ぎ立てている。

騎士たちは反応もせず、時折ゴミを見るような目を向けている。


「ああ、うるさいな。」


「っ!小僧!貴様、この国を乗っ取るつもりか!?」


唾を飛ばすマムラ王国の王を冷たく見下ろし、フッとバカにするように笑った。


「何をおっしゃっているのか分かりませんが、そちらが仕向けたお遊びに我が帝国がわざわざ乗ってあげたんですよ?むしろ感謝すべきでは?」


「ならば!この縄を今すぐ解くのだ!大体、そっちも遊びだと分かっているんじゃないか!なのに、王族を縛るような真似をしよって!帝国に抗議する!!」


「そうよ!乗り込んでくるなんて常識外れだわ!」


バカにするように笑っていた殿下から笑みが消え、凍るような空気に変わる。


「国民の命をお遊びで散らすような人間に王の資格などない。第一お前らが王族だと?笑わせるな。品のない欲に塗れたクズが。」



「素敵…♡」


しんっと静まり返った空間に王女の場違いな声が落ちる。

乱れた髪のまま、うっとりと殿下を見上げ、冷たい殿下の視線が向くと、照れたように体をくねらせ始めた。


自慢の胸を見せつけるように手は縛られたままだが、必死に寄せ顔を傾けながら上目遣いに殿下を見上げる。


「虫唾が走る…。さぁ、行きましょうか。公爵殿」


「申し訳ありません。殿下」


「おい!なぜアルタリスクが帝国の小僧と一緒にいる!?…やはりお前が仕向けたのではないか!!」


「私は何度も侵攻しようとするあなた方を説得することに時間を注ぎました!だが、あなた方は聞く耳を持たず、恥を忍んでジークハルト殿下に御相談させていただいたのです!」


「どうか、マムラ王国に住む民だけは救ってください。と!」


涙を浮かべながら手を握りしめる公爵は悔しさが滲み出ている。

自国のことを他国の王族に相談に行くなど、真の愛国心が無ければそうそうできない行動だ。

自分たちではどうすることもできない。と国家運営の無能さを曝け出しているも同然だからだ。



「そういうことだ。マムラ王国はカスティーラ帝国が預かる。これからのことは我々と公爵に任せてください。」


にっこりと眩しい笑みを浮かべた殿下を歯ぎしりしながら見る国王夫妻と、その笑顔に見惚れている王女


優雅に部屋を後にした殿下は「申し訳ありません。」と頭を下げる公爵に同情し、「お茶でも飲みましょう。」と明るく誘った。




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